今年最初のプロジェクトは、IORI工房さんの「ハ1005」の製作です。
明治鉄との出会い
今回製作する鉄道院「ハ1005」は、明治後期に製作された木造2軸三等客車です。英国鉄道模型をやってきたのに、なぜ日本のしかも明治時代の客車なのか。実は、とある漫画がきっかけでした。
どんなのを書いてるかというとこんなのです。
— IORI (@3rd_coach_16) 2020年9月10日
明治の汽車が駅を出発する話(1/3) pic.twitter.com/UTa796EU7d
明治時代の客車や機関車を擬人化した漫画なのですが、物語の設定や出てくる車両、建物の造形などが史実に基づいて忠実に取り入れられており、しかもキャラがかわいい!(ここ重要)早速BOOTHで既刊全巻を購入して、一気にファンになりました。
「明治の鉄道面白いなぁ」と興味が出てきたところ、作者のIORIさんが鉄道模型メーカー「IORI工房」をやってらっしゃることがわかり(笑)、これは是非ともうちのレイアウトで走らせてみたい、と思ったのでした。うちの車庫には英国蒸機の皆さんがいろいろおられるので、そこに日本のかわいい小さな客車がやってきて、英国鉄道風景の中をトコトコ走るというのは、なんとも模型ならではの楽しさで、妄想が膨らむところです。2021年にHattonsから2/3軸客車が続々とリリースされることもあり、それと合わせて楽しむのも面白そうです。
IORI工房さんの製品は、ペーパーキットでNスケールのものが中心。うちで走らすにはOOとは言わないまでも16番があれば...と思っていたら、その明治の木造2軸客車がリニューアル品として出ることに。
諸々準備が出来まして…販売開始です!
— IORI (@3rd_coach_16) 2020年11月23日
「16番ゲージ「ハ1005」ペーパーキット」https://t.co/rb3roaB9Lz。
割と前から工房ラインナップにあった明治鉄の必需品(脳内調べによる)がリニューアル。足回りを中心にいろいろ「良く」なりました。多分。
朝ラッシュにはまず他扉車!これ。4800円。 pic.twitter.com/axTLoJk2HC
12月某日、満を持してIORI工房さんを訪問。
初めてお邪魔しました。いろいろお話聞けてよかったです。 pic.twitter.com/yEG86ReZwI
— じょばんに (@Giovanni_Ihatov) 2020年12月5日
持っていったGreat Western Dean Goods 0-6-0 ともパチリ。
持ってった英国型OO蒸機と合わさせてもらいました。確かに床面が若干低いのですが、見た目そこまで気にならないので、遊ぶ分にはこのままでも問題なさそう。 pic.twitter.com/0H5GlHShKX
— じょばんに (@Giovanni_Ihatov) 2020年12月5日
こうして「ハ1005」がやってきたのです!
というわけで、IORI工房さん @iok_official の1/80 16.5mm ハ1005を2両お持ち帰りしました。製作過程は随時載せていきたいと思います(年明けからかな?) pic.twitter.com/cqdKPTU9co
— じょばんに (@Giovanni_Ihatov) 2020年12月5日
工具・接着剤の準備
ストラクチャーのペーパーキット(カードキット)の製作経験はあるものの、車両のペーパーキットは初めて。そもそもキットから車両を作ること自体が初めてです。
特に製作工程において重要となる接着剤については、組立説明書に4種類(プラ接着剤、木工用ボンド、瞬間接着剤、クリアラッカー)を使い分けるよう指示があったので、以下のものを用意しました。
最後のクリアラッカーはそもそも接着剤ではないのですが、部品の張り合わせに使用するとのことで、無難なものを選びました。
工具については、ストラクチャーのペーパーキット製作に使うもので十分でした(デザインナイフ、ピンセットなど)。
別売り部品について
キットに含まれない別売り部品は
- カプラー
- 車輪
- 真鍮線(Φ0.3mm)
です。カプラー、車輪は、IORI工房さんで売っていたKDカプラーとエンドウの車輪、真鍮線はヨドバシで売っているものを使いました。
キットの中身
箱を開けると、キットの中には以下のものが入っています。
ペーパーキット部品は厚さが様々で、彫刻のようにきれいにレーザーカットされています。特に側面の部品はこの薄さ、細さ。壊さずに最後までいけるのだろうかと、早速不安にかられました(^^;。
ただ、このキットの中身で最大の特徴が組立説明書です。B5サイズ5枚、模型原寸図に始まり、14ページに渡って製作手順が図解とともに非常に丁寧に説明されています。
プラキットと異なり、厚みが必要な部品についてはペーパーを何枚か張り合わせていく必要があるので、組立手順が重要なのはもちろんなのですが、使用する接着剤の種類から組み立ての注意ポイントまで解説されており、まさに至れり尽くせり。先ほど生じた不安も少しは和らぐというものです。
車体
びびっていてもしょうがないので、いざ製作開始。最初は側板の組み立てです。
クリアラッカーを使って3枚の部品を順に張り合わせます。これは動画にしないとわからないと思うので、動画にしてみました。
【ブログ投稿用】ハ1005の側板貼り合わせ手順動画です。 pic.twitter.com/LGxG1WUGZ4
— じょばんに (@Giovanni_Ihatov) 2021年1月11日
クリアラッカーをたっぷり目に吹くのがコツで、乾くまでの間は上下左右に自由に動かすことができるので、表裏をそれぞれ見ながら位置合わせをしていきます。この部品の特徴である窓枠がぴったりとセンターに合うようにすれば、位置合わせは大丈夫です。3枚張り合わせたときの凹凸の精巧さには、思わずため息が出ます。
