祈りの橋(前編)

橋を架けたい

国鉄道風景で外せないもののひとつに鉄道橋があります。その中でもとりわけ特徴的なものは、Viaductと呼ばれる連続した橋脚を持つ一種の高架橋です。

もちろんソドー島にも登場します。

背の高いViaductまでは無理としても、レイアウトのどこかに橋の風景が入れられれば... 狭い平坦なレイアウトの中でひとつ候補地を見つけました。

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トンネルから出たあと、カーブを描きながら小丘の間を抜ける箇所。赤矢印のように両側の丘の頂上を結ぶ形で橋を架けることができれば、なかなか絵になる情景が出来上がりそうです。長さは差し渡し45cmほど。線路と線路の間にある程度スペースがあるので、ここに橋脚を置けそうです。

普通はストラクチャーに合わせて情景を組み上げていくものですが、今回はすでに出来上がっている情景の中にストラクチャーを組み込んでいくことになります。まずはこの場所にあう橋のストラクチャー探しが始まりました。

豊富なストラクチャーを出しているFallerやNochといったドイツのメーカーを中心に見ていたのですが、なかなかいいものがありません。困ったときのYouTube頼みということで、自分がよく見る本国の英国鉄道模型界隈の皆さんがどんな橋を使っているのかを見ていくことにました。

大好きなYorkshire Dales Model Railwayの動画から。

渓谷を跨ぐ形で立派なViaductのキットが設置されています。ところでこのキット。どこかで見たことあると思ったら、PECOがWILLS KITSブランドで出しているプラキットで、PECOの展示用レイアウト(Pecorama)にも堂々と真ん中を貫く形で使われいました。

このViaductキットの特徴は、基本となる3 arch, 2 pillarのキットに1 arch, 1 pillarの拡張キットを追加していくことで、好きな長さのViaductを自由に作れるところにあります。

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作り方の詳細を載せてくれている動画も見つけました。

当然このままの高さでは組み込めませんが、プラキットなので橋や脚の長さをある程度調整すればいけるのでは、そんな目算で基本キットと拡張キットを1つずつ購入しました。

早速部品を取り出して候補となる場所に当ててみます。

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写真のように基本は2つのアーチで線路をそれぞれ跨いで、線路の間に1つ橋脚を置く形。ここまでは想定通りですが、両端はこのままの形では届かないので、丘の斜面にそれぞれ橋脚を置くことになりそうです(水色の矢印)。またレンガの壁面を丘の斜面に合わせてのばしてあげる必要があります(黄色の矢印)。

ViaductというよりはBridgeと呼んだ方がいい規模ですが、ひとまずは作れそうな形は確認できました。

プラキットの塗装

それまでストラクチャーはほぼカードキットか、レジン製の完成品のものしか使っておらず、本格的なプラキットは初挑戦。橋は構造の簡単な建築物なので組み上げ自体はなんとかなると思っていましたが、塗装はまったくの未知の領域でした。この塗装があるが故にいままでプラキットを避けていたと言ってもいいぐらいです。どんな塗料を使えばいいのか、どういう順番で塗っていけばいいのか。ほぼ何も知りません。

そこでRailway Modeller 2020年1月号の付録として付いてきた小さなYard Officeのプラキットを実際に作ってみて、塗装の練習をしてみることにしました。袋をあけると、煉瓦色のプラスチック成型色の部品が一枚板状につながっています。

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ニッパでランナーから丁寧に部品と切りとって、ヤスリでバリ取り。この辺は特に問題なく進みます。

次に先に塗装をするのか、それとも組み立ててしまうのか。Railway Modellerに載っていた作例記事では先に組み立ててから塗装をしていました。が、今回は細かい部品が多かったので、組み上げてから塗り分けるよりは... と、まず先に塗装することにしました。

塗料は扱いやすいアクリル塗料を使います。用意したのは以下の3色、デッキタン、ハブ、ダークイエロー2です。最終的に作る橋の色をイメージして、キットの完成見本ようのような煉瓦色にするのではなく、ベージュ、黄色系で揃えました。加えてレンガの目地に墨入れするためにMr.ウェザリングカラーのグランドブラウンも用意しました。

