「アイの歌声を聴かせて」を観ながら思ったこと

今日、川崎のチネチッタに「アイの歌声を聴かせて」の2回目を観に行ってきた。そしてようやくこの感想を書いている。

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チネチッタにて展示

「アイの歌声を聴かせて」は、ずっと楽しく観させていただいている吉浦康裕監督の最新作、そして名作「イヴの時間」を受け継ぐ、アンドロイドが登場する作品というだけあって、僕の中では今年一番の期待作だった。

ミュージカル仕立ての演出は映画の楽しさを存分に表現しており、シオンの間抜けた感じと愛らしさは作品全体を明るく照らし出している。登場するキャラクターは個性的で青春群像劇としての奥行きを出している。名作と言って過言はないと思うのだが、それはあくまで客観的にみた評価であり、個人としてはいまいちそれに乗り切れない歯痒さがあった。

先日の細田守監督「竜とそばかすの姫」を観たときの反応とも共通するのだが、どうも自分の中にある規範意識が作品を純粋に楽しむことを阻害しているような気がする。

例えば、主人公サトミの母親である美津子。シオンを生み出したプロジェクトの責任者でもある彼女は作品のキーパーソンであるのだけど、家のことはサトミに任せきりで、仕事に没頭するタイプとして描かれている。男性優位のホシマという組織の中でのし上がっていくには避けられない行為で、もちろんサトミの美津子に対するコミットがあってのこととは思うのだが、大人と子供という非対称な関係の上で展開されるやりとりを見ているのがちょっとつらくなってしまったりする。

あるいは電子工作部。ホシマの城下町でAIの実証実験もやっている軽部の高校の電子工作部となれば、もっと花形の部として描かれるようなことがあってもいい。いかにも窓際文化部風情の屋上のプレハブ小屋で、部員も男子ばかり。男女問わずエンジニアを目指すような雰囲気があってもいい。

あるいは野見山さん。あのポジションに収まるまでにいろいろあったんだとは思うけど、美津子の年下上司のものとで、うだつのあがらないオッサンとして描かれてしまうのはなんとなくステレオタイプな印象を受けてしまう。

もっと作品の根幹に関わる「なぜシオンは女子高生の形を模して造られたのか」というのもあるのだけど、それをここに挙げたものと同列に語るにはあまりに大きな話題なので、一旦脇においておくとして。

どれもほとんどイチャモンレベルではあるのだけど、素晴らしき青春群像ミュージカルを楽しむ前に、そういう些細なことにつまづきまくっている自分がいる。

もちろん大衆娯楽作品を前にして、ジェンダーの問題意識とか、ダイバーシティインクルージョンを考慮したものでなくてはならない、なんて叫ぶつもりは毛頭ない。それこそ出過ぎたマネである。でも自分の中の心の声を無視することはできない。

例えば最近観始めた「ラブライブ!スーパースター!!」では、こんな感想を書いてしまった。

自分でもちょっと異常だと思う。

今日2回目を観に行ったのは、1回目のつまづきを一旦全部括弧に入れた上で鑑賞したかったからだ。それは功を奏したようで、満足のうちに映画館を後にすることができた。鑑賞姿勢としてどちらがいいということはないと思うが、映画を楽しむ上で少し気にしながら考えてみたいと思う。

 

ライブが教えてくれたこと

2年ぶりの参加となったマジカルミライ2021ーそのライブの開演の時。

いつもどおりBGMのヴォリュームが一気に上がり、客電が落ちる。一斉に立ち上がる観客。手にした色とりどりのペンライトがさざなみのごとく広がります。

そして舞い上がるスモークの中、オープニングを飾る音楽とともにレーザー照明が広い会場を貫きました。その瞬間、僕は泣いていました。

ミクさんの歌声どころか、ミクさんも登場していないのに。何に対して泣いているのか、自分でもよくわかりませんでした。でもライブが進むに連れ、それは何なのかわかったのです。

人の声。歓声。

しかしよく考えると、このライブは誰も発声していないのです。観客は、新型コロナ(COVID-19)感染症予防対策として、マスク着用の上発声することは禁じられています。唯一声を出しているボーカロイドたちも、もちろん生身の人間ではなく電子的に造られた声なわけで。

それでも。それでも。

観客が振るペンライトはいつも通りに揺れていて。会場に居る誰もが、その心の中ではっきりとコールや歓声が聞こえていると言わんばかりに揺れているのです。「METEOR」のコールも、未だ聞かれぬ「愛されなくても君がいる」のコールも、バンドメンバーへの声援も。その声が聞こえるたびに、僕は何度も泣いていました。

