OO9レイアウト製作記・第12回「MODELU x CITADEL」

前回の予告通り、今回はレイアウトに置くフィギュアについてのお話です。

フィギュアは列車のように動いたりはしませんが、レイアウトに動きを与え、物語まで空想できるような、命を吹き込むための欠かせない要素と思っています。これまでOOのメインレイアウトにも、Bachmann、PECO、Noch、Preiserあたりのそれっぽい塗装済みフィギュアを見繕って配置していました。

MODELU

OO9レイアウトはWalesのスレート運搬鉄道をテーマにしているので、同じくこの舞台に合うフィギュアを置いて命を吹き込んでみようと思います。

イギリスのMODELUは、そんな英国鉄道風景にふさわしいファインスケールのフィギュアを製造販売するメーカーです。すべてのフィギュアは3Dプリント製で、躍動感溢れるポージングと服のシワまで再現された精巧なモデリング、幅広い年代や情景をカバーする圧倒的なカタログは実に魅力的です。

メーカーの模型に合わせたLoco Specific Crewもあり、OO9レイアウトを走るKATO/PECOのSmall EnglandBrake Van、BachmannのMainline Hunslet向けのフィギュアもラインナップされています。基本的に受注生産なので、品切れがないという点も助かります。しかも£75以上の注文でワールドワイドで送料無料!注文すると1週間ほどで発送され、Royal MailのInternational Trackedでやってきました。

ついでにGUARD VAN用LAMPも購入(左下2つ)

CITADEL

さてMODELUのフィギュアがやってきたのはいいのですが、当然未塗装。この小さいフィギュアにどう塗装するか。筆塗りでの細かいパーツの塗り分けは、以前Signal Boxの内装を作ったときに経験していて、このときはタミヤのアクリル塗料を使いました。が、正直大変苦労した記憶があります。具体的には以下のような感じです。

  • 塗料を薄めないと、塗りムラが出来て厚塗りになる。
  • 塗料を薄めると伸びは良くなるが、塗料が流れやすくなり、細かい部分だけを塗るのが難しい。さらに乾燥にも時間がかかる。
  • その中間を狙って適度な濃度にしても、塗料皿に取った塗料はどんどん乾燥するので、その都度濃度調整する必要がある。
  • 筆も乾燥しがちで塗料が固まるので、その都度シンナーで洗う必要がある。
  • 結果として、塗料やシンナーを想定以上に消費(浪費)してしまう。
  • 重ね塗りもできなくはないが、同じく濃度調整を適切にしないと下の塗料が溶ける。

もちろん自分の技量のなさというところもあるのですが。ざっくり塗り分けならともかく、フィギュアのように複雑な形状の塗り分けを求められるとなると、精巧に出来たMODELUのフィギュアを台無しにしてしまうミライしか想像できません(^^;。

そこでフィギュアの筆塗りと言えば... かねてより試してみたかったCITADEL Colourを使ってみることにしました。Webで情報を集める限り、まさに上記に挙げたような問題がなく、非常に扱いよく見えます。ただそもそもWarhammerのフィギュアを塗るために開発された塗料で、BASE、LAYERなどの塗料の種類や、色に独特の名前づけがされているがゆえに、とっつきにくい印象があるのも事実。しかもお値段もそれなりにする(小瓶1色600円前後)ので、果たして鉄道模型のフィギュアに使えるようなもの(HO/OOスケールですら、本来想定するWarhammerのフィギュアよりだいぶ小さい)なのかしら?と半信半疑ながらも、まずはやってみようの精神でヨドバシでポチからスタートです!

Small Englandの運転士さんおふたりが最初のターゲット。

筆塗りをするにあたって、この小さいフィギュアを持ちやすく固定します。MODELUのフィギュアは3Dプリントなので、まず自立できるサポート材を残す形で切り出し、中性洗剤で洗ったあとに、ペットボトルのキャップの上に両面テープで固定してみました。塗装用持ち手のクリップでキャップを挟めば、ちょうど良い感じで作業できそうです。

塗装用の筆は、手持ちのタミヤのMODELING BRUSH PRO IIを使用。パレットは、ステンレストレイに水に浸したキッチンペーパーを敷き、その上にクッキングシートを載せて使いました。

まずはベース。フィギュアだとホワイトをベースにすること多いようですが、ホワイトのスプレーが売ってなかったので、ベーシックなCHAOS BLACKで。真っ黒人間に早変わりです。

やることはサフを吹くのとさほど変わらないのですが、乾燥が早〜い。サフなんかは最低でも30分は放置するところですが、CITADELの場合、5分も経てばもう大丈夫なんじゃ?と思えるぐらいのスピード感。

次にホワイトベースの代わりということで、CORAX WHITEを上半身に塗ってみます。2度塗りぐらいでほぼ下地は完全に隠蔽されました。こちらも乾燥が早い。2つのフィギュアで作業する場合、1つ目をやって、2つ目をやっている間に1つ目が乾いている感じで、効率よく途切れなく作業を続けることができます。一方でパレットに置いた塗料はというと、作業に支障がない程度に乾燥が遅く... これはいったいどういうマジックなのか!?