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さて塗装開始。まずはハブ一色で筆でベタッと壁面にあたる部品を塗ります。乾燥を挟んで3回ぐらい塗り重ねるとようやく煉瓦色の成型色が見えなくなりました。その後、アクセントをつけるためにちょこちょことデッキタン(黄色矢印)、ダークイエロー2(ピンク矢印)を個々のレンガをぬり分ける感じでのせていきます。そして最後にさっとウェザリングカラーをのせてふき取ると、レンガの目地がくっきりと浮かび上がり、明るめだったハブの色も落ち着いて重厚感が感じられる色になりました。かなりイメージに近い色で、色の選択は間違っていなかったようです。

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この調子で残りの部品も塗っていきます。屋根および樋はダークアイアンを塗ったあとにウェザリングカラーをのせています。ドアはフラットグリーン、ドア枠、窓枠はホワイト、煙突の台はデッキタン、筒の部分はハルレッドを使用しています(すべてタミヤカラーのアクリル塗料)。

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いざ組み立て!煙突部分、樋の組み付けにやや苦労しましたが、なんとか見られる形になりました。接着剤をつけた部分は塗装が溶けてしまうので、その部分は塗り直しをしています。でも雰囲気がいいからヨシ!

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これで完成でもよかったのですが、最後に使ってみたかったタミヤウェザリングマスターでお化粧。

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濃い色を塗った部分はあまり目立たないですね... はは。やりすぎるとただの汚い汚れに見えてしまうので注意が必要です。やりすぎたところは拭き取りをして、最後につや消しのトップコートをスプレーして完成。

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やはり写真に撮ってみると粗も目立ち、いかにもキットビルドのストラクチャー感満載なのですが、なぜかキットの完成見本よりもずっといいものが作れたという満足感が半端ないです。今回は特に改造もしてないし、ただ塗装しただけなのに愛着が溢れ出るのはなぜなのでしょう。これがキットを作る醍醐味か!塗装の練習というよりはプラキット製作の面白さに目覚めた感じでした。

さて、いよいよ次回は橋の製作に取り掛かります。

(つづく)

 

#TwitterModelTrainShowよもやま話

はじまり

先日の記事の繰り返しにはなるのだけど鉄道模型は基本的に個人で楽しむ趣味だと思っている。でも決してソーシャルな側面を否定しているわけではない。人との交流は新たな発見があるし、何より楽しい。

鉄道模型といってもひとによって楽しみ方は様々で、車両を作ったり、走らせたり、コレクションしたものを飾ったり。自分は英国の鉄道風景とその文化が好きなので、自然と英国の鉄道をモチーフとしたレイアウトを作ることが楽しみとなった。

鉄道模型の楽しみを共有するイベントも様々で、日本でいえば国際鉄道模型コンベンションのような大規模なものから、ローカルな展示会や有志の運転会まで、楽しみ方の幅だけ催しがある。

昨年のイベントのひとつ「鉄道模型コンテスト2019」で、英国の鉄道模型メーカーPECOが作った小さなモジュールレイアウトがひっそりと出展されていた。

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それほど足を止めて見てるひとはいなかったけど、僕の目は釘付けになった。初めて直に見た英国式のレイアウトだった。その衝撃たるや。

もっとこういうレイアウトを見てみたいし、それよりなにより自分も参加したいと思うようになった。

問題はレイアウトを見せたりするイベントというのはなかなかにハードルが高いこと。当然展示に足るクオリティが必要なこともさることながら、可搬なモジュールレイアウトにする必要がある。けれども日本のイベントで英国式のレイアウトを見ることは非常に少ない。自分の楽しみを満足させてくれるイベントを探すのは、どうやら難しいということがわかってきた。

そうじゃなくて、もっといま作ってるおうちのレイアウトを気軽に見せあってダべるようなことができたら... 最近鉄道模型関係のツイートを英語にしたのはこれが理由だったりする。

