貨車のウェザリングと石炭積載

前回の記事「本年最終(?)のお買い物」で紹介したCoal Wagonに、ウェザリングと石炭積載をやってみました。

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これから生贄となる貨車...

石炭パーツの製作

Open Wagonにバラ積みの積荷を加工する方法はいくつかあると思います。

先日公開されたHattonsの動画「Using the Hattons Wagon Load kits」では、貨車に直接石炭を模した粒を流し込む方法でした。小型の貨車であれば、この方法が手軽でしょう。

一方で、以下の写真にあるAccurascaleのパーツのように、底上げした板の上にバラ積みの積荷を盛る方法もあります。この場合、底上げした分だけ積荷が少なくて済むうえに、積荷の脱着が可能となります。特に大型の貨車には有用な方法です。

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今回の生贄貨車は2軸の小型貨車ですので、前者の方法でも適用可能と思いますが、失敗した場合や気分が変わった場合も見据えて、あえて脱着可能な後者の方法にて製作することにしました。

まずは底上げのための板を準備します。ちょうど表面が黒塗りのスチレンボードの端材があったので、これを内寸に合わせて切り出します。

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実際にはめるとこんな感じでぴったり収まるようにします。

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さてこれに積荷である石炭を盛っていきます。石炭は以前にホビーセンターカトー東京で買ったWoodland ScenicsのLump Coal B93を使用しました。これ一袋で600円ぐらい。

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最初にプラダンの端材を使って囲いを作ります。

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底面に木工用ボンド水溶液(+ほんのちょっと洗剤)を塗って、石炭を撒いていきます。

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盛る形はAccurascaleのパーツを真似て中心をやや高めにして端に行くほど低いお山の形にしました。基本的には撒いたままあまりいじらない方が自然な感じがすると思います。

ある程度盛れたら、木工用ボンド水溶液をスポイトで染み込ませて固めます。このとき、少し霧吹きか何かで石炭を湿らせてからボンドを垂らすと、うまく染み込んでくれるようです。5両分作って乾燥を待ちます。

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貨車本体のウェザリング 

さて乾燥を待つ間に貨車本体のウェザリングに取り掛かります。

用意したのはMr.ウェザリングカラーのグランドブラウン。Mr.ウェザリングカラーは、これまでストラクチャのテクスチャを強調したり、トーンをつけるのに使ってきましたが、車両に対して塗るのは初めて。色はマルチブラックと迷いましたが、やりたいのはあくまで汚しでスミ入れではないので、広く塗っても見た印象が柔らかくなるブラウンを選択しました。

合わせてドライブラシ用の筆も準備して、いざ開始。

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といっても何かお手本があるわけではないので、基本的には試行錯誤です。幸いMr.ウェザリングカラーは拭き取りが簡単にできるので、ちょっと塗ってみて、イメージとちがったら拭き取ってやり直す、の繰り返しです。1両目でなんとなく感じを掴んだところで、2両目からは以下のようなやり方で進めました。

まずはこれが素の状態。

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まずはMr.ウェザリングカラーをそのまま使うのではなく、専用のうすめ液で少し溶いたもので下地の汚しを入れていきます。この段階ではあまり細かいところは気にせずに、全面に満遍なく表面にブラシを擦り付ける感じでガシガシ塗っていきます。このとき筆の運びは必ず上下方向になるようにします。すると筆跡も上下方向に付くので、汚れが雨などで垂れたような印象を与えることができます。

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次にMr.ウェザリングカラーを薄めずにそのまま筆にとって、一旦ペーパーなどで塗料を落とし、ドライブラシの要領で凹凸がある部分(金具やエッジ部分)を中心に擦っていきます。すると色が薄い平面部分に対して凸凹している部分に濃い色が入り、汚しに表情が出てきます。このテクスチャの付け方がお好みの部分ではあるのですが、自分はこの方法がお手軽だと思いました。

