劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」感想

原作の完結編が期待をはるかに上回る出来だったので、原作とは違う結末を辿るであろう劇場版も大いなる期待を抱いていたのですが、正直感想を書くのがこんなに大変になるとは思いもしませんでした。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、ヴァイオレットと戦争で苦楽を共にした上官ギルベルトとの恋物語の側面が強いわけですが、この作品のタイトルがずばり主人公の名前そのものであるように、本質的には彼女の人生譚であろうと思います。人の感情がわからなかった彼女が、上官が遺した最後の言葉の意味を知りたいという極めてパーソナルな理由で代筆業(ドール)という職業に就き、そこで出会った様々な人々の思いを手紙の代筆を通して感じることで、彼女自身の人格が再生されていくという、面白い構造をもったお話なのです。

しかしこの劇場版を作ったひとたちは、どうしてもヴァイオレットを守るべき可憐な存在として描き、その願いを成就する恋物語が作りたかったように思えてなりません。もちろんアニメシリーズを通して「あいしてる」という言葉が一貫したテーマであり、それに対して答えを出す結末が必然であろうことは否定しません。そして事実、彼女はまだ幼い。劇中、ホッジンズが夜分にヴァイオレットの部屋を尋ねるシーンでは、彼女はいつもの戦闘服(ドール衣装)ではなく寝具を身に纏っていました。その姿は、とても大人と渡り合って仕事をできる存在ではないように見えました。

しかしながら彼女が積み上げた「代筆を通して人の思いを汲み取る」という優れた才能は、いったいどこに昇華されたのか。冒頭のデイジーマグノリアが発した「18歳で郵便社を辞めてそれ以降、彼女の記事を見ることはない」というセリフで、僕の頭は真っ白になってしまったのです。彼女はCH郵便社でのドールの仕事、ホッジンズ、ベネディクト、カトレア、エリカ、アイリスらの仲間たち、そしてライデンシャフトリヒの街も「あいしていた」と思うのです。そんな彼女が、ライデンを、CH郵便社を去る決断をするに至った理由が知りたい。でも残念ながら、その理由を作品の中に見つけることはできませんでした。ユリスの危篤の報に触れて「今すぐ帰らねば」と言い出し、ギルベルト会えなくとも「お声も聞けて、それだけで私は十分です」といったところだけが、彼女らしさを感じられる一幕でした。

僕はヴァイオレット・エヴァーガーデンが大好きなのです。自分の歳も両親の記憶もなく、孤児となり幼い日々を戦場で過ごし、やっと拾われた最愛の上官とは生き別れ、それでも彼女は生きようとし、与えられた仕事に場所を見つけ、そしてやがてひとを生かす存在になっていく。そんな彼女はしなやかな強さにぞっこんなのです。もちろん彼女の弱さもたくさんあり、ギルベルトこそがその中心であるわけなのですが... だからこそ、ただの「あいしている」ではなく、ギルベルトもヴァイオレットの強さを感じて彼女の人生を肯定してあげる何かがあったら、ずいぶん印象も違ったように思います。

純粋に映画としても、デイジーマグノリアがどうしてヴァオレットに興味を持ち、彼女を追いかけようとしたのかの動機付けが弱くて、物語のナレーションをさせるためだけに出てきたような存在になってしまっているのが大変残念でした。

ごめんなさい。こんなこと書きたくなったんだ... 本当は。そんな感想であったとしても、作品を世に出すことに尽力された皆さんには感謝でいっぱいです。とにかく観られてよかった。それだけは間違いないです。ありがとうございました。

【閑話】レイアウトサイズ

Twitterでレイアウトサイズの話が出ていたので、少し書き留めてみたいと思います。

そもそも鉄道模型を始めた目的の一つが固定レイアウトを作ることだったので、レイアウトのサイズは最重要事項でした。長期間家の一部を占有することになるので、大きすぎて家族の生活に支障が出ては困る、さりとてあまりに小さいサイズだと結局やりたいことができなくて飽きてしまう、このバランスをどう取るか。