そうして興味を持ってくれるひとが少しずつ増えてきた折、ひとつのツイートが目に留まった。

 The London Festival of Railway Modellingというロンドンで開かれる(たぶん一番大きな)鉄道模型イベントが新型コロナウイルスの影響で延期になってしまったことを受けて、代わりにTwitter上で #TwitterModelTrainShow というハッシュタグを使って1日イベントをやりましょうという呼びかけだった。英国の鉄道模型イベントは僕の中の憧れで(小さなモジュールレイアウトを見ただけで衝撃を受けたぐらいなので、現地に行ったらきっと卒倒してしまうだろう)、オフィシャルではないにしろその代わりの催しとはいえ参加できることはまたとないチャンスだった。やるなら本当にイベントに参加するつもりでやってみようと思った。

構想

展示会ともなれば、ただ列車を走らせるだけではなくて、何かレイアウトの紹介になるようなものを入れたい。ちょうど作りかけていたWills KitsのBridgeの製作の様子と、それを実際にレイアウトに組み込んで列車が走るところまでを見せれば面白いのでは、と考えた。レイアウトを作るひとなら、出来上がったものをただ眺めるよりも、どうやって作っているかのほうが興味があるはず。

折しもその週末、日本は三連休。英国との時差9時間もあり、かなり前もって準備できるよねと思っていたところ、フォローしているCheadle Hill氏のツイートを見た。

おお、そうか。展示会に参加するなら宣伝をせねば!新たに撮影している時間はなかったので、撮り溜めてあった写真と動画に、先日のReal Sound動画のために抜き出したGloucestershire Warwickshire Railwayでの収録音をBGMにして紹介動画を作成。尺は短い方がいいが、自分の技量では15秒に収めるのはとても難しかったので、30秒の動画になった。

当日

そうして迎えた3/21当日。自分がやったことは以下のモーメントにある通り。

午前中はBridgeの製作、午後はレイアウトへの据え付け、夜は列車の撮影とほぼ一日中ドタバタしていて、実はハッシュタグに載ったツイートを見ている暇はほとんどなかったのだった。

翌日朝にまとめとしてもう1本、60秒の動画を作成し、その後ようやく参加者のツイートを見始めた。

 家のテラスのようなところに設置されたO Scale。テラスも素敵なら、レイアウトにあるSignal BoxとLevel Crossinもかわいく作ってあってホントに絵になる。鉄道模型がある自然さがたまらない。

こちらも屋外に置かれたOO Scale。ポイントはコーナーにつくられたシナリー。古城と羊のいる牧場。そこに至る小道。さらっと作ってあるのだけど、日本で生活している自分にはとても真似できそうにない、この英国感。

雑誌に載りそうなサイズの正統派レイアウト。OO Scaleで満足のいくレイアウトを作ろうと思ったら、そりゃこれぐらいのサイズになるよね... うらやましい。

 屋根裏レイアウトも定番。日本だと夏が地獄になりそうなので厳しいけども。

Gutさんも紹介されていたN Scaleのレイアウト。OO ScaleがメジャーだとはいえN Scaleもユーザーも多い。大きな景色を作るにはNのほうが有利。まさに風景に溶け込む鉄道を再現できる。

でも皆んながみんな広い場所で楽しんでいるわけではない。日本と同じぐらいコンパクトな場所に作られたレイアウトも多くある。

楽しそうな子どもたち。HornbyオリジナルのAPT-Pが走っているところがポイント。

 一躍有名になったこの猫。こんな自由さも、また楽しい。

こちらフォローさせていただいているCheadle Hill氏のレイアウト。うちのレイアウトと似ていて長方形のベースボードにオーバル型の線路が引いてある。サイズは2.5m x 1.5mだそうで、うちより一回り大きい。

そしてなんとReutersの記事に引用されてた!

そしてもちろんモジュールレイアウトも。

とても全部は紹介しきれない。この幅の広さが鉄道模型趣味そのものだと再確認させられるイベントだった。

終わってみて

普段YouTubeでフォローしている個人チャネルや現地展示会のレイアウトとはちがう、素のままのおうちレイアウトがたくさん見られたのはとても楽しかった。

 もともとの呼びかけの趣旨からやはり英国からの参加者が多数を占めていて(日本からも予想以上に多かったと思うけど)、少なくとも僕にとっては眼福の連続だった。単に素晴らしいレイアウトであれば現地の展示会のレポートビデオを見た方がいいわけだけど、おうちレイアウトはもっと個性的で楽しい。