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続いて足回り。こちらは地色が黒なので、Mr.ウェザリングカラーでは色が十分に出ません。そこでアクリル塗料を使いました。色は錆色表現の基本となるタミヤカラーXF-10フラットブラウン。

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こちらもドライブラシの要領で足回りに擦り付けていきます。

ただ写真をみてもわかると思うのですが、非常に目立たない(笑)。近づけばわかるかな?程度で、遠目に見るとほとんど汚れが視認できません。やはり足回りを汚すにはエアブラシできっちり着色する必要があると思った次第です。

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ともあれ、こんな感じで生まれ変わりました。

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石炭の積み込み

さて石炭のほうはというと、やはり冬場はなかなか乾燥が進みません。ドライヤーで強制乾燥させて、囲みを外します。出来上がりはまずまずといったところでしょうか。

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底上げするために、スチレンボードの端材を切り出して貨車の中に置き...

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その上に作った特製石炭プレートを載せて...

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いや、これは盛りすぎ。底上げのスチレンボードを2枚重ねてたので、1枚に減らします。f:id:giovanni_ihatov:20201206171032j:plain

む。よさそうです。残りも同じように据付けて完成!

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もちろん出来上がったらレイアウトでお披露目を。

貨車の加工は初めてだったのですが、なかなか満足の行く仕上がりになりました。腕木式信号機の組み立てでだいぶ消耗したので、工作からはしばらく遠ざかっていたのですが、やはりモノを作って出来上がっていくのは楽しいですね。

完成品に手を入れるのは、失敗したときのリスクを考えるとなかなかビギナーには手を出しづらいのですが、今回£25という安価でまとまった貨車が手に入ったのは僥倖でした。貨車や客車などは、新古、中古でいろいろと掘り出し物が出るので、今後もこういうチャレンジのための車両も買っていければと思います。

本年最終(?)のお買い物

というわけでお買い物報告です。今回はHattonsから。チマチマ買い集めていた中古やらPre-order品やらがTrunkにたまってきたので、先週まとめて発送をかけました。

ん?Trunkとはなんぞや?購入品紹介の前にHattonsの'Trunk'サービスについて少し触れたいと思います。

Hattonsの'Trunk'サービスとは 

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HattonsのTrunkサービスは今年の5月から導入された新しいサービスで、ひとことで言うと「取り置き&まとめ発送」をしてくれるサービスです。特に送料が気になる我々のような海外のお客にとっては、大変ありがたいサービスと言えます。他の鉄道模型店でも取りまとめ発送のような仕組みがあるとは思いますが、Hattonsのようにコマースシステムに完全に組み込まれているものはちょっと見たことがないです。

Trunk = 自分の購入品を一時的に預けておく場所

Hattonsで商品購入をする際、

  • 指定の住所(たいていは自宅)
  • Trunk

のいずれかを選択できるようになりました。これは在庫品に限らず、Pre-orderのものも指定可能です。Trunkを選択した場合の費用請求は以下の通りです。

  • 商品代金については、在庫品は購入時、Pre-order品は入荷時に請求されます(通常発送する場合と変わらず)
  • 送料は無料の扱いとなります
  • non-EU圏のお客に対してはVATはかかりません

こうしてTrunkに預けたものは、トップページ右上のTRUNKアイコンから一覧が見られるようになっています。Trunkに対しては以下の操作が行えます。

  • 任意のタイミングで指定した商品を発送することができます(全部でも一部でもよい)
  • その際、発送する商品の総重量や選択した運送会社(Royal Mail, DHL など)によって、相応の送料を支払います
  • Trunkにある商品の購入キャンセルはできるようですが、返金は一定の手数料が差し引かれるようです(実際にやったことがないので、どれぐらいなのかとかはわかりません)

現在のところ、Trunkに預けられる個数や期間などの制限については、特に設けられていないようです。

都度都度注文をかけると送料がかさばるので、中古品や少額の商品は購入をためらう(そして結果として売り切れてしまう)ことがありましたが、この仕組みのおかげで現地英国鉄道模型勢のみなさんと同じように、躊躇なく購入ができるようになりました (やったー!)。

