Accurascale Class 37

AccurascaleのClass 37 が発売されたのは昨年夏。自分はClass 37/4と37/6の2両を購入した。それからかれこれ半年。本当はもっと早くにこの記事を書けたとは思うのだけど、なかなかそうはいかない理由があった。

(奥)Class 37/4 37409 'Lord Hinton' (手前)Class 37/6 37609

Class 37とAccurascale

Class 37は1960年生まれのEnglish Electric Type 3 (1500馬力級)と言われるBritish Railwaysの電気式ディーゼル機関車(Co-Co)。出力はEnglish Electric Type 4 (2000馬力級)に劣るものの、軌道制約が緩いため英国国内のあらゆるところを走っており、その活躍は今なお続いている。日本で言うとDD51みたいな存在で、British Railways時代のディーゼル機関車では、Class 55 Delticと並んで最もアイコニックな存在ではないかと思う。英国出張の際に実際にロンドン・パディントン駅で見かけ、近年のディーゼル機にはない、ちょっと愛嬌のある形がとても気にいった。

2016年5月25日 London Paddington駅にて撮影

そんな機関車なので、模型化についてもHornby, Bachmannの2大メーカーから多数のバリエーションが既に発売されていた。そこに割って入ったのが新興メーカーのAccurascaleである。2015年に設立されたIrish Model Railway ModelsのSister Brandとして'OO' & 'O'スケールの英国型鉄道模型に参入。当初はWagon中心の製品ラインナップだったが、Class 55 Delticを皮切りにLocomotiveのリリースを拡大。Coachにもラインナップを広げている。最大の特徴は中国の工場との密な連携や直販を武器に、ディテールにこだわりつつも価格がプレミアムではなく、標準的な価格帯に収まっていることである。ウェブメディアを駆使したコミュニティとのコミュニケーション戦略とも相まって、一躍英国型のトップメーカーに踊り出た。

そのAccurascaleが、Class 55 Delticに続いて2つ目のLocomotiveとして製品化を発表したのがClass 37だった。そのとき既にBachmannのClass 37を2両持っていたが、Accurascaleが製品化するとあっては期待は大きく、重連やPush-Pull運用も見据えて2両を予約した(余談だが、予約時に全額支払いを済ませたおかげで、今ではあり得ない£1=140円前後というレートで購入することができた)。直販サイトの予約分は完売。そして昨年夏、発表から3年のときを経て、ついに届けられた。

トラブル続きのClass 37/4 'Lord Hinton'

しかしながら届いた2両のうち、Class 37/4 'Lord Hinton'で問題が続発した。

モーター起因の走行不良

後から出荷となったClass 37/6が到着し、37/4との協調運転の調整をしようとしたときに、Class 37/4の走行速度が安定していないことに気が付いた。デコーダー?集電?いろいろと原因を探ったが、結局お手上げ。症状の動画を撮ったうえでAccurascaleのサポートに連絡。送り返しての修理ということになった。修理の内容としてはデコーダーとモーターの交換で、3か月ほどの時間を要した。

後からわかったことなのだが、モーター起因の走行不良はAccurascale Class 37のよくある問題として取り上げられており、YouTube上には独自に原因の解析をした猛者の方の動画が上がっていたりする。

youtu.be

パーツの剥落

修理から帰ってきたClass 37だが、いくつかのパーツの剥落があった。緻密なディティールを再現するために、モールド形成ではなく別パーツが多数取り付けられているのだが、修理過程で本体をいじる関係上、どうしてもそれのパーツが剥落する可能性が高まる。わかっていて且つ修理したものは以下の通り。

  1. 床下燃料パイプ
  2. 1エンドのフロントガラス
  3. 1エンド左のキックプレート
  4. 屋根上のファングリル

基本的には瞬間接着剤を使って部品を元の位置に貼り付けるだけなのだが、3のキックプレートは部品そのものがなくなってしまっていたので、Accurascaleのサポートに連絡。パーツを送ってもらって対応した。

赤矢印先にキックプレートが剥落した跡がある
キックプレート。この小さな部品1つが遥々送られてきた。

ライト点灯不良

ようやく37/4と37/6協調運転の調整も済み、レイアウトで走行シーンを撮影しているときに37/4のライトが点灯しなくなったことに気づいた。Front Light, Tail Lightだけではなく、Cab LightもPanel LightもEngine Roomもダメ(つまり全滅)。デコーダーテスターでデコーダーの問題ではないことを確認し、再びAccurascaleのサポートに連絡。すると、おそらくPCB(プリント基板)の問題なので、部品を送るからそちらで修理してくれないかとの回答。これには少々面食らったが、交換方法の動画を送ってもらって作業手順を確認し、なんとかできそうということで自前で基板交換を行った。

送られてきた交換用基板

ボディを外したところ

交換手順としては、基板上のスピーカーおよびコネクタを外して、四隅の線路給電の配線(赤矢印)と中程に位置するモーター配線(青矢印)の計6箇所の半田付けされた配線を外して再び取り付けるというもの。

基板を取り外すとモーターが顔を現す。ドロップインしてネジ留めという形なので、ここまでくれば問題のモーターの交換も自前で出来そうではあった。

基板を取り外したところ

 

基板裏面

白いエンクロージャーにはシュガーキューブスピーカーが入っていて、基板にねじ止めされている。これを交換用基板に載せ替えて、先ほど外した配線をふたたび半田付けする。

あとは元どおり、スピーカーを載せ、配線を繋ぎ直して完了。

ライト点灯を確認

雑感

これだけトラブルが続けば製品としていかがなものかと言いたい気もするが、サポートの対応は丁寧だったし、結果的には直ったし、Lifetime Warrantyもあるので、この先トラブってもどうにか直せるのであれば、ひとまず及第点といったところ。もう一方のClass 37/6は全く問題になっていないことを考えると、単に個体が悪かったとも言える。

ただこのトラブルを通じて、壊れにくさや、メンテナンスのしやすさみたいなものは製品の価値としてもう少しきちんと評価されるべきだと思った。自分の鉄道模型の楽しみ方としては走らせてなんぼだと思っているので、鉄道模型が動く機械である以上、メンテナンスは避けられない。愛する鉄道模型と長期間付き合えるように、メーカーはそれを目指した設計をして欲しいし、それを評価できるコミュニティでもありたいと思う。