次の機会があるかどうかわからないけど、またぜひ参加してみたい。

貨物ヤード舗装の改修

2020年年次計画の第一弾、踏切とヤード舗装の改修のうち貨物ヤードの改修が終わりましたので報告をば。

第3期工事(その2)においてボール紙で作成した舗装ですが、以下のような問題がありました。

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  • 線路との隙間が大きい
    線路を通過する車輪との干渉を避けるために線路の形状とぴったり合わせる必要がありますが、直線ならまだしも曲線を正確にカットするのはなかなか難しく。結果として線路との隙間が不自然に空いた形になってしまいました。
  • 継ぎ目が目立つ
    ボール紙をあらかじめ複数に分割して作成しておきレイアウト上で貼り合わせるように施工しましたが、やはり継ぎ目が立ちます。時間が経ってボール紙が反るようになるとなおさらでした。

そこで貨物ヤードと踏切部分について、線路と隙間のないきちんとした舗装の実現向けてやり直すことにしました。

素材案としては、大きくわけて2つの選択肢があります。

  1. 改めて板状のものを使い切り出す
  2. 石膏などの可塑性のある素材を使う

そんなときSHIGEMON氏の梅小路ジオラマの制作動画で、アスファルト舗装にダイソーの石粉粘土を使っているのを見つけました。

石粉粘土は第4期工事(その1)で石壁を作るときに使ったことがあります。石膏よりも扱いが簡単で紙粘土よりも柔らかく、確かに良さそうです。というわけで、この工法を採用することに。

SHIGEMON氏の動画で納得ポイントだったのがプラ棒を使って堤を作っているところ。粘土は圧力をかけるとどこまでも伸びてしまうので、特に地面を成形するときに境目の処理が面倒なのですが、プラ棒であらかじめ区画を作ってあげればしっかりと埋めることができそうです。

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区画ができたところで一気に石粉粘土を埋めます。

 さて線路の外側が埋まったところで、線路と線路の間をどうするか。外側は線路まできっちり埋めても問題ないのですが、内側は車輪のフランジが通るスペースを残す必要があります。

SHIGEMON氏の動画では石粉粘土を使っていなかった(プラ板?)ので、同じくプラ板で加工かな...と思っていたのですが、となると、やり直す原因となった正確な曲線の切り出しを求められるわけで、むむむ。どうにか石粉粘土を使う方法はないものか。

と、そこで目に止まった堤に使った2mmのプラ角棒。2mmのサイズはCode 100の線路と同じぐらいの高さでということで選んだのですが、これをスペーサー代わりとして使えばフランジの通る隙間を残しつつ石粉粘土で埋められるのではないか。ということでやってみました。

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大正解。プラ棒は自由に曲げられるので曲線も問題ありません。 

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そして乾燥待ち。前回石粉粘土を使ったときにも感じたのですが、石膏や紙粘土に比べて割れが出にくい分、乾燥には時間がかかる印象です。厚みにもよりますが、大体3, 4日から1週間程度は見ておいた方がいいでしょう。その間に出てきた割れや縮みによる隙間を適宜補修していきます。

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ヘラ代わりに使っているのは100均で売っていたもんじゃ焼きのコテ。なかなか便利でした。

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さて出来上がったところでRail Headに残った粘土を紙ヤスリで削り落として試運転。

フランジに支障なく走行に全く問題なし。想像以上にいい感じです。

さて次のステップは塗装です。やり直したときからグレイ一色に塗ってしまうのはもったいないと感じていたので、別途木片に石粉粘土を盛って作ったテストピースに手持ちのアクリル塗料でいろいろ塗ってみました。

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矢印にあるライトグレイぐらいのトーンが良さそうです。これに少し濃いめグレイを上からドライブラシっぽくテクスチャを加えてみます。

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なかなかいい感じです。塗装の方針が固まったところでまずは下地のライトグレイの塗装を行います。

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白っぽくて見づらいかもしれませんが、これで塗装済み。で、よく見ると無塗装の時には目立たなかった表面の凸凹が気になるレベルになってしまいました。もっとヤスリがけをして均さないといけなかったようです。一旦塗装は中断してヤスリがけ。

 