この2年間失われていたもの。それは別にライブだけではなくて、普段の生活からも失われていたものかもしれません。今日マジカルミライのライブは、その「声」を聞く装置として完全に機能していました。失くしていたものを教えてくれたのです。本当にありがとうございました。

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秋の車両アップデート(その2)

前回の続きで、残りとなった2軸貨車の紹介です。

Accurascale BR 21t MDO Mineral Wagon

昨年に引き続き、今年もAccurascaleのWagonがやってきました。Accurascaleお馴染みのパッケージ。

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1箱に3両入っていて、車両紹介とパーツ展開図(爆発図?)が描かれた簡単な説明書とねじ式連結器のパーツが付属しています。

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上回りだけ見ると、まぁこんなものかなという感じなのですが、下回りの緻密さには度肝を抜かれます。

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この形式は真空ブレーキが未装備のものになりますが、ブレーキレバーから車輪のシューに至るまでのロッドが個別のパーツで組み立てられ、忠実に再現されています。流石に動かせたりはしませんが、思わずそうしたくなるような出来栄え。COVID-19の最中に、ここまで手間をかけた組み立てを必要とする製品を出してくるのですから、Accurascaleは信頼できる工場とうまくやれてるということでしょうか。

合わせて、オプション品の石炭積載パーツも購入してみました。

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レジン製の塗装済みパーツと嵩上げ用のウレタンスポンジが付属しています。

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写真左のようにウレタンスポンジを敷いてその上に乗せると、ちょうどいい高さになります(写真右)。はめるというより乗せるだけなので、脱着も気軽にできるのはありがたいです。

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そしてウェザリングに向けて早速解体(笑)。

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今年のGW連休中に取り組んだHUO Coal Hopperのウェザリングは、初めてということで試行錯誤もあり、かなりの時間がかかったのですが、今回は前回の12両を上回る15両。どうすれば効率的に、かつ楽しく作業できるかを思案中です。

秋の車両アップデート(その1)

10月になりました。今年ほど新製品が届かない年はないのではという気がしますが、いくつか車両がまとめて届きましたので紹介していきたいと思います。

古い時代(Era2, Era3)の客車が欲しい

今年はHattonsのGenesis Coachのリリースを見込んで、

  • ERA 2 (Pre-Grouping) 1870-1922
  • ERA 3 (Grouping) 1923-1947 の前半

あたりの蒸機を先行して運用に入れました。

そしてつい先日新しい蒸機も到着。

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Bachmann Branchline 31-934 LMS 4P Compound 4-4-0 1119 LMS Crimson Lake

準備万端だったのですが、残念ながらリリースは来年に延期... そこで、これらに合う客車を少し探してみることにしました。

LMS Royal Mail Coach

HattonsのPre-ownedで見つけたLMS仕様のRoyal Mail Coach。£30(VAT抜き)ぐらいでした。

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Hornby R4155 LMS Operating Royal Mail Coach Set 30246

Mail Coachは1両欲しいと思っていたので、ちょうどいい感じに見つかってよかったなーと思っていたのですが、届いて開けてみると車両だけでなく付属品がいろいろ付いています。これは何だろうと説明書を見ると、車両に付いたギミックで実際に走りながらMail Bagの受け取りや投げ出しができるようになっているようです。

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これらを使って何がどうなるのかは、まずは動画を見ていただいたほうが早いかと思います。

この車両にはフレーム下に荷物の受け取り、投げ出し用のドアを開閉させるためのレバー(写真左)が仕掛けられています。線路上にレバーを押し上げるための付属のバンプ(写真右)を配置することにより、目的の場所でドアを開閉し、荷物の受け取り、投げ出しを行うというわけです。

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ちなみに自分のレイアウトではユニトラック線路を使っていて、枕木の間にバンプをはめ込むことが難しかったので、似たようなものをプラ板で自作しました。

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動画のデモでは、レイアウト上の左手に受け取り用のフックとバンプ、右手に受け取り小屋とバンプを配置して、列車を右回りで運転しています。荷物を左手で受け取り、ぐるっと奥を回って右手の小屋に届けるという動きです。

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受け取りアクション
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投げ出しアクション