肌色。これが今回一番悩みました。Web上の記事をいろいろ調べた(参考(1)参考(2))のですが、どれもしっくりこず、「別に肌の陰影とか見えないので、単純にホワイトベースにKISLEV FLESHを塗ってみればいいんじゃね?」と思ってやったのが下の写真。個人的には全然アリでした。暗くなりすぎず、薄くも濃くなりすぎずというところで、レイアウトに置くのには十分マッチしそうです。

自分としては肌色=CORAX WHITEのベースにKISLEV FLESHの組み合わせでOK

 

あとは順番に帽子、髪の毛&ヒゲ、シャツ、ジャケット、ズボン、靴と塗っていきます。乾燥が早いので、塗り絵をするような感覚で気持ち良く作業できます。

細かい修正をするときには都度色を変える必要があるわけですが、水彩絵の具を使うように筆を水でしゃばしゃば洗って、ペーパータオルで水気を取るだけでOK。シンナーの匂いに悩まされることもなく、これからの夏の季節、エアコンを付けた部屋でも作業OKなのは助かりますね(^^)。

はみ出したり、手元を滑らせてあらぬところに色が付いちゃったという場合でも、乾燥したあとで重ね塗りをすれば、十分リカバーできます。

重ね塗りでリカバリーも簡単

そんな感じで、塗り始めから2時間ほどで下記の状態まで来ました。参考に服装で使用した色を入れておきます。

残っていたサポート材を切り離し、Small Englandのキャブに据え付けます。ちょうどキャブから身を乗り出すようなポージングなので、キャブの床面ではなく手すり付近に固定してみました。ぴったりサイズなのがまた気持ちいいです。

早速レイアウトで走らせてみます。

人を乗せると急に世界が動き出す感じがしますね!

続いてスレート貨車に乗る人たちと、緩急車のデッキのひとも。

こちらも参考までに、服装で使用した色を載せておきます。

MODELUのフィギュアの出来がよいのと、CITADELでの塗りの軽快さがあいまって、非常に楽しく作業できました。細かい塗装表現はまだまだできていないですが、MODELUのフィギュアをレイアウトに使う道筋がついたのは大きな収穫。フィギュアはまだあるので、塗り進めていこうと思います。

トラムウェイ8620形蒸機にSmile Sound Decoderを載せる

ラムウェイから8620形蒸機が出たのは昨年9月のこと。

しばらくはサウンドなしで走らせていたわけですが、Smile Sound Decoderが蒸機サウンドに対応したのに合わせて、8620形のオープンサウンドデータとともに載せてみました。

デコーダーの搭載

メーカーからは公式にアナウンスされていませんが、トラムウェイの8620形蒸機はDCCに対応しています。テンダー内にNEM652(8pin)のソケットが用意されていて、Head Lightが前照灯に、AUX1が運転室の照明に結線されています。

Smile Sound DecoderのインタフェースはMTC21もしくはNext18になるので、今回はMTC21 - NEM652の変換ケーブルを使って載せることにしました。

まずは変換ケーブルのMTC21コネクタ基板のパッドに、スピーカー(ESU 15x11mm Sugar Cube Speaker)とキャパシタ(25V, 220μF)をはんだ付けします。

動作確認のあと、スピーカーやMTC基板のパッドにアセテートテープを貼って絶縁しておきます。テンダー内は十分なスペースがあるので、収納には困りませんでした。

こうして出来たMTC21コネクタにデコーダーを挿して、石炭モールドの蓋をすれば搭載完了です。

サウンドデータの書き込み

Smile Sound Decoderへのサウンドデータの書き込みには

が必要です。Open Sound DataのページからSmile Sound Decoder向けの「鉄道省/JNR 8620 蒸気機関車」のデータをダウンロードし、DSSPで開きます。

サウンドファイルを開いたところ

配布されているデータには、音源データとともに既に必要なサウンドフローが含まれているため、基本的には何もせずそのまま書き込むだけで使うことができます。

USBライターにデコーダーを挿してPCに接続したら、DSSP上の書き込みボタンを押すと書き込みが始まります。待つことしばし、終了の表示が出たら、USBライターをPCから取り外してからデコーダーを取り外します。

サウンドフローを書いてみる

自分はLoksoundのサウンドデータ作成ツールであるLokProgrammerを使ったことがなく、サウンドデータ作成ツールを使うのはこれが初めて。自由にカスタマイズできるところがオープンサウンドデータのいいところですので、少しサウンドフローをいじってみることにしました。

ラムウェイの8620形蒸機は前照灯のほかに、運転室にも照明が点くようになっています。運転室の照明はAUX1に接続されているので、まずは手始めにファンクションキーでこの照明を操作できるようなフローを追加してみました。

F18で運転室の照明のオンオフをする

スクリプトベースの記述なので、慣れているひとにはやさしいのではないかと思います。

テストフロー

DSSPでサウンドフローを記述することはできますが、テストは実際にデコーダーに書き込んで動作させる必要があります。Smile Sound Decoderは車両に載せたままの書き込みはできないので、一旦取り外してUSBライターで書き込みます。