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そして再塗装。

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先ほどよりは目立たなくなりましたが、それでも完全に真っ平というわけにはいきませんでした。石膏であれば粘度が低いので自然に平面になると思いますが、石粉粘土は最初の段階でかなり注意深く施工しておかないとキレイに平面を出すのは難しいようです。このあたりは次回踏切の施工時に向けての反省点になりそうです。

次にテストピース同様に濃いめのグレイのドライブラシをかけていきます... が、全然テストピースみたくならない...。 

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これはおそらくテストピースはヤスリがけをほとんどしない状態で塗ったので、いい感じに表面のざらざらが残っていたと思うのですが、ヤスリがけによって表面がすべすべになってしまったので、結果として筆の跡が残る感じになりました。

ここまで来てしまうとあまりやれることはありません。方針を転換してなるべく同じ色をべた塗りしていく方向で修正をかけました。だんだん塗膜が厚くなってテカリも出てきたので、ヤスリがけをしてテカリを抑えつつ、白く禿げたところはグレイで補修して... みたいなことを繰り返しました。

塗装の最後はSafety Lineを黄色で入れます。

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これがやりたかった塗装だったんだろうか...と逡巡。最終的に線路と線路の間の汚しもグレイで再び塗りつぶしました。そのあと舗装と地面の境目をスタティックグラスやコースターフ等で整えて(覆い隠して(^^;)いきます。プラットホーム周りにも少し緑を入れてみました。

 

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というわけで、塗装の絶望の淵からなんとか帰還を果たして完成。レイアウトのテイストと馴染むレベルまで来たので、ちょっとひと息といったところです。やはりいきなり筆でテクスチャをかますというのは3年早かったということで... これなら最初からベタ塗りすればよかったかな。

今回見つけた問題点や改善点は次回踏切の施工に活かしたいと思います。

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鉄道模型を通じた出会い

L_W.Sさん @LWS84922898 から模型をお譲りいただくのにお会いしたのが今週の月曜日。それからなぜかぼんやりとその出来事を考えていた。いま忘れないうちになんとか書き留めたいと思う。

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簡単に言ってしまうと、とても楽しい時間だった。お昼休みの1時間足らず。コーヒーショップの片隅で、どうして英国鉄道模型を始めたのかとか、レイアウトを作ろうと思ったきっかけとか、滔々といままで考えていたことを話したように思う(しゃべりっぱなしですみません...)。こうして英国鉄道模型好きの方と直接話せたこと自体もちろん楽しかったのだけど、本質はもう一つ別のところにあった。

そもそも鉄道模型というのは非常に個人的な趣味だと思っていて、それがこの趣味の好きなところだったりもする。ひとくちに鉄道模型といっても、何に興味があって、どのように楽しむかは人それぞれで、そのひとがいいと思うものを追及できる良さがある。

仕事でも家庭でも100%自分の思う通りにコントロールするのはしばしば困難を伴う(というかまずできない)。だけど、鉄道模型に関してはやろうと思えばそれぞれ個人が思い描く通りにできるし、また思い描く通りにしかできない。ある意味ストレートにそのひとを表現してしまう面白さ(怖さ?)があると思う。

そんな中、今回L_W.Sさんから模型を受け取ったときにいただいた言葉が

「じょばんにさんところにはこれが合うと思って」

だった。そしてやってきたBR(SR) Greenの室内灯付きMk1。鉄道模型趣味が個人的なものであるが故、正直最高の誉め言葉をいただいた気分だった。

こういうふうに鉄道模型を考えているひとがいるのかという驚きと、自分のレイアウトを見て選んでもらえたという感謝と、その結果として差し出された模型が自分もお気に入りだったといううれしさ。なんという巡り合わせ。このMk1を見るたびにきっとこのことを思い出すと思う。

Nardiさんのブログの鉄道模型の多様性の話の中で鉄道模型趣味コミュニティの難しさを書かれていて納得するところが多かったのだけど、実際このような出会いの機会に恵まれると、つながりを持つことの大切さも実感する。自分も構えすぎず声をかけていけるようになれるといいなと思う。

L_W.Sさん、どうもありがとうございました。これからもどうぞよろしくです。

 