ちなみに実際は、模型のようにドアがパカッと開いたりするわけではなく、網を使ってやりとりするようです(それでも十分ダイナミックですが...)。

Tri-ang Caledonian Coach

HattonsのPre-ownedおよびebay.co.ukで見つけた、Tri-ang製のCaledonian Coachです。おそらく50年ぐらい前(?)の代物で、1両£7〜10でした。

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Tri-ang R747 Caledonian 1st/3rd Composite Coach 2643 + R748 Caledonian Brake Composite Coach 2640

この扉がごちゃごちゃっとついた感じが気に入って買ってみたのですが。調べてみると実際のCledonian Coachは3軸台車を履いていて、屋根も床下もちょっとちがう?あれあれ?どうやらMk1用のフレームを流用(?)して作ったもののようで、このような車両は実在しないようです(笑)。GWR塗装もあるのですが、これもないらしいです(笑)。

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Tri-ang R26 G.W.R. 1st/3rd Composite Coach 7822 + R27 G.W.R. Brake Composite Coach 8176

しまった...と思いつつも、Hattons Genesisですら昔の車両を正確に模型化しているわけではないので、これはこれでヨシ!値段が値段だけに、全体的に年季は入っているし、車輪は真っ黒けでしたが、きれいに磨いてあげたら、あらなかなかいい雰囲気。しかもきれいに走ってくれるではないですか。

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妻面。たぶんこれもMk1っぽい。カプラーはTension Lock。フレームには"Tri-ang"のロゴとともに"BUILT IN BRITAIN"の刻印

もちろんイマドキの模型のようなスマートさはないですが、ゴツゴツとした感じに温かみを覚えます。50年前に作られたこの車両が、いったいどんなひとの手を渡ってどこで過ごしてきたのか想像すると、ちょっとドキドキしますよね。まさか極東の島国までやってくるとは、この車両たちも想像していなかったでしょう。しばらくうちで遊んでいってくださいね!

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ばらすとこんな感じ。板キットかいな!と思う作り。当然室内造作はなし。面白い。

MR & LMS Clerestory Coach

最後はHornby Railwaysブランド時代のHornby製品。MRとのClerestory Coach(彩光用高窓付き客車... 日本だとダブルルーフと言った方が通りがよい?)です。ebay.co.ukで1両£20前後でした。

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Hornby Railways R452 M.R. Clerestory Composite Coach + R453 M.R. Clerestory Brake 3rd Coach
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Hornby Railways R384 LMS Clerestory Composite Coach + R385 Clerestory Brake 3rd Coach
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LMSの妻面はNon-corridorタイプ。刻印は"MADE IN ENGLAND"

購入した製品はいずれも使用感がなく、ほぼ新品状態。箱を開けると、雛人形五月人形を開けたときのような匂いがして、いったいどのぐらい間眠っていたのかとまたまたドキドキ(あれは何の匂いかしら)。

早速蒸機と合わせてみましたが、屋根がダブルルーフになるとぐっと時代を遡ったような雰囲気が出ます。

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今回の一連の購入で、古い模型製品(かといってビンテージでもない)のファンになってしまいました。もちろん造形としてはおもちゃ然としたところもあるのですが、何か不思議な魅力があります。ebay.co.ukを見ていると、MainlineとかAirfix GMR (Great Model Railways)とか、現存しないブランドの古典客車が安価にいろいろ出ているので、もう少し集めたいところではあるのですが、送料を考えるとなかなかおいそれと買うわけにもいかず... うーん、UKに住みたいですね(笑)。

(つづく)

「ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか 民主主義が死ぬ日」(ベンジャミン・カーター・ヘット/亜紀書房)

もともとTwitteで見かけた以下の書籍、原田昌博『政治的暴力の共和国――ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム』に興味を引かれたのだけど、大学の出版会からの刊行ということで、おそらくある程度歴史背景を理解している人向きと思われた。

そこで前提を理解しておくために、たまたま書店で目に止まったものを選んだ。

ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか——民主主義が死ぬ日 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-13)

第一次世界大戦後のドイツにおいて、ヒトラー(ナチ党)が合法的に権力を掌握するまでの一部始終を詳述することで、どのような力学が国家を破滅させる指導者を選ぶに至ったかに迫っている。1919年に制定されたヴァイマル憲法は、当時の最高水準の民主主義を採用し、厳密に割り当てられた比例代表選挙、男女平等を含む個人の権利と自由の保障を明文化していたにも関わらず、だ。

