傾国

正直こんなタイトルで今年最初の記事を書くことになるなんて、と思うのだけど、どうしてもいまの気分をまとめておかなければ後々の自分に対して失礼に当たると思い、書き留めることにした。

小野不由美の「十二国記」シリーズをご存じだろうか。王様と麒麟が治める十二の国がある架空世界を舞台にした小説だが、物語中しばしば「国が傾く」という表現が出てくる。歴史小説、あるいは歴史書の中にもそのような表現があると思うが、現実に自分が住む国でそれを目の当たりにすることになった。もう断言していい。書籍に書かれた「国が傾く」とはどういう状態のことを指すのか、その一端を図らずも実感として理解した。この状況で「十二国記」を読むと、また違った感想を持てるのではないかと思う。

本日二度目の緊急事態宣言が発出された。内容としては飲食店の時短営業や夜間の外出自粛などとなっており、期間は1/8~2/7、目標はステージ3相当とのこと。ステージ3が目標でいいのかとも思うが、その後段階的に制限を緩和してステージ2を目指すらしい。つまりこの内容と期間で目標の達成は可能である、という判断がされたと理解するのが普通だろう。

しかしながら、先日1/5のBuzzfeedの記事として公表された8割おじさんの西浦さんが厚労省に提出したシミュレーション結果を見る限り、どうもそれは無理なのではと言わざるを得ない。

当然対策の強度によって増減の傾向に差が出るのだが、今回発出された緊急事態宣言の内容では、せいぜい横ばいにさせる程度なのではないかと思う。もちろんこの宣言による人々の行動変容については正確な予測が難しい。ひょっとしたらもう少しマシな結果が得られるかもしれない。だが、どう考えても今回の内容は、昨年4月の初めての緊急事態宣言よりも緩やかな印象で、状況としては逆にはるかに厳しいのだから、1か月かそこらで緊急事態宣言が解除できるような状況になっているとは考えにくい。つまりこの目論見は十中八九失敗する。また、この記事を読んでいようがいまいが、今回の緊急事態宣言でコロナ禍の状況が劇的に改善すると考えているひとはほとんどいないのではないかと思う。結果として、人々の行動変容は起こらずにコロナ禍は長引き、この国は不確実な未来しか持てない状況に長い間留め置かれることになる。

それは結果として、多くのひとに絶望を生み出すことになるだろう。僕はそれが心底恐ろしい。社会は多くのひとの「生きていて意味がある世界にしたい」という気持ちの集合で成り立っている。もしそれがなくなったら、社会はあっさり壊れると思う。例えば明日地球最後の日と言われたら何が起きるのかを想像してみてほしい。きっとそのような状況を傾国と呼ぶのだろう。

世界に目を向ければ、コロナ禍の中でも感染を克服し、確かな未来を感じられる国もある。同じ人間がやっていることなので不可能ではないはず。失敗に向き合い、どうにかしてそこにたどり着きたいと願わずにはいられない。

【追記】この気持ちをこの先の選挙で絶対に忘れないでおく。いまの政権与党およびその候補に投じることは金輪際ないだろう。