2020 Llancot Railway年次計画

年明け直後の1/6にHornbyの2020 Rangeの発表があり、今週はシュピールヴァーレンメッセが開催され、欧州を中心とした鉄道模型メーカー各社から2020年新製品の概要が出揃ってきました。もう2月に入ってしまいましたが、今年Llancot Railwayをどんな感じで進めていくかをつらつらと書き留めておきます。

車両増備

昨年購入予定だったもののスライド。GWR Steam Engine Collectionシリーズ。GWRの大型Tank Engineで貨物を引かせてもよし、客車を引かせてもよし。Liveryはまだ持っていないBR Blackにしようと思っています。

こちらも昨年購入予定だったもののスライド。Hattonsの紹介ビデオを見て購入を決断。Sound Fitted Modelは結構当たり外れがあるのですが、Legomanbiffo + Earth Mover Speakerの組み合わせに「お、これはマジだな」と思った次第。手持ちの貨物で合うものがないので、当面は本線走行のSteam Engineの補機としてつなぐと面白いかなと思っています。

GWR Steam Engine Collectionシリーズ。実はGWR Green LiveryのTender Engineを持っていなくて何にしようかと思っていたのですが、Castle Class、King Classに至る源流としてのStar Classは外せないと思い候補に。

GWRから入って4-6-0 (Ten Wheeler)好きになってしまったので、順当にいくとするとLMSのBlack Fiveかなと。是非とも重連させたいところ。

あとClass 37をもう1両購入してPush Pull編成を仕立てるあたりもやってみたいですね。

客車に関してはMk1, Collet Corridor, Collet Non-corridorはそこそこ揃ったので、今年はHawksworthを揃えたいと思っています。またMk3のInterCity Executive Liveryが出るので、HSTフル編成化も検討。ほんとはBlue Greyも出してくれるととても嬉しいのですが...2021 RangeでECML Final HST編成が来ることを期待しています。

レイアウト関連

既存レイアウトの大きな作業は終わったので、今年は新規で小さいモジュールに手を出そうか... と思っていたのですが、いやいや。まだ既存レイアウトも完成には程遠いので、少しずつ手を入れようと思っています。

Turnout電動化

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周回本線上には10箇所のTurnoutがあるのですが、Z21の導入で操作が簡単にできるようになったので、これらの電動化を目指します。

後付けの電動化なのでSurface MountのPoint Motorを想定。黄色のPECO TrunoutはPECOのPL-11 Side Mounted Turnout MotorをDCC ConceptsのDCD-ADS-8sxでドライブ、オレンジ色のUnitrack TurnoutはDCC ConceptsのCobalt-SSで出来ないかなと思っています。

人形

昨年後半から少しずつ人形を増やしていて、駅前広場はそれなりに見られるようになりました。

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ただし駅ホームや町に関してはまだまだこれからというところで、少しずつ増やしていきたいと思います。

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踏切とヤード舗装のやり直し

踏切とヤードの舗装部分はボール紙にTAMIYAの情景テクスチャーペイントで塗装したものを使用しています。ただ、いまいち精度が出せていないので、プラ板、スチレンボードあるいは石膏などを使用したものに更新することを検討しています。

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バックシーン追加

レイアウトの左サイドにもバックシーンを追加して、レイアウト撮影のポイントを増やせればと思います。すでにバックシーンの受け口は作成済み、パネルを追加するだけの見込み。

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 以上、どこまでできるかはわかりませんが、また順次ブログにてアップデートしていく予定です。

【続・閑話】バックシーン

先日の【閑話】レイアウトの撮影で触れられなかったバックシーン(背景画)について、自分の例をあげて少しお話しようと思います。

とりあえず百聞は一見にしかずということで以下の写真を。まずは例の踏切カーブから。

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1枚目は通常のレイアウト撮影の状態。2枚目が全く同じ構図でバックシーンを取り払った状態のものです。背景画があるだけでぐっと雰囲気が出るのがわかると思います。

次は車庫の全景。

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画面に占める背景画の割合は少ないですが、あるとなしでは見え方が変わってくるのがわかると思います。レイアウトにバックシーンを入れることで、特に小さなレイアウトでも雰囲気のある撮影を楽しむことができます。

