祈りの橋(前編)

橋を架けたい

国鉄道風景で外せないもののひとつに鉄道橋があります。その中でもとりわけ特徴的なものは、Viaductと呼ばれる連続した橋脚を持つ一種の高架橋です。

もちろんソドー島にも登場します。

背の高いViaductまでは無理としても、レイアウトのどこかに橋の風景が入れられれば... 狭い平坦なレイアウトの中でひとつ候補地を見つけました。

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トンネルから出たあと、カーブを描きながら小丘の間を抜ける箇所。赤矢印のように両側の丘の頂上を結ぶ形で橋を架けることができれば、なかなか絵になる情景が出来上がりそうです。長さは差し渡し45cmほど。線路と線路の間にある程度スペースがあるので、ここに橋脚を置けそうです。

普通はストラクチャーに合わせて情景を組み上げていくものですが、今回はすでに出来上がっている情景の中にストラクチャーを組み込んでいくことになります。まずはこの場所にあう橋のストラクチャー探しが始まりました。

豊富なストラクチャーを出しているFallerやNochといったドイツのメーカーを中心に見ていたのですが、なかなかいいものがありません。困ったときのYouTube頼みということで、自分がよく見る本国の英国鉄道模型界隈の皆さんがどんな橋を使っているのかを見ていくことにました。

大好きなYorkshire Dales Model Railwayの動画から。

渓谷を跨ぐ形で立派なViaductのキットが設置されています。ところでこのキット。どこかで見たことあると思ったら、PECOがWILLS KITSブランドで出しているプラキットで、PECOの展示用レイアウト(Pecorama)にも堂々と真ん中を貫く形で使われいました。

このViaductキットの特徴は、基本となる3 arch, 2 pillarのキットに1 arch, 1 pillarの拡張キットを追加していくことで、好きな長さのViaductを自由に作れるところにあります。

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作り方の詳細を載せてくれている動画も見つけました。

当然このままの高さでは組み込めませんが、プラキットなので橋や脚の長さをある程度調整すればいけるのでは、そんな目算で基本キットと拡張キットを1つずつ購入しました。

早速部品を取り出して候補となる場所に当ててみます。

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写真のように基本は2つのアーチで線路をそれぞれ跨いで、線路の間に1つ橋脚を置く形。ここまでは想定通りですが、両端はこのままの形では届かないので、丘の斜面にそれぞれ橋脚を置くことになりそうです(水色の矢印)。またレンガの壁面を丘の斜面に合わせてのばしてあげる必要があります(黄色の矢印)。

ViaductというよりはBridgeと呼んだ方がいい規模ですが、ひとまずは作れそうな形は確認できました。

プラキットの塗装

それまでストラクチャーはほぼカードキットか、レジン製の完成品のものしか使っておらず、本格的なプラキットは初挑戦。橋は構造の簡単な建築物なので組み上げ自体はなんとかなると思っていましたが、塗装はまったくの未知の領域でした。この塗装があるが故にいままでプラキットを避けていたと言ってもいいぐらいです。どんな塗料を使えばいいのか、どういう順番で塗っていけばいいのか。ほぼ何も知りません。

そこでRailway Modeller 2020年1月号の付録として付いてきた小さなYard Officeのプラキットを実際に作ってみて、塗装の練習をしてみることにしました。袋をあけると、煉瓦色のプラスチック成型色の部品が一枚板状につながっています。

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ニッパでランナーから丁寧に部品と切りとって、ヤスリでバリ取り。この辺は特に問題なく進みます。

次に先に塗装をするのか、それとも組み立ててしまうのか。Railway Modellerに載っていた作例記事では先に組み立ててから塗装をしていました。が、今回は細かい部品が多かったので、組み上げてから塗り分けるよりは... と、まず先に塗装することにしました。

塗料は扱いやすいアクリル塗料を使います。用意したのは以下の3色、デッキタン、ハブ、ダークイエロー2です。最終的に作る橋の色をイメージして、キットの完成見本ようのような煉瓦色にするのではなく、ベージュ、黄色系で揃えました。加えてレンガの目地に墨入れするためにMr.ウェザリングカラーのグランドブラウンも用意しました。

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さて塗装開始。まずはハブ一色で筆でベタッと壁面にあたる部品を塗ります。乾燥を挟んで3回ぐらい塗り重ねるとようやく煉瓦色の成型色が見えなくなりました。その後、アクセントをつけるためにちょこちょことデッキタン(黄色矢印)、ダークイエロー2(ピンク矢印)を個々のレンガをぬり分ける感じでのせていきます。そして最後にさっとウェザリングカラーをのせてふき取ると、レンガの目地がくっきりと浮かび上がり、明るめだったハブの色も落ち着いて重厚感が感じられる色になりました。かなりイメージに近い色で、色の選択は間違っていなかったようです。

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この調子で残りの部品も塗っていきます。屋根および樋はダークアイアンを塗ったあとにウェザリングカラーをのせています。ドアはフラットグリーン、ドア枠、窓枠はホワイト、煙突の台はデッキタン、筒の部分はハルレッドを使用しています(すべてタミヤカラーのアクリル塗料)。

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いざ組み立て!煙突部分、樋の組み付けにやや苦労しましたが、なんとか見られる形になりました。接着剤をつけた部分は塗装が溶けてしまうので、その部分は塗り直しをしています。でも雰囲気がいいからヨシ!

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これで完成でもよかったのですが、最後に使ってみたかったタミヤウェザリングマスターでお化粧。

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濃い色を塗った部分はあまり目立たないですね... はは。やりすぎるとただの汚い汚れに見えてしまうので注意が必要です。やりすぎたところは拭き取りをして、最後につや消しのトップコートをスプレーして完成。

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やはり写真に撮ってみると粗も目立ち、いかにもキットビルドのストラクチャー感満載なのですが、なぜかキットの完成見本よりもずっといいものが作れたという満足感が半端ないです。今回は特に改造もしてないし、ただ塗装しただけなのに愛着が溢れ出るのはなぜなのでしょう。これがキットを作る醍醐味か!塗装の練習というよりはプラキット製作の面白さに目覚めた感じでした。

さて、いよいよ次回は橋の製作に取り掛かります。

(つづく)