そのときの検討については

Little Paddington Railway第1期工事(その1) - これまでのあらすじ。

に書かれているので、そちらを見ていただくとして。いま改めて振り返ってみると、当時に欠けていた視点があることに気づきました。

レイアウトを作り始める前は、どんな線路が引けるか、どんな運転パターンで遊べるかが中心で、もちろんそれはいまでもそうだと思うのですが、長期間使っていく場合に避けて通れないのがメンテナンス。修理や掃除、改修がしやすいかどうかは、地味だけど同じぐらい重要です。重要なのです(大事なことなので二度言いました)。

メンテナンスという視点でレイアウトサイズを考えると、

  • レイアウトのあらゆるところに作業のための手が届くか
  • レイアウトの周りに十分なスペースがあるか

が検討ポイントとして加わってきます。

Llancot Railywayの場合、実は特にそれを考えていなかったのですが... 結果オーライでなんとかクリアできていると思います。

以下がレイアウトが置いてある場所の見取り図(単位はmm)。部屋の一部のスペースをレイアウトとして使っているので、いわゆる「レイアウト部屋」にはなっていません。

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Borderより上が使えるスペースですが、左には物入れへの入り口があったり、右には通路があったりで、壁寄せできるのは窓がある1面のみ。レイアウト周りには人が通れるスペースを確保しなくてはいけない状況でした。図だけ見ていると、もう少しベースボードを大きくできたんじゃ?とも思うのですが、800mmのスペースはちょうどよいサイズ感だと思っています。必要なときには、ここに作業台を置いて作業することもできます。

また図のように壁寄せした状態だと、当然手が届かない場所が出てきます。身長差もありますが、だいたいベースボードの端から600mmぐらいが苦もなく手を伸ばせる範囲で、それ以上はキツイ作業になりがちです。当初は固定の架台に載せてあるだけで移動不可だったのですが、キャスター付きの台に載せ替えて、窓側に近いエリアの作業をするときは、レイアウト全体を手前に引きずり出して裏に回って作業できるようにしました。

窓側からのアングルで撮影したい場合にも同様に引きずり出しています。

これらはなかなか作ってみるまで気づきにくいところではあるのですが、レイアウトサイズや設置場所を決める際の参考にしていただけますと幸いです。 

 

車庫改修プロジェクト(その6)

車庫改修プロジェクトの最終回です。落穂拾いも含めて少し。

 プラ板、プラ棒での工作

その2で紹介した給油所および車庫の土台枠以外にも、いくつかのものをプラ板、プラ棒で工作しました。

ひとつが車庫内の通路。2mm角棒と0.3mm厚のプラ板で製作しました。

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ペーパーで作るよりも耐久性があり、塗装もプラキットと同じ手順で行えるので、個人的には満足のいく仕上がりになりました。

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また小さな階段も、2mmの角棒と1.2mm厚のプラ板の組み合わせで製作してみました。

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このサイズになると精度良くカットしないとなかなかうまく組みあがらないのが難点。スジボリ堂さんのRPカッターはこの悩みを解消する道具で、直々におすすめいただきました。

まだこの程度の工作ですが、プラは素材も安いですし、加工、作り直しも簡単で、レイアウトに合わせて作れるのは魅力的です。出来合いのプラキットと組み合わせるだけでなく、慣れてくればテクスチャのついたプラ板を組み合わせて、簡単な建物をフルスクラッチできるようになるはず。今後もいろいろとチャレンジしていきたい領域です。

戦い終わって日が暮れて

というわけで、ほぼ4ヶ月かかってなんとかゴールにたどり着けました。

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設計図と完成写真
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ビフォーアフター

次なるプロジェクトも温めているのですが、春先から工事続きだったので、しばらくはだらっと楽しみたいと思います(^^;。(おわり)

車庫改修プロジェクト(その5)

予告通り、今回は照明のお話です。

一昨年から始めたレイアウト製作では、建物の類には極力照明を入れるようにしているのですが、車庫エリアに関して建物は小さな車庫とSignal Boxだけ。留置線に関しては一部にヤード照明を入れていましたが、夜景を撮ると真っ暗という感じでした(赤点線枠部分)。 