ドイツにおけるナチ党への支持は、戦間期にヨーロッパに広まっていたパターンに合致している。ファシスト政党が、たとえまだ権力を握っていなくても、著しい数の大衆の支持を得た過程を詳細に追うと、第一次世界大戦後のヨーロッパの二つの異なる地図があわられる。第一次世界大戦の敗戦国の地図と、共産主義革命の脅威にさらされた国々の地図だ。

(中略)

つまりナチズムは、グローバリゼーションに対するドイツ特有の極端に激しい反応というわけではなかった。他国からの影響を強く受けた国際的反応だったといえる。

当然ながら当時このように状況を把握し、かつ対処できる勢力はいなかった。いまこの時代から俯瞰することで、ようやく理解ができることもある。そう、自分たちは、幸いにも歴史から学べる立場にあるのだけども、過去ではなくいまを俯瞰するための地図をもっているだろうか。

文中に大量に人の名前(政治家、軍関係者)が出てくるのだけど、巻頭にある主な登場人物の解説を厭わずに読めば、当時の苦悩を追体験できる良書だと思う。

Black FiveのDCCサウンド化+電飾

今回は、Llancot Railway 2機目となるBlack Five、British Railways 4-6-0 Class 5MT 44668をDCCサウンド化した作業記録です。

古い設計のDCC Ready機

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Hornby R2322 BR 4-6-0 Class 5MT 44668

Hattonsの中古(Pre-owned)で見つけたBlack Fiveは、BR Black Livery(Early Emblem)のもので、価格はVAT抜きで£82.50。2003年製とやや古いながらも、5poleモーターと8pin(NEM652)ソケットがついたDCC Readyの製品です。ただ最近のHornby製品とは、若干構造が異なりました。

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まず本機とテンダーを繋ぐカプラーが、ドローバー+ケーブルではなく、写真のような通電カプラー(?)になっていました。

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ドローバー+ケーブルの場合は、本機→テンダーの線路集電用と、テンダー→本機のモーター出力用の4極端子ですが、この通電カプラーは2極のみ。モーターは本機側にあるので、テンダー→本機の線路集電用になります。本機の車輪でも集電しているので、あくまで集電を補助するための通電カプラーという位置付けです。

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そしてデコーダーの搭載位置は、テンダー側ではなく本機側に。ボイラー中央付近に8pin(NEM652)のソケットが鎮座していました。

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横からみてわかるように上下方向のスペース(赤矢印)はほとんどないため、スピーカーを入れるとなるとタンク式機関車の場合と同じく、ボイラー前方の煙室に押し込むことになります。この製品が設計された当時は、DCC対応といってもサウンドまでは考えてなかったように思われます。Hornbyは自前でサウンドデコーダー(TTS Decoder)をリリースしていますが、サウンド対応する際にスペースに余裕のあるテンダーにDCCデコーダーを移設して、現在の設計になったのでしょう。

デコーダーの選択

8pin(NEM652)ソケットがあるわけですから、素直に8pinインタフェースのサウンドデコーダーを選んで、煙室に収まるスピーカーを選べば、サウンド化は可能です。

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その場合、煙室(黄矢印先)には

  • デコーダー本体
  • 8pinケーブル
  • スピーカー
  • Stay-Alive回路

を押し込むことになります。このうち意外と厄介なのが8pinケーブル。デコーダーに直付けされたケーブルは取り回しが難しく、毎度収めるのに苦労するところです。

仮にインタフェースをNext18に置き換えれば、煙室には

  • スピーカー
  • Stay-Alive回路

だけを納めればいいことになり、スペース面では圧倒的に有利となります。そこでお試しに、先日laisdccから購入したNext18インタフェースボードを、8pinソケットの位置に付けてみました。

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おぉ!これですよ、これ。8pinソケットにはご退場いただいて、インタフェースはNext18でいくことにしました。

デコーダーがテンダー搭載ではなく本機にあることは、確かにスペース面では不利ですが、Loco LampやFirebox Frickerなどの本機側に必要な電飾の配線実装を考えると、実は有利な面もあります。本機搭載のモデルでサウンド化だけではもったいない。合わせてFirebox Frickerや念願のLoco Lampを付けてみることにしました。

Next18への換装

まずはNext18への換装から始めます。インタフェースボードには、あらかじめスピーカー(紫)とStay-Alive用(青、白)の配線を引き出しだしておきます。

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次に8pinソケットから取り外した、線路(左右)とモーター(+、−)を取り付けます。