Hattonsは平日はほぼ毎日中古品が追加されます。日本時間の早朝にあたるので、まず起きたらHattonsのpreownedを確認しましょう。掘り出し物を見つけたら、即Trunkへ。早起きの良い習慣になると思います。

というわけで、このHattonsの'Trunk'サービスに支えられて購入したものが以下に続きます。

貨物祭り

まずはOxford Railの新製品から。車庫改修でFuel Tankを設置してはみたものの、実はTankerを1両も持っていなかったので、3種類選んでみました。

  • Oxford Rail OR76TK2001 12-ton tank wagon Mobil
  • Oxford Rail OR76TK2003 12-ton tank wagon Colfix
  • Oxford Rail OR76TK2004 12-ton tank wagon Benzol and By-Products
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同じく中古で見つけたBachmann Branchlineのもの。ワイヤが金属製なのがポイントです。

  • Bachmann Branchline 37-680 14-ton tank wagon with large filler Esso (x 3)
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またEra4あたりで使えるCoal wagonも拡充しました。

  • Hornby R2138 Colliery Set (のうちCoal Wagon5両だけ)

蒸機+貨物のセットの貨物部分だけ中古で売られていたもので、5両で£25はなかなかお得。

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貨物全般は生産数が少ないのか新品の在庫が潤沢にあるわけでもなく、発売予定品もなかなか出てこなかったりするので、中古を丹念に漁るほうが安くてよいものが手に入りやすいと思います。

レイアウトの小物たち

最初にSteam Engineの運転士さん人形から。P&D MARSH MODELSのもの(写真左)は初めての購入ですが、リーズナブルな価格(£7)でも出来はよさそうです。Bachmann Branchlineのもの(写真右)はおかわりです。

  • P&D MARSH MODELS PDZ19 - Locomotive Crew
  • Bachmann Branchline 36-047 - Locomotive Staff
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次にBachmann Branchlineから出ている車庫周りの小物セット。

  • Bachmann Branchline 44-508 TMD Accessories

元値£15.45のところをバーゲンプライスの£8.50になっていたので購入。Stopサインとかは自作すると地味に面倒なので助かります。

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もうひとつ車庫周りの小物でドラム缶。

  • PECO Model Scene 5067 Oil Drums

少しウェザリングして給油所付近に置くと良さそうです。

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InterCity Executive Livery!

先日HST InterCity Executive Liveryがフル編成揃ったので狭いレイアウトを爆走させたところ、すっかり気に入ってしまいました。

在籍するInterCity Executive Liveryはもうひとつ「Class 47 + Mk2E」があります。

もうお分かりですね。 問題は何両買い足せばよいかですが、下記のYouTubeビデオなどを参考にしつつ、所定7両編成としました。

  • Hornby R4809 BR Mk2E Open Standard Coach '5889' (x 4)

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いままで同じ型番のものを複数買うのはいまいち気が乗らなかったのですが、貨物を買うようになってからそのような迷いがなくなりました。当然車番が被りますが、走れば気になりません!
今週末はようやく時間が取れそうなので、またレイアウトを賑わせたいと思います。

冬支度

先々週ご報告したAccurascaleのHUO Coal Hopperですが、早速レイアウトを賑わせてくれています。

小さなレイアウトで長編成の貨物列車がどう見えるか期待半分不安半分だったのですが、2軸貨車だと急カーブでもきれいなラインで見えるので大正解でした。

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この長さであれば12両でも駅の有効長内に収まるので、運用上も問題なし。先々はStanier 8FやClass 25を導入して、Era5以降の貨物列車のバリエーションも広げていきたいと思います。

と思っていたところにAccurascaleから新しい製品の発表が。

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Q3 2021リリースということで、来年の増備計画に算入することになりそうです。