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夜の闇、影も情景としては大事な要素で、なにもレイアウトを隅々まで明るく照らす必要は全くないと思います。ただ、せめて夜間車庫で作業するひとが困らない程度には照明を入れていこうと思い、今回の改修に合わせて照明を追加することにしました。

以下は計画概要図です。オレンジで印をつけたあたりに計7箇所照明を配置して、薄いオレンジで囲んだ範囲をカバーする想定です。

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Viessmannの照明

これはよく言われていることですが、英国で鉄道模型を楽しむ人たちは、あまりレイアウトの夜景や夜間走行を楽しむという前提がないようです(もちろんやっているひとはいるが多くはない)。したがって、英国の鉄道模型メーカーから出る車両に室内灯オプションは少ないですし、レイアウトに使用するような照明のストラクチャーもほとんど出ていません。仕方ないので、今まではJAMなどのイベントで出展されているお店で、英国型レイアウトでも使えそうな照明ストラクチャーを見繕ってきたました。たださすがに今回のような車庫やヤードで使えそうなものはなく、ここは鉄道模型大国ドイツのメーカーのものを物色することにしました。

取り寄せたものは、以前の記事「Modellbahnshop-lippeでお買い物」にある通り、Viessmannのものです。LED照明の完成品で価格も1つ€10-20あたりと非常にお手頃です。以下、場所ごとに使用したパーツと仕上がりを紹介していきたいと思います。

まずは給油所。その2で少し触れていますが、屋根の下には別途蛍光灯型照明を組み込んでおり、前後に2つ全体を照らすヤード照明を配置しました。形としては現代的なT字型。色も電球色ではなく、屋根下照明と同じ白色を選びました。

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次に整備プラトフォーム。ここは給油所と同じT字型でもよかったのですが「スポットライト型のヤード照明を使ってみたい!」という理由だけで、一端にスポットライト型照明を配置して全体を照らすようにしてみました。スポットライトの角度は上下であれば稼動させて調整できるようになっています。整備プラットフォームがちょうど収まるぐらいの範囲に、照明の位置とスポットライトの角度を調整しました。

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蒸機区画ですが、以前留置線に使っていたBELI-BECOの照明を車庫の前後に持ってきました。LEDではなく電球なので、柔らかい光が特徴です。

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また車庫の外の給炭線にも照明を2つ。こちらはBELI-BECOの照明の形に合わせて、少しレトロな感じのする形のものを選びました。照明色も電球色です。LEDの電球色はそれでもかなり色温度の高いものが多いのですが、VissmannのLEDはちゃんと色温度が低く設定されていて、本物の電球であるBELI-BECOの照明と並べて使っても違和感がないです。優秀だと思います。

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設置に関して。今回使用したViessmannの照明は、すべて6mmΦの穴に照明のベースを差し込むように設計されているので、6mmΦのビットを使ってベースボードに穴に開け、緩みなく設置することができました。またスポットライトを除いては「Kontakt-stecksockel」という脱着ソケットの仕組みが備わっていて、写真にあるようにベースと上部の照明ストラクチャーが分離できるようになっています。設置時には上部の照明ストラクチャーをはずしてベースだけの状態で進めることができるので、誤って照明を破損してしまうような心配がありません。また万が一照明が壊れてしまった場合でも、ベースはそのままで上部の照明ストラクチャーだけを交換することができます。これも非常に優れた設計だと思いました。

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配線について。最初に導入した照明がわき役黒ちゃんから購入したこともあって、各照明への電源供給は写真にあるようなコネクターとプラグアレイを使用しています。プラグアレイは電源電圧ごとに分けて用意(DC9V, 12V, 18Vの3系統)してあり、Viessmannの照明は18Vに接続しています。

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照明の配線が増えたので、どのコネクタがどの照明につながっているかわかるようにテプラでタグ付けしてみました。が、カオスな絵面なのは間違い無いですね... この狭いレイアウトでも20箇所以上に供給していることになります。車庫に照明を入れると、貨物ヤードや踏切などにも追加したくなり... さらにカオス度が増しそうです。