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この状態で、一旦動作チェック。

配線作業は、とにかく1ステップごとに動作確認をしながら進めます。これを怠ると、問題があったときにどこでミスをしたか、わからなくなってしまいます。面倒でも丁寧に確認していくことが、成功への近道です。

電飾の工作

次に電飾に取り掛かります。電飾を細工する際の重要課題は、電飾とデコーダー間の配線をどのように取り回すかです。今回は

  • Firebox Fricker
  • Loco Lamp

の2つを取り付けるのですが、電飾を取り付ける場所は、いずれもデコーダーが乗っているシャーシではなく、外装側となります。つまり、電飾からの配線をデコーダーインタフェースに直接接続してしまうと、シャーシから外装を自由に取り外せなくなってしまいます。その後のサウンド化の作業はもとより、後々のメンテナンスの際に大きな障害になりそうです。

もちろん巷の製品でも同じ状況になるわけですが、外装とシャーシの間に配線はありません。多くの場合、外装とシャーシそれぞれに電気的な接点が作られ、外装を嵌め込むと接点が接触して導通するような仕組みになっています。

だったら、自分もそれを真似ればいいんじゃ?ということで、外装に電飾を取り付けた上で、さらに接点を加工して取り付ける方針でいくことにしました。

Firebox Fricker編

製品によくあるFirebox Frickerの構造は、焚き口付近にスモークプレートが埋め込んであって、後ろからLEDを光らせる構造になっています。

しかしそんな細工をする素材もスペースもないので、焚き口のところに直接1608のチップLEDを載せて光らせることにしました(黄矢印)。LEDは、模型電子部品ショップMSR橙色の配線済みのものを使用。

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配線はそのまま裏に貫通させて、0.2mm厚の燐青銅板を短冊上に切り出して作った接点に半田付け。U字に折り曲げて両面テープで固定します。

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点灯試験。

ちなみにチカチカしているのは、そういう回路を使っているのではなく、単に電源に使ったパワーパックの出力を上げ下げしているだけです(笑)。

Loco Lamp

さてお次は、待望のLoco Lampです。DCC Conceptsから出ているLoco Lamp用LEDを使いたかったのですが、これがずっとOut of Stockのままで再販される気配がないので、在庫のあるBrake Van用LEDで代替することにしました(正直どう違うのかわかってない...)。こいつはWhite, Redのどちらも光るスグレモノなのですが、今回はWhiteのみを結線して使います。成形色は黒なので、あらかじめ白く塗装しました(写真右)。

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英国蒸機のLoco Lampは、取り付け位置と組み合わせによって列車の種別や積み荷を表すルールがあります。

British Railways headlamp codes

今回は取り付けの簡便さと見た目重視で、バッファビーム上の左右に取り付ける形の"Express Passenger Train"の設定で進めます。

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まずランプ取り付けの突起モールドをカットします(黄矢印)。ピンバイスで床下方向に穴を開け、配線を通してからランプを瞬着で固定します。

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床下に回した配線の先に抵抗を取り付け、バッファビームの裏に収めます。

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さらにその先に、先ほどと同じ接点を半田付けして取り付け、両面テープで固定します。

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こちらも点灯試験。

ドイツの模型蒸機は大抵ランプが光っていて憧れだったのですが、ついに英国蒸機にランプを載せることができました!

シャーシへの接点取り付けと配線

続いてシャーシ側の配線と接点の工作を行います。

写真のようにF1 = Firebox Fricker, F2 = Loco Lampを割り当て、接点に向けて配線を伸ばします。Common+は3分配(Firebox Fricker, Loco Lamp, Stay-Alive)してあります(写真では白GNDに接続されていますが、これは間違い)。

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0.1mm厚の燐青銅板を切り出して接点を作成し配線の先に取り付け、それぞれ外装に取り付けた接点とコンタクトする位置に設置します。

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ここまできたら、外装を嵌め込んで走行試験。走行時の点灯に問題がないか、ショートが起きないかなどを十分に確認します。

試験には安価なlaisdccのデコーダーを使っています。トラブルでデコーダー損傷があっても金銭的被害が少なくて済むので、精神的被害も避けられます。

サウンド

最後にスピーカーとStay-Alive回路を取り付けます。あらかじめ配線を引き出しておいたので、取り付けは楽ちんでした。

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今回の作業の際に、TSKのツールクリッパーを導入してみたのですが、これはなかなかスグレモノでした。上の写真では、配線を半田付けする際に、部品を固定した木片をツールクリッパーで挟んで使っています。こうすることで、部品を自由な位置にもっていくことができ、作業効率が大幅に改善されます。まさに3本目の手として、工夫次第でいろいろ使い道はありそうです。

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完成!