  1. DSSPでフローを更新
  2. USBライターでデコーダーに書き込み
  3. ESUデコーダーテスターでテスト
  4. 車両でテスト

2→3→4はデコーダーを載せ替えながら行うことになります。載せ替えの手間はともかく、MTC21のコネクタは、頻繁に抜き差しすることを想定して設計されてるとは言い難いので、やや難儀なところです。Next18コネクタはパチ留めなっているので、付けるのも外すのも大した力は要らないのですが、MTC21コネクタはモノによっては非常に外しづらいものもあります。USBライターからの取り外しは、治具が売られているのでそれを使うのもありでしょう。

LED表示で状態遷移を可視化

サウンドフローをテストしていると、実際にいまどこが実行されているのか知りたくなることがあります。プログラムを組む場合は、例えばデバッグプリントを仕掛けることで、実行中のプログラムの状態を知ることができますが、デコーダーから出力できるものといえば、音かファンクション出力ぐらいです。

ESUデコーダーテスターにはAUX1 - AUX6の出力に対応したLEDがあり、今回AUX1しか使わないのをいいことに、AUX2-AUX6を使ってサウンドフローの状態遷移を可視化してみました。

蒸機のサウンドフローは、ドラフト音を速度に合わせて切り替えるように組まれているのですが、その音の切り替わりや減速時の動作などをみるのにちょうどよいです。

というわけで

最終的にはカスタマイズした部分は以下の通り。

  • 蒸気・時間調整 走行開始時=1000 最高速度時=100 に変更
  • 減速時また減速後の定速時に spd が 80 以下でドラフト音をカットする
    • 再加速時は即時ドラフト音を再開
  • 後進時にも前照灯を点灯させる

減速時でもそのままドラフト音が鳴り続けるのですが、音量を小さくするとか何かもう少しうまく差し替えられるといいかもしれません。

あとバグと思われる部分も修正しました。

  • F1でサウンド(HISS音)が停止しないことがある問題の修正
  • F11でカーブフランジ音をオフにしても、停止状態になるまで反映されない問題の修正

最後に、いつものように動画をどうぞ。

HM7000でサウンドボックスを作る

HM7000とは

HM7000とは、Hornbyが従来のDCC Sound DecoderであるTTS Sound Decoderシリーズの後継としてリリースしたBluetooth and DCC Sound Decoderです。

ざっくり比較すると以下の通りです。

  TTS Sound Decoder HM7000
インタフェース NEM652(8pin) NEM652(8pin), MTC21(21pin), Next18
電源方式 DC(*1), DCC DC(*2), DCC
制御方式 DC(*1), DCC Bluetooth(要専用アプリ), DCC
サウンド 書き込み済み
(変更不可)
書き換え可能
Hornbyが提供するサウンドプロファイルを専用アプリ経由で書き込み

(*1) 走行のみで、サウンド非対応。 (*2) 制御はBluetoothで行う。

TTSがいわゆる普通のDCCサウンドデコーダーであるのに対して、HM7000はDCCサウンドデコーダーの機能に加えて、専用アプリを使ったBluetoothによる制御に対応しているのが特徴です。

ESUのLoksoundやZimoもDCによる簡易的なサウンドには対応していますが、サウンドを楽しむためにはDCCが必須でした。HM7000は、無料のスマートフォン専用アプリを使うことで、DCでもDCCと同じレベルの走行、サウンドのフルコントロールを可能としています(下図左)。つまりDCユーザーでも、DCCコントローラーなどの追加投資をせずに、既存のレイアウトで同じレベルの体験ができるわけです。

またHM7000はDCCサウンドデコーダーでもあるので、将来DCCに移行したときに、そのままDCCサウンド対応車両として運用することもできます(下図右)。

Bluetoothによる制御はHornby独自仕様のものなので、専用アプリを使う必要があります。したがって、必ずしも完璧なソリューションというわけではないかもしれませんが、メーカーとしてDC, DCC混在の利用環境に対して解を示したという部分において、評価されるべきプロダクトだと思っています。

さらに価格が£60程度と、ESUやZimoのサウンドデコーダーの半額近いのも魅力的です。対応サウンドがHornbyが提供されるものに限定される(英国機のみ)ので、直接競合するわけではないですが、価格帯を考えるとDCCユーザーにもアピールするものとなっています。これまでのTTSサウンドデコーダーと同じく「手軽にサウンドを楽しむ」というコンセプトにフォーカスしていて、好感がもてます。

とはいうものの...

そんなわけで、英鉄模型界隈では発表直後から注目を集めていたわけですが、実際に製品がリリースされると、そんな薔薇色の世界ばかりが広がっていることがないことがわかってきました。

対応するサウンドプロファイルが思ったより少ないとか、Android版のアプリのリリースが遅れている(現時点でもまだcoming soon...)とか、そういう問題もあるのですが、楽観的に考えれば時間が解決してくれるでしょう。ただ時間