最後に全景。今回ちょっとこだわったのは照明色です。左のディーゼル区画は白色系、右の蒸機区画は電球色でまとめてみました。どちらの色も味があり、それぞれの良さがあります。コンクリート基調のディーゼル区画とレンガ基調の蒸機区画、それぞれが映えるように構成してみました。

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 長々と続けてきた車庫改修プロジェクトの報告も、次回が最終回となります。触れてなかった細かい改修とともにまとめをしてみる予定です。(つづく)

 

車庫改修プロジェクト(その4)

さてストラクチャーたちが出来上がったので、その4からはレイアウトに戻って仕上げを進めていきます。 

夏草萌ゆる車庫

本物の車庫(主に英国の)を真似るとするならば、線路はもとよりその他の場所もオイルに汚れた黒々とした地面が続いている、という感じにするべきところですが、ここは保存鉄道Llancot Railwayの車庫。一般の見学者も受け入れているという設定なので、親しみやすい明るい雰囲気を目指すことにしました。特に今回改修したDiesel Depotの区画は、Static Grassを使って思いっきり夏草萌ゆる感じにしたいと思います。

もともとバラストが敷き詰めてあった線路と線路の間は、バラストを完全に撤去し敷き詰めた5mm厚のコルクが見えている状態です。地面の高さはこのままで問題ないので、このコルクの上に下地を作ります。

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コルク地の状態

ストラクチャーの土台をマスキングテープで保護したあと、地面にあたるところにWoodland ScenicsのFine Turf (Earth)をざっくり隙間なく撒きます。このあとStatic Grassで覆ってしまうので、多少のムラは気にしなくてもよいですが、隙間があると目立つのでとにかく隙間なく埋めます。どうせStatic Grassで隠れるなら下地は必要?と思うところですが、この下地を作って置くことで、仕上がり時のフサフサ具合がよくなるように思います。(※個人の感想です)

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Fine Turf (Earth) を撒いたあと

下地が完全に乾燥するまで1日待ったあと、いよいよStatic Grass撒きの開始です。自分が使っているのはWar World ScenicsOEM品であるPECO PSG-3 Pro Grass Precision Applicator。大きな面積を撒くのでなければ、このサイズでも十分。電源も9V角型電池なので、入手性、可搬性も問題ありません。糊はホビーセンターカトー東京で売っていた草はら糊(NochのOEM品?)、Static GrassはPECO PSG-402 4mm Summer Grassを選びました。 

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袋から取り出した直後のStatic Grassは固まってしまっていることが多いので、十分にほぐしたあとにApplicatorに詰めます。

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次にあらかじめStatic Grassを撒く範囲の境界をマスキングテープで覆います。こうすることで正確な範囲に撒けると同時に、飛び散った余分なStatic Grassを回収しやすくもなります。草はら糊を下地の上に塗ったあと、Applicatorを一生懸命フリフリします。余計に撒いてもあとで吸い取ればいいので、とりあえず下地が見えなくなるぐらいまで撒いてしまいます。

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Static Grassを撒いた直後

糊が乾燥するまで2, 3時間待ったあと、ハンディクリーナーで余分なStatic Grassを吸い取ります。このお掃除が仕上げに影響するので、Static Grass撒きにはハンディクリーナーも必需品です。吸い取ったStatic Grassは再利用できるので、ゴミと混ざらないようにできれば専用のものを用意できるといいでしょう。

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こちらが仕上がりの状況です。そこそこ草が立っているのが見て取れると思います。

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追加工事として、車庫中央に移設したSignal Boxに、工事のため一時撤去していた木立を寄り添わせました。

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建物と樹木をうまく組み合わせることで、立体感とお互いのスケール感を出すことができます。自分のお気に入りのデザインです。またSignal Box建物の周りを花で飾ってありますが、建物の裾にあたる部分を植物等で隠す覆うというのも、自分がよくやるごまかし好きなデザインですね。 