ではいつものごとく、最後は動画でどうぞ。

たまたま買ったモデルが、テンダー式の大型蒸機でかつ本機側にデコーダーがあるという幸運に恵まれて、今年やりたいことの1つだった蒸機への電飾(特にLoco Lamp)が達成できました。燐青銅版を使って接点を作る経験値も得られたので、いろいろと応用できそうです。

こうなると、次はスモークに挑戦したいですねぇ。

Station Update 2021

先月はプロジェクトらしいプロジェクトもなく、ブログの更新がご無沙汰になっていました。少しだけですが、駅周りのアップデートをしましたので、まとめておきたいと思います。

Flower Beds

駅周りはレイアウトの中でも一番最初に作った部分で、これまでにもいろいろと手直しを入れてきました。昨年夏に行った改修はこちら。

今回は、春に作ったSignalBoxの花畑に触発される形で、ホームにも花壇を作って華やかにしてみることにしました。

こちらは駅舎のあるホーム向けの大型の花壇です。5mmのスチレンボードのベースに、NochやMini Naturの草花の素材を貼り付けています。

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島式のホーム向けには、両端のスロープに置く細長い花壇を作ってみました。こちらも5mmのスチレンボードのベースに、Mini Naturの草花の素材をアレンジして貼り付けています。

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草花の飾り付けが終わったら、スチレンボードが見えている部分を隠します。手前の大型花壇はMetcalfeの赤レンガ柄のペーパーを巻いて、レンガ造りの花壇に。

奥の細長い花壇は別アレンジにするべく、以前裏庭の囲いを作るために買ったScale Model SceneryのWooden Fancingの余りを利用して、木製の囲い型に。白く塗装し、長さを切り詰めて貼り付けました。

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素材に使ったWooden Fancing
レーザーカットのカードキットですが、非常に良く出来ています

Signboard

もう一つホーム上の小物として、掲示板の製作も行いました。掲示物は、GaugemasterのGWRの掲示用ボードと往年のGWR宣伝ポスターのシールを使います。

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このシールのサイズに合わせて掲示板を作っていきます。材料は、TAMIYAのプラ角棒(3mm, 5mm)とプラ板(1.2mm厚)。

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5mmのプラ角棒を土台にして、掲示板をそれっぽく造作します。土台を入れたのは掲示板を簡単に自立させるためですが、この部分を花壇に見せることで、不自然さをなくします。

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サフを吹いて花壇を塗装したところまで。

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雰囲気を出すために、掲示板上端にヒサシを追加しています。以前作ったScale Model SceneryのStation Signsのカードキットの余りを、素材として利用しました。このカードキットで使われているペーパーは、硬質ながらカッターでも素直に切れるので、細かい素材を作るのに向いています。

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掲示板の塗装はエアブラシで。TAMIYAのアクリル塗料XF-8ハルレッドをベースに、XF-2フラットホワイトを加え、XF-3フラットイエローとXF-8フラットレッドを少量足して、やや明るくなるように調色しました。

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掲示板とポスターのシールを貼り付け、Mini Naturの草花を植えれば出来上がり。

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こちらは駅舎の壁に貼り付ける用。こちらもカードキットの余りで製作してます。

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Decoration

今回作った小物は、いずれも基本的にポン置きできるものですが、島式ホーム用に作った花壇は思いのほか高さが出てしまったので、ホームの一部を切り取って花壇埋め込むことにしました。スタイロフォームで作っているからできる現場合わせ芸。

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駅舎ホームの花壇たち。

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駅舎のポスター。

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島式ホームの掲示板。

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跨線橋脇にも。

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ちょっとした変化ですが、レイアウトの中に置いた瞬間に生き生きとしてくるのは本当に面白いです。こうやって毎年少しずつアップデートを重ねていけるのは、長年かけて作るレイアウトならではの醍醐味。また来年が楽しみです。

余談

GaugemasterのGWR掲示板シールに、下写真赤矢印の柄のものが入っていて、「これはいったい何だろうね?」というツイートをしたら、Shedly Yardのひとが教えてくれました。

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「ポスターを剥がした跡」... なるほど!

(Gaugemasterのひとが「いいね!」してたのできっと正解(笑))