レイアウトの冬支度

車庫改修以降、しばらく手を入れてなかったレイアウトですが、冬支度ということで先延ばしにしていた作業を少しやりました。

まずは簡単な目隠しから。駅の端から街の下をくぐるトンネルの入り口に出来た隙間(写真左)。トンネル内のカーブを抜けてくる車両が当たらないように少し壁を外にずらしたためにこうなったのですが、トンネルポータルを作り直すのも手間で放置していました。

だったら何か覆い隠せばいいんじゃない?ということで、縦長の形状を利用して、壁沿いにツタが生えているイメージで埋めることにしました。使用したのはMini Natur 930-21 カエデやモミジ(HO) 萌える春(写真右)。

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本来の使用方法は、これを細かくちぎって木々の枝葉にするのですが、このまま形状に合わせて切り出して貼り付けてみます。

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近くに寄ると「?」となりますが、遠目に見る分には十分で隙間を隠すという目的は達成されているようです。Mini Naturはまだ余りがあるので、また別の場所にも使ってみようと思います。

次に街に人形を少し追加。教会の前(写真左)と宿の前(写真右)。自転車の人形はどうしても使ってみたかったもの。NochのTemporary Glueでもなかなか自立させるのに難儀しましたが、なんとかなりました。

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欄干に腰掛けるTrain Spotterの少年もTemporary Glueでしっかりと固定。大人の撮り鉄さんたちも追加。

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車庫の方にも人形を追加。車庫見学の家族連れです。このSignal Boxはいまは使われていなくて、見学者のための案内所兼休憩所になっているという設定です。

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そして最後にツリーを。昨年は駅前に飾っていましたが、今年は街にしてみました。

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土台の部分に電池とスイッチを内蔵しているので、どこでも飾れます。

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夜景。無事にクリスマスを迎えたいものですね。

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腕木式信号機(その2)

さていよいよ製作開始です。今回腕木式信号機の製作にあたって、是非とも達成したい課題を以下の2つとしました。

  • LEDによる発光機能の組み込み
  • サーボモータによる腕木可動化およびDCC制御

一方で

  • 塗装表現
  • 細かいパーツによるディテール

については優先度を下げることにしました。もちろんどちらも両立させるのが腕の見せどころとは思うのですが、それはもう少し慣れたらの話で、まずは「光ってちゃんと動く」ことを目指したいと思います。

LEDによる発光機能の組み込み

腕木式信号機はその腕木の位置によって信号現示を行うとともに、腕木の先に付けられたGreed, Yellow, Redに着色されたガラス板に灯りを当てることで、色灯式と同じような灯火も備えています。レイアウトに組み込んで特に夕景や夜景での運転を楽しむ際、灯火があるかないかで見栄えがずいぶん変わってくると思います。

キットに付属の腕木のパーツをみると、ガラス板にあたる部分には既に着色されたフィルムが埋め込まれていました。つまりこれに後ろから光を当ててあげればよさそうですが、問題はそのサイズ。

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ガラス板に相当する部分は直径が3mm程度の穴で、その後ろのカンデラも高さが5mm程度。砲弾型LEDでは大きすぎるので、チップLEDを直接マウントするような加工が必要です。ただチップLEDに導線を結線するのは自分にとっては至難の技。さかつうギャラリーさんでチップLEDに直接導線を結線したパーツが売られていたので、これを使うことにしました。ありがたや。

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チップLEDに導線がついているというよりは、導線の先にチップLEDがくっついているという表現のほうがあってますね。LEDのサイズは1.6x0.8mmです。

3Vのボタン電池で点灯試験。光量は十分です。

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腕木パーツに当ててみます。大きさもちょうどよく、思った以上にしっかり色が出ますね。

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続いてマウント作業へ。チップLEDの長辺方向が上下に収まるように、カンデラのモールド表面をやすりで削り、少し窪みを作ります。

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加工前(左)と加工後(右)

1mmのピンバイスで穴を開け、導線を通したあとチップLEDを瞬着で固定します。

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導線は絡まないようによって、サフを吹いたあとに黒のアクリル塗料で塗装。ポストの先にある装飾(finial)も赤く塗装しました。この2箇所が今回唯一行った塗装作業です。