そして扉留金具の取り付け。部品はチップLEDよりも小さく、なかなか一筋縄ではいきません。
自分が編み出した方法は以下の通りです。
- 両手にピンセットを用意する
- 切り取った部品を片方のピンセットで取り、瞬着の海に浸ける
- 所定の位置に置き、もう一方のピンセットで部品を押さえて、部品がピンセットを離れて側板に残るようにする
- このとき位置がずれるので、両方のピンセットを駆使してうまく目的の場所に戻す
- 目的の場所に到達したら、触らず乾くまでそのまま放置
瞬着はびちゃびちゃの状態だとくっつかないことを利用して、その間になんとか位置を修正するというものです。
次に妻板。こちらは部品2枚。上に重ねる部品が下よりわずかに大きいので、裏面から見て上下左右はみ出しが均等になるように調整します。
一方の妻面にはステップを取り付けます。瞬間接着剤をステップの先に少しつけて差し込みます。
最後に、真鍮線で作る金具を取り付けます。金具は付属の治具を使って作成。この治具の出来がまたすばらしい。一端を折り曲げて治具の穴に差し込み、ペンチで真鍮線と治具を挟み込んだうえで、治具の端を使ってもう一端を折り曲げます。側板の手すりとドアノブ、妻板の手すりの3種類を作ります。
金具を埋め込んだら、そのままの状態で瞬着で固定してから、内側に飛び出した部分をカットします。
妻面の手すりはRをつけなくてはいけないのですが、試した結果、タミヤクラフトボンド(Φ20mm)に巻きつけて曲げると具合がよかったです。
完成したら、4面を組み合わせて箱にします。部品の精度が高いので、何もせずとも板と板の角がピタッと合います。上下に補強をつけて車体は完成です。
屋根
次に屋根です。屋根は2重構造になっています。
下屋根は2枚の張り合わせ。まずは部品を妻板のRに沿って曲げる必要があります。今回はPOSCAペン(Φ25mm)を使って曲げました。Rを付けたら、タミヤセメントを塗って張り合わせます。
乾燥したら下屋根を車体に固定します。当然屋根が車体の端より若干はみ出す感じになるので、全方向均等にはみ出すように位置決めして、タミヤセメントで接着します。固定できたら、上屋根を載せるための髪飾り...もとい、台金具を載せていきます。井形に組んだところで、瞬着で固定。
続いて上屋根。同様にPOSCAペンを使って曲げてから、タミヤセメントで2枚の部品を貼り合わせます。屋根の上に載せる小さな部品は瞬着で固定。輪っか状の部品は、これまた小さく恐ろしく細い。これは本当にペーパーキットなんだろうか、と思う瞬間です。
水切りは、真鍮線を切断して瞬着で貼り付けます。屋根のRに沿って曲がっている部分は、同じくPOSCAペンを使って曲げくせを付けてから貼り付けました。
上屋根は車体とは別塗装になるので、固定は塗装後に行います。いよいよそれらしい形が現れてきました。
床板
最後に床板に進みます。見える部分は少ないですが、走行性に影響する最もデリケートな部分です。
まずは軸受け。5枚部品を重ね、最後に金属製の軸受けパーツを埋め込みます。
軸受けについてIORIさんに質問したとき、以下のアドバイスをいただきました。
軸受け周りは構造上黄色の線の部分に一番力がかかり、ややもすると折れ癖というか曲がり癖が付いてしまいます。これは赤線部にがっちり接着剤を流すことで防げますが、さらに頑丈にしたい場合は青線部にφ0.5くらいの真鍮線をU字型に曲げて貼り付けて補強するといいかもしれないです。
そこでオススメにしたがって、先ほどのパーツをΦ0.5mmの真鍮線を使って補強をしました。
続いて、フレームも5枚重ねで作成。実車同様に床板に強度を持たせる重要な部品です。
床板とステップも組み立てます。
両端にはバッファビームを付けます。バッファビームにあるコンマ何ミリの窪みに、ステップの出っ張りがピタリとはまります。
ここに先ほど作成した軸受け、フレームを順に取り付けます。
3Dプリンタパーツのバッファ、上屋根の油灯カバーを取り付けて、作業完了です。
ここまで来たなら、塗装前に一度仮組してみたくなるもの。少し気が早いですが、車輪を入れてみました。
一番心配していたのが車輪の嵌り具合と転がりでしたが、特に問題はなさそうです。ただ軸受けが少し外側に押し出され気味になるので、金属製の軸受けパーツの押し込みが足りないのかもしれません。あとで調整が必要のようです。
車体+下屋根、そして上屋根を載せます。
この状態でレールの上で試走。
ちょっと気が早いですが、車輪を付けてみました。塗装前の工程はこれで完了です。 pic.twitter.com/ygyNytWfD4
— じょばんに (@Giovanni_Ihatov) 2021年1月10日
上出来?思ったよりもスルスルと滑ってくれました(^^)。
雑感
初めての車両ペーパーキット組みでしたが、組立説明書の的確な指示と、IORIさんにいただいたアドバイスのおかげで、大きな問題なく組み上げることができました。
最初はパーツの細かさにびびりまくりでしたが、組立による誤差が出にくいように部品に切り欠きや出っ張りが配置され、各パーツの精度の高さとも相まって、カチッと位置合わせができるように作られています。誰にでもきちんと組めるキットとして、とてもよく考えらていると思いました。さりとてディテールに妥協しているわけでもなく、この車両の特徴を押さえるパーツもしっかり揃えらえていて、組みやすい上にディテールもあるという満足度の高いキットではないかと思います。
次回は塗装編(予定)。エアブラシ初挑戦の結果やいかに。
(つづく)