もちろんバックシーンは単なる撮影のためのものではありません。是非このラディさんのレイアウト写真をご覧ください。

まさに境目なく奥にレイアウトが続いているように見えます。N Scaleのレイアウトということもあって視覚的に大きな背景となっており、その効果は抜群です。

バックシーンの取り付け

バックシーンの取り付け方についてはレイアウト応じて様々なやり方があると思いますが、自分のテーブルトップレイアウトの場合について紹介したいと思います。

まずは素材。バックシーンの素材は写真でも絵でもなんでも構わないと思いますが、レイアウトの大きさに応じてある程度横長である必要があります。鉄道模型のストラクチャーを扱うメーカーなどからもバックシーン用の素材(ポスターのようなもの)が販売されていますので、気に入ったものがあれば試されるとよいかと思います。自分の場合は英国型をベースとしているので、PECOとGaugemasterのものを使用しています。

横長のポスター状のものを自立させるため、一旦5mm厚のスチレンボードに貼り付けます。のりパネというのり付きパネルがオススメです。便利にかつキレイに貼り付けることができます。

右サイドのバックシーンは2分割。

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奥のバックシーンは4分割。

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さらに裏面にも別の素材を貼り付けています。

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さて、こうして出来上がったパネルをレイアウトにはめ込むためのスロットを作ります。こちらは右サイドの写真。幅の異なる5mm厚の工作材を2枚貼り合わせてL字型の受け型を作り、レイアウトの端に釘で打ち付けて固定しています。

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工作材の厚みとスチレンボードの厚みが同じなので、ぴったりとはめ込むことができます。

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パネルをはめ込んだ状態。

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パネル方式にすることでバックシーンは脱着可能になっているわけですが、これには理由があります。

  • 撮影の自由度をあげる
    レイアウトの撮影ではいろんな方向から撮る楽しみがあり、バックシーンを設置してある方向から撮りたいこともあります。
    例えば踏切カーブを反対側から撮るとこんな絵が撮影できます。

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    右サイドのバックシーンを取り払うことで、カメラを以下のような位置に置いて撮影できます。

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    【閑話】レイアウトの撮影で駅構内を撮影したときも同様に、奥のバックシーンの一部を取り払ってカメラを置いています。
  • 着せ替えを可能にする
    パネルを交換してバックシーンを切り替えることができます。例えば季節に応じたバックシーンにすることも可能です。
    奥のバックシーンではパネル両面に別々の素材を貼ってあり、2つの背景画を切り替えることができます。

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    バックシーンを変えることで、レイアウトが全く変わらなくても雰囲気が随分と変わることがわかると思います。
  • 太陽光の活用
    レイアウト奥の窓から取り込んだ太陽光を使って撮影したいとき、バックシーンを取り払うことでレイアウト全体に光を入れることができます。

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テーブルトップレイアウトでは壁にバックシーンを貼るようなことが方法ができないのでパネルを使うことになったのですが、結果的に使い勝手のよいものができたと思います。

参考になりましたら幸いです。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」

アニメファンにとってはいまさらの話だが「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観た。最近、家族のリクエストでNETFLIXをサブスクライブしたところにちょうど出張があり、飛行機の中で見る作品としてスマホにダウンロードしたのがこれだった。

京アニ作品は今までも「けいおん!」「氷菓」「響け!ユーフォニアム」などは見ていたのだけど、このオリジナル作品には食指が動かなかった。TV CMは覚えている。少女漫画テイストを持ったコテコテのアニメキャラ。「ヨーロッパを舞台にした戦争もの?」ぐらいの認識だった。ただ結果として。往復の飛行機の中で13話の作品を2周することになった(さすがに2週目は若干飛ばし気味で観ていたけど)。

この作品の魅力は言うまでもなく、京アニによるレベルの高いアニメーション表現にあるが、京都アニメーション大賞唯一の大賞受賞作という原作の良さによるところも大きいと思う。

主人公であるヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語。そこに手紙という媒体を通じて戦後を生きる様々なひとたちの物語が織り交ぜられ、ヴァイオレットの再生(成長と書くこともできるが、自分は敢えて再生という言葉を使いたい)を助けていく。大きな戦争を経験した19世紀終わりから20世紀始めぐらいの時代設定ながら個人の物語にフォーカスしており、テーマは非常に普遍的で現代的だ。かつその設定の軸を「自動手記人形」という呼び名の仕事として繰り入れているのがさらに興味深い。この職業に就く女性たちは「ドール」と呼ばれていて、少しアイドルっぽい要素も匂わせている(ヴァイオレットの衣装なんて、あの恰好をする必要があるのか?とか思ったりする)。