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LEDを組み付けた全体図。LEDの導線は最終的にはポストにまとめる予定です。

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Home & Distant Signal(左)とJunction Signal(右)

腕木を可動させる

LEDの組み込みができたところで、腕木をワイヤで可動するように組み付けていきます。Home&Distant Signalは下記説明書にあるように、ポストに沿って真っ直ぐ下に下ろすだけです。

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ところが。予想されてはいたのですが、Junction Signalはブラケットの先にある腕木を可動させるために2つのクランクを通さなければいけません(黄色破線の囲み)。

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これがなかなかの難工事。クランクをブラケットに組み付けた状態で残りのワイヤを通すのは神業が必要になってしまうので、写真にあるように一連のワイヤをすべてクランクに通したあと、クランクをブラケットに組み付ける、という順番で作業をしました。

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当然手順のことは説明書に触れられているわけはなく、これを考えつくのに結果として2週にわたる作業になりました。

ひとまずここまででレイアウトに組み込む準備ができました。

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このあとは実際にレイアウトに組み込んで、LEDの電源引き回しとサーボモータの設置となります。DCCによるサーボモータの制御については、当初Train-TechのSV1 Servo Controllerを考えていたのですが、 Desktop StationのDSservo Decoderが再販されると聞き、取り回しとコストパフォーマンスの観点からそちらを使う予定にしています。

(つづく)

Accurascale HUO Coal Hopper他届く

久しぶり(?)にお買い物報告など。

William Stanierの名機Black Five。その楽しみ方は急客機としての運用だけでなく、貨物機としても運用できる汎用性にあると思います。

先日導入したBlack Fiveは保存機仕様ですが、BR late crestなのでBritish Railway Steamの晩年にあたるEra5(1957-1966)あたりの貨車を引かせてみたい!と似合う貨車をいろいろ探していました。

Accurascaleは2015年設立の新興の鉄道模型メーカーIrish Railway Modelsの姉妹ブランドで、非常にDetailに凝ったWagonをあれこれ出しています。例えばIrish Railway Modelsの方でアイルランド国鉄のビール樽輸送貨車を出していたりして、なかなか面白いです(売り切れてなければ欲しかった...)。

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最近ではLocomotiveの開発にも乗り出しており、ディーゼル機関車 Class 37, Class 55 - 'Deltic'、また電気機関車Class 92、さらに最新CoachであるMark 5(Trans Pennie Express, Caledonian Sleeper)などがラインアップされており、今後が期待されるブランドのひとつです。自分もClass 37を予約していたりします。

このWagonの中のひとつ24.5t HOP24/HUO Coal Hopperをお相手に選びました。直販だと4パックバンドルセットがあったので計12両の導入です。やっぱり貨物どうしてもたくさんつなぎたくなりますよね。僕はなぜAccrascaleが最初にWagonの発売から始めたのか、その理由がわかるような気がしました(笑)。非常にCleverな経営戦略だと思います。

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また純正パーツとしてCoal Loadsもあったので合わせて購入。こちらは直販は売り切れていたのでThe Model Centreから。

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課題はウェザリングをどうする?というところなのですが、まずは走らせて追々考えてみたいと思います。

ついでに性懲りもなく積みキットを買ってみたり。こんなのどこに置くんでしょうね?

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以下のOverall Roofは完全に将来のレイアウト検討用です。天蓋付きの駅は今回のレイアウトで諦めているもののひとつですが、いつかのために素材となるキットを探していました。こちらのPECOのものが一番汎用性がありそうなので、これをもとに何ができるかを妄想したいと思います。

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つづく?