最後にストラクチャーを置いてみた全景。ようやく車庫らしい雰囲気になってきました。

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(2020.9.5追記)

今回大きく手をいれない蒸気区画については、Static Grassを使うのではなく今まで通りFine Turf + Coase Trufを使っての緑化としています。アクセントにNoch 7027 Grass Tufts XL Meadow(左写真)を使ってところどころ草地を入れました。

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Static Grassを撒いたところに比べて少し荒れた感じが出ていると思います。

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次回は照明のお話をしたいと思います。(つづく)

車庫改修プロジェクト(その3)

その3ではストラクチャー残り2つを紹介します。

燃料タンク

「給油所を作るなら車庫のどこかに燃料タンクが要るでしょ」ってことで、前回の給油所と同じKnightwing Models Internationalのプラキットを組みました。

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円筒型のタンクと配管パーツが2セットに、階段付き足場が付属しています。まずは仮組みをして全体の雰囲気を見ます。タンクの長さは、組み合わせる輪切り状の部品を増減させることによって調整できます。車庫の場所も狭いので、少し短めのタンクとしました。

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今回も細かいパーツが多いので、タンクと階段、足場を組んだところでパーツごとに塗装を進めます。塗料はいつものTAMIYAのアクリル塗料。メインとなるタンクは光沢ありのブラックX-1、配管はサビを表現するためにフラットブラウンXF-10、足場の柵はホワイトXF-2、階段や柱はフラットグリーンXF-5、バルブはフラットレッドXF-7といった具合でした。タンク以外の黒はダークアイアンXF-84を使っています。はっきりと黒!という感じではなくちょっと落ち着いた色になるので、黒には基本的にこの色を使っています。

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塗り終わったところで瞬間接着剤にて本組み。タンクは光沢ありにして正解。配管も茶色一色で塗ったわりには、筆塗りのムラが結果的にサビをいい感じに表現してくれています。

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ただこのままだとタンクがあまりにテカテカすぎるので、配管と同じフラットブラウンXF-10を使って、ドライブラシのような感じでタンクの背面に少し汚しをい入れました。やりすぎはよくないのでほどほどの感じで... ベースが黒光沢ということもあって、つや消しの茶色がいい感じのサビに見えて、満足いく感じに仕上げることができました。

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レイアウトに仮置きしてみます(左写真)。スペース的には置けたのですが... 同じ場所に置くSignal Boxとの位置関係が難しく、縦に並べる方法を考案してみました(右写真)。

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足場がちょっと不思議に見えなくもないですが、後方に置くSignal Boxとの位置関係もよさそうです。

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土台は少しラフな感じを出したかったので、給油所やピット車庫で採用したプラ板工法ではなく、石粉粘土で造作。プラ棒で枠を作ってから中を石粉粘土を埋めます。燃料タンクを土台に埋め込む感じにするため、柔らかいうちに置いてあらかじめ凹みを付けます。

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ところが... 石粉粘土は乾燥すると縮むのです。左の写真は1週間後の状態。プラ棒の枠との間に大きな隙間ができているのが見えると思います。これではせっかく付けた凹みもやり直しです。さらに石粉粘土を盛って凹みを付けなおします(右写真)。

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乾燥したところで塗装。下地としてTAMIYA情景テクスチャーペイント路面ダークグレイで少し表面をざらつかせてから、デッキタンXF-55で他と合わせます。ここまではよさそうだったのですが...

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汚しを入れるのに、タンクの錆表現と同じフラットブラウンXF-10を使ってみたのですが、、、これが大失敗。本当に汚い塗装になってしまいした。。。(左写真)

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なーに失敗すればやりなおせばいいのです!気を取り直して再びデッキタンXF-55を上塗りし、おとなしくMr. ウェザリングカラーのマルチブラックで汚しを入れなおします。あくまで控えめに。若干ラフですが、上にストラクチャを置くのでよしとしました。(右写真)

整備プラットフォーム

最後は車庫によくある簡易プラットフォームを作ります。これも同じくKnightwing Models Internationalから購入したのですが、、、開けてびっくりプラキットではなくホワイトメタルのキットでした。金属キットを組むのは初めてですが、何事も挑戦です。