一体代筆業なんてものが一般の職業として成り立つ世界があるのか。ご都合主義?と感じられなくもない。だが「ドール」の存在を依頼者が背負う物語の語り部としての第三者とみれば、ヴァイオレットの持つ真摯さとも合わせて不思議な説得力を持ってくる。大胆な設定を物語をドライブする装置として使い切るバランスの良さが、この物語が大賞を受けた理由のひとつのように思われる。

しかしながら、冴えわたる京アニの演出は映像表現として作品をさらに高い次元へ押し上げている。特に僕が舌を巻いたのは10話だ。その前の9話で、主人として慕ったギルベルト少佐の死を知り、自身の過去と対峙し、「自動手記人形」という新しい生を生きようと決意したヴァイオレット。その後に続く仕事のエピソードだ。

とあるお屋敷に住む夫人から出張代筆の依頼があった。夫はすでに他界しており、8歳になろうかという小さな娘アン・マグノリアとの二人暮らし。どのような依頼であるかは伏せられていたが、依頼者である夫人は病気がちの上に娘を代筆の場に入れないとなると、おおよその内容は察しがつく。娘アンに宛てた遺書だ。

アンは最初、ヴァイオレットのことを母との遊び時間を取る「よくないもの」と考えていた。ヴァイオレットも、アンに一緒に遊ぶようにお願いされてもそれは業務範囲外ですと答えていた。非常に彼女らしい受け答えだ。しかし夫人の体調ゆえに幾度か代筆を中断し休息を取らねばなくなり、その間ヴァイオレットが母の代わりにアンの遊びに応えていくようになる。次第にヴァイオレットに懐いていくアンだが、本当に遊びたいのはヴァイオレットではなく母だとこぼす。そしてそれはヴァイオレットが悪いのではなく、自分のせいだと言い出すアン。ヴァイオレットはアンは悪くないと答えるのだが、それは決してアンを救う言葉にはならなかった。

やがて物語はエンディングへ。母が亡くなったあと成長していくアンの姿に、毎年誕生日に母から届く手紙が重なる。手紙の依頼は単なる遺書ではなく、夫人が見ることのない未来の娘に宛てた手紙だったのだ。アンは毎年届く手紙を通じた母の愛に包まれて大人になり、やがて伴侶を得、彼女自身が母となるシーンで終わる。

ここまでであれば、あのときアン救うことができなかったヴァイオレットが代筆の手紙を通じて救うことができた、ヴァイオレットの職業人としての成長のエピソードとして捉えることができる。でも。この10話の核心はエンディングパートに続くCパート、最後の1分にある。

出張代筆の業務を終え、CH郵便社に戻ってきたヴァイオレット。出迎える同僚を前に「アン・マグノリアに今後50年に渡って届ける手紙です。」と、いつもの「報告」をする。だがやがて彼女は大粒の涙を流しながら、依頼者の娘アンの身を案じるのだった。

「私...私、お屋敷では泣かないように我慢していました...」

このひとことのセリフで、10話の核心はアンからヴァイオレットにがらりと移るのだ。職務に忠実であろうとする彼女と、その内側に抱えた心の葛藤。これまで彼女が持ちえなかった感情だ。ヴァイオレットはどんな思いでアンと遊んでいたのか。ヴァイオレットの感情表現が非常に抑制されていたがゆえに、最後の同僚への心情の吐露が胸に刺さる見事な演出だった。(そして機内でボロ泣き→そこにCAさんが食事を持ってやってくる→...こういうときどういう顔をしていいかわからないの...)

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の物語に大きなトリックはない。あくまで個々の登場人物に寄り添って語られる物語だ。観る人によっては平凡で退屈に思えるだろう。しかしアニメーションで深い感情表現を目指す京アニの挑戦の舞台としては申し分ない。いまから春に公開される劇場版を心待ちにしている。