腕木式信号機(その1)

さて次なるプロジェクトのお話です。直近の車庫改修が大工事だったこともあり、今回は少しお手軽なものということで、腕木式信号機(Semaphore Signal)を導入してみたいと思います。

腕木式信号機は、鉄道発祥の地イギリスで鉄道黎明期から使用され、幾度にわたる改良を重ねられ、いまも現役で使われている英国鉄道風景になくてはならない存在です。

いまのレイアウトにはTrain-Techの色灯式信号機(2灯式、3灯式)を導入していますが、腕木式信号機は当時設置の難易度から諦めたのでした。

上記過去ブログ記事にも書いていますが、OO Scaleで使える腕木式信号機Dapolからモーターで動作するものが製品化されており、バリエーションも豊富です。腕木が動くだけでなくLEDによる発光もサポートされており、仕様としては申し分ありません。

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またDCC制御に関しても、Train-TechからDapolの製品向けのDCC制御用モジュールが発売されていて、これを組み合わせることでDCC制御可能なLED付き可動腕木式信号機が出来上がるのです。これを買わないで何を買う?という感じですね。

ところが。

この製品、ウェブカタログを見てもわかるように、ベースボード下に埋め込む部分のサイズが異常に大きいのです。

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もちろんサーボモーターなど腕木を動作させる仕組みが入っていると思うのである程度は仕方ないと思うのですが、ベースボードの下にぶら下げるにはちょっと躊躇する大きさです。

またRMWebに投稿されていたマニュアルを見ると、設置の際に必要な穴の直径は15mm、ベースボードの厚みは1-22mmとなっていました。いまのレイアウトのベースボードの厚みは25mmあり、さらにその上に5mm厚のコルクを敷いているので、最低でも30mmの厚みが許容されていないと設置できません。また真偽のほどは不明ですが、上記にリンクしたRMWebのDapolの信号機に関するスレッドを読んでいくと、「すぐ動かなくなった」というような書き込みが散見されました。決して安い買い物ではないことを考えると、購入を思い留まるのに十分なインパクトがありました。

そこでDapolの信号機の導入は止め、別の方法を探ることにしました。

腕木式信号機を知る

「可動式」「完成品」という制約を取り払って検索してみると、PECOがRatioブランドで出しているキットが候補として挙がってきます。バリエーション展開も豊富で、信号機の種類だけでなく、Big Four時代の各会社ごとの特徴を再現したものとなっていて魅力的です。

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しかしこの中から一体どれを選べばよいのでしょう?

色灯式信号機では2灯式(Green/Red)、3灯式(Green/Yellow/Red)など、せいぜい信号の灯の数を選ぶぐらいだったのですが、腕木式信号機はそんな単純なものではなかったのです!(いまさら...)

腕木信号機には赤い腕木のHomeと黄色い腕木のDistantがあります。これらHome, Distantはそれぞれ単独でポストに付いているものもあれば、2つが組み合わさったものもあります。また腕木が縦に並んでいる場合もあれば、ブラケットと呼ばれる台に並んで付いているものもあります。

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様々な腕木式信号機

これが何を意味するのか?身近に腕木式信号機を見たことがない自分にとっては、全く未知の領域でした。レイアウトに導入する前に、まずは実際の腕木式信号機の運用を知りたい。イギリスのRail Booksという鉄道関連書籍の専門書店で腕木式信号機に関する適当な本を探していたところ、Great Western Study Groupという研究グループ(?)が出版した「GWR Signaling Practice」という本を見つけました。

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400ページに及ぶ大著で、Great Western Railwayで使用された様々な種類の信号機及信号所の設計、配置、運用について、膨大な写真を交えながら解説されています。まだまだここに書かれたすべてを理解するには至っていませんが、以下にレイアウトに腕木式信号機を導入するのに必要な程度の紹介をしたいと思います。

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Distant, HomeそしてStarting Signals

図は左から右へ一方向に運行される線路において、どのように信号機がおかれるかを示した最も単純な例です。

線路はBlock SectionとStation Limitsの区間に区切られます。Block Sectionはいわゆる閉塞区間で、原則としてこの区間に入れる列車は1編成のみです。