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エポキシ樹脂接着剤で組んでいくのですが、速乾とはいえプラキットをセメント接着剤で接着していくのとは訳がちがいます。時間をかけてなんとか組み上げた後、メタルプライマーを塗ります。ここまではひとまず順調。

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次に塗装なのですが、メタルプライマーの上からいきなりアクリル塗料を塗ったのは失敗でした。表面がかなり粗いので、仕上がりもかなり粗い感じ。汚しをするとまたもや本当に汚くなりました(^^;。サーフェイサーを吹いてしっかり整えた後で塗ればよかったですね。

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仕方なく汚くなってしまった部分は再びアクリル塗料で修正。レイアウトに置いてみると、プラットフォーム面が少々高い。プラキットなら足を切るなりして調整できますが、金属キットではそうもいかない。しょうがないので、設置場所のレベルを下げて対応しました。(地面が白い部分は周りより3mmほど低くなっています... これがなかなか面倒な作業でした)。

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塗装塗装塗装...

以上ストラクチャー作成でしたが、やはりどのキットも塗装は難しい。汚しはもっと難しい。周りの色とのバランスもあるので、作業台で見ているときは良さそうでも、レイアウトの中に置くと妙に浮いたりすることもあります。逆もあって、意外とすっと馴染むことも。必ずストラクチャをレイアウトの中に置いてみるとよいようです。試行錯誤した中では、コンクリート地をデッキタンXF-55+Mr. ウェザリングカラーマルチブラックで統一したのは正解でした。

「いつかはエアブラシ」に挑戦してみたいですね。(つづく)

 

車庫改修プロジェクト(その2)

前回の報告からちょうど2ヵ月経ってしまいましたので、まずはおさらいから。
車庫改修プロジェクトでは、留置線となっていた場所を廃止して蒸機区画とディーゼル区画の2区画に整理し、新設となるディーゼル区画に新規に4つのストラクチャーを配置します。

  • ピット付き車庫
  • 整備プラットフォーム
  • 給油所
  • 燃料タンク

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前回その1ではピット付き車庫の製作について触れましたが、今回その2では給油所の製作について報告したいと思います。

キット製作

給油所のストラクチャーはBachmannからReady Madeのものが出ていますが、単品でぽっと置いたのでは面白くないので、燃料タンクも合わせてプラキットにチャレンジすることにしました。ただPECOなど大手では製品がなく、UKのローカルメーカーであるKnightwing Models Internationalから直接通販で取り寄せることにしました。

お初のところだったので、まずはWeb上のカタログでよくわからなかったキットのサイズについてメールで問い合わせ。すると3日後に返事が来たので、まぁ大丈夫だろうとWeb上での注文に進みましたが、注文確認メールも何も来ず。1週間経ったところでさすがにおかしいと思い、メールで状況照会すると「もう発送したよー!」との返事が... ヨカッタ。ちょっと別件でやきもきしていた時期だっただけに、またか!とドキドキしてしまいました(^^;。品物も程なく到着しました。

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1枚のランナーで給油所1つ分、2枚合わせて2つの給油所ができる算段です。屋根はスクエアタイプのものとオーバルタイプの2種類が付いていて、どちらか好きな方を選べるようになっています。自分は説明書の写真にあるようなスクエアのものを選びました。

狭い車庫に2つも給油所が要るんかな... と思ったものの他に使うあてもなく、1つ作るのも2つ作るのも大して手間は変わらないので、2つとも作って縦に並べておくことにしました。(これが後で思わぬ効果を生むことに)

構造としてはプラットフォームのような土台の上に、いくつかのパイプやキャビネット、屋根を建てるというシンプルなもの。細かいパーツが多いので、塗り分けの手間から塗装を先に済ませてから組み立てます。