Station Limitsは駅やヤードなどの区間となる部分で、この区間内には本来もっと複雑な配線や信号が存在します。そのStation Limitsに入る最初の停止信号機(Stop Signal)をHome Signalと呼び、最後の停止信号機をStarting Signalと呼びます。そしてこの例ではStarting Signalから次のHome SignalまでがBlock Sectionとなっています。

Home SingalとStaring Signalが停止信号機であるのに対し、その手前におかれる警戒信号機(Cautionary Signal)をDistant Signalと呼びます。信号機の置かれる場所が信号所から離れていることから、この名が付いています。

腕木式信号機が表す信号はDanger/OnもしくはAll Right/Offです。腕木が真横の状態がOnですが、Offについては腕木が上方に傾くタイプ(Upper Quadrant)と下方に傾くタイプ(Lower Quadrant)の2種類があります。イギリスではUpper Quadrantが主流ですが、Great Western Railwayの路線はLower Quadrantが使われていたようです。

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Upper QuadrantとLower Quadrant

また腕木の形は、停止信号機が四角い腕木を持つのに対して、警戒信号機は一端が燕尾形(Swallow Tailed)になっているのが特徴です。また色も停止信号機の赤色に対して警戒信号機は黄色で塗られています。

さてこの基本を踏まえて、バリエーションを見ていきます。

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左側はHomeとDistantが1つのポストに付いた例になります。これは次のHomeに対するDistantが、手前のHomeと近接しているときに同じポストにまとめて設置されます。

右側はブラケットに複数のHomeが並んでいる例になります。これはDirectional Signalといって、分岐の手前に設置されるもので、分岐のどちら側に進行するのかを示すものです。中央のHomeはMainへの進行を示し、左の少し低い位置にあるHomeが右のBranchへの進行を示します。

これはほんの序の口で、信号機の世界は沼... いや奥深いわけですが、それはまたの機会にするとして。以下の2種類の信号機をレイアウトに設置してみることにしました。

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いまのレイアウトの配線から選んだ... というよりは「なんとなくかっこいいから」という理由ですが(何のために調べたんだ...)、これを設置する場所については多少調べたことが役に立つはずです。

では次回から製作に入っていきます。

(つづく)

デイジー・マグノリアを巡って

劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、ヴァイオレットたちが生きたその後の時代から、過去を振り返る形でヴァイオレットの物語が語られる、という構造になっている。シリーズのラストを飾る作品として、「ギルベルトとの再会」という主題に直接フォーカスするのではなく、「ヴァイオレットという女性の生涯」というフレームを持ってきたのは、良い挑戦だったと思う。
この語り部として出てくるのが、あの伝説の10話のヒロイン、アン・マグノリアの孫デイジーマグノリアである。冒頭、マグノリア家のお屋敷から物語は幕を開けるのだが、その見覚えのある外観に、ファンならはっとしただろう。場面はアンが亡くなってお葬式が執り行われた後から始まる。デイジーはそのお屋敷の暖炉跡の上に置いてあった箱から、曽祖母にあたるクラーク・マグノリアが祖母アンに向けて誕生日ごとに書いた手紙を見つけ、代筆の主であるヴァイオレットの足跡を辿る、という導入だ。このくだりはYouTubeで公開されているので何度でも見ることができるのだが、自分にはなぜデイジーがヴァイオレットの足跡を辿ろうとしたのか、どうにもわからないのである。


まずこのデイジーと祖母アンがどのような関係であったかが、はっきりしない。デイジーと多忙な母の関係がうまく行っていないことは示されるのだが、デイジーが祖母アンとどのような関係であったかは、はっきりと示されない。デイジーは祖母アンのことを心配していたようだが、途中に挿入される祖母アン、デイジーの母、デイジーの三人が写った写真では、祖母とデイジーの母は仲良く収まる一方、デイジーは少し距離を置いてそっぽを向いているのである。そもそもこんな写真を飾るのかという気もするが、母との仲違いを強調したかったのだろうか。しかしここでも、祖母アンとデイジーの関係は捨て置かれたままである。両親が仕事に戻ったあと、テラスで母との仲違いの後悔を祖母アンに対して心情吐露する場面がある。ここで初めてアンが母より祖母に心を開けていたかもしれないことが示唆される。(余談だが、セリフでの心情吐露はあまりにも直接的で説明的になってしまっている。これより前のシーンでドールについての説明を思いっきりセリフでしてしまうのも非常に興醒めだった... そんなものはなくてもこの映画は成立すると思うのだが... 「リズと青い鳥」で見せた美しさはどこへ行ってしまったのだろう)

ただ、もしデイジーが祖母アンと親密な関係を築いていたのであれば、手紙のことを知らないのはどうしてだろうか(母は知っている)。もし母との仲違いのことを祖母アンに相談していたのであれば、おそらくデイジーにも手紙のことを話していたように思う。
この関係性がはっきりしない状況は、その後手紙を読んだときの反応にも現れる。デイジーは祖母アンではなく、なぜか曽祖母クラークに共感して涙を流すのだ。正直これは唐突過ぎて面食らってしまった。その涙を補完するように10話の回想シーンが挿入されるが、あの手紙が感動的なのは手紙が書かれた状況からなのであって、手紙の内容そのものは普遍的な母から子への愛情を示したもの以上でも以下でもない。デイジーはいま母親との関係がうまくいっていないのだから、祖母アンに対してうらやましいという気持ち起きても、曽祖母クラークへの感情移入して泣くというのはどうにもわからないのである。
やがてデイジーは箱に入っていた新聞の切り抜きを見つけ、ようやくヴァイオレットという人物にたどり着く。この劇場版の物語の起点としては最も重要な場面だ。でもここで「ヴァイオレットという女性の生涯」に影を差す衝撃の事実が語られるのである。「18歳のときにそこを辞めて以降、彼女の記事を見ることはない」。つまりドールとしては彼女は大成することはなかったという事実だ。
もちろんこの映画を観に来た多くのファンは、このセリフの意味をギルベルトとの再会を果たしたことだと了解し、悪いことと捉えないのかもしれない。でもわざわざ語り部を引っ張り出してきたのは「ヴァイオレットという女性の生涯」を語るためではなかったのか。「ドール」という職業を通じて、武器であった彼女は「あい」を知り、自分自身を確立できたのではなかったのか。それだけではない。外伝では他者をも導く存在となったのではなかったのか。アニメシリーズではアイリスが結婚してからも仕事を続けるといい、それをエリカが新しい時代ね、と肯定的に語っていたのではなかったのか。何よりもヴァイオレットは「ドール」を愛していたのではなかったのか。もしギルベルトとの再会がドールとしての大きな飛躍を阻んだのであれば、ギルベルトと再会しないほうがマシだったのでは。そしてそんな彼女のことをデイジーはどうして追いかけようとしたのか。何も語られぬまま、この物語は始まるのである。
率直に言って、この冒頭の10分は物語に導かれるどころか、混乱を生み出しただけだった。少なくとも僕にとっては。

物語にifはないけれど

ヴァイオレットとギルベルトが再会を果たしたあと、物語は冒頭に連なるデイジーの話へと戻ってくる。そしてデイジーが、普段伝えられなかった思いを手紙を通じて両親に伝える、というところで話は終わる。だとすれば、デイジーがヴァイオレットに辿り着くきっかけも手紙であったらよかったのかもしれない。
新聞の切り抜きを残していたように、アンはクラークの向こうに手紙を代筆したヴァイオレットの存在を認識していた。だとすると、アンとヴァイオレットの間で何らかの手紙のやりとりがあったとしても不思議はない。例えばCH郵便社を去る前に、ヴァイオレットからアンに対して何らかの励ましの言葉がの手紙として送られていたのなら。そして、その手紙をデイジーが読み、両親に対して素直に自分の気持ちを伝えようと思ったきっかけになったのなら。アン、ヴァイオレットそしてデイジーという三者が、時を超えて大きな円環の中に収まることができたのではないだろうか。そんな妄想を僕は止めることができない。