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土台のベースカラーはTAMIYAアクリル塗料のXF-55 デッキタン、アクセントカラーとしてXF-80 ロイヤルライトグレイを使用しました。ピット線路の塗装と同じパターンです。写真のように塗り分けがされているとデッキタンがベージュっぽく見えるのですが、実際にレイアウトの中に置くとコンクリート舗装として違和感なく見えます。逆にグレイ系では主張が強くなるので、特にカントリー調のレイアウトでは注意が必要です。屋根の色は難しかったですが、主張しないような中間色としてXF-14 明灰緑色を使ってみました。実際のこんな感じの屋根はないかもですが、ちょっとレトロな感じになったので気に入っています。

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パイプやキャビネットはあまり拘らずに赤、緑、白、黒とシンプルな色で塗り分け。キャビネットの取手と丁番、給油ノズルと接続リングには、からぱたさんがnippper.comで紹介されていた「ぺんてる銀の穂」を使いました。筆先の使い心地が絶妙で、今回ような金属色などちょっと色刺しするのに大変便利です。

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土台と屋根にはMr. ウェザリングカラーで汚しを入れます。これでパッキリ明るめだった色もかなり落ち着いた雰囲気になりました。塗装後の接着にはセメント接着剤は使えない(塗装が溶ける)ので、瞬間接着剤でサクサクと進めます。まずまずの雰囲気です。

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次に「駅の小改修」で使用したWest Hill Wagon Worksの蛍光灯型照明を屋根下に組み込みます。照明色は駅のホームで使ったWarm Whiteではなく、Cool Whiteにして雰囲気を変えてみました(写真で見ると青みがかっていますが、実際はここまで青くはないです)。

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基本的にはWarm White(電球色)好きなのですが、猫城さんがうまい具合に照明色を変えてレイアウトを作られているのを見て、自分もやってみたくなった次第。ディーゼル区画はCool White、蒸気区画はWarm Whiteでまとめる予定です。また後の報告をお楽しみに。

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レイアウトへ組み込み

さてキットが完成したところで、いよいよレイアウトへの組み込みです。設置場所の幅がキットの幅より大きいので、組み込むため何かしら追加の土台を作る必要がありました。最初は石粉粘土で造形することも考えていたのですが、これまでの経験から水平をきれいに出すのが難しいことがわかっているので、方針を変更してプラ棒、プラ板を使って製作しました。

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5mmのプラ角棒で台枠を作り、上面に0.5mm厚のプラ板を貼ります。そしてこの台枠の中に2つの給油所キットをはめ込みます。隣のピット付き車庫の土台も同じ手法で製作しました。

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仮置きしてみたところです。給油所が2つ並んでいるので2両セットのClass 43 HSTを置いてみたら、これがピッタリはまる!設計時には意図してなかったこともあり、テンションが上がる瞬間です。

塗装については、プラ角棒、プラ板ともに表面がかなりツルツルということもあり、お試しでサーフェイサーを初スプレー。なぜもっと早く使わなかったのか、というぐらいの感動がありました(笑)。筆塗りでは絶対に出せない塗膜の均一さとプラ成形色が完全に隠される隠蔽性。その上に塗るアクリル塗料も伸びよく厚塗りの心配がありません。またひとつ勉強になりました。

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アクリル塗料で塗ったあとは、キット同様にMr.ウェザリングカラーで汚しを入れます。

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組み込んだ全体像。無事キットとうまく馴染んでくれました。

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仕上げは照明の配線です。蛍光灯照明の配線は一旦裏にまとめてからリード線を延ばします。

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もうひとつはヤード照明。もともと留置線に使っていた照明(写真左)を付けるつもりで土台に穴を開けていたのですが、新たに買ったViessmannのヤード照明(写真右)の方が形や照明色が馴染むことから、設計変更することにしました。

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おかげてキットに開けた穴をプラ板で埋め戻すことに... この程度の変更はしょうがないですね。

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レイアウトのベースボードに配線用の穴を開けて設置します。これでひとまず完成。

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デモビデオはClass 43 HSTとともに。

キット組み立て、土台の作成、照明の組み込みと、かなり手間がかかりましたが、「給油所を設置したい」というぼんやりとしたイメージから、なんとか期待以上の形にできたかと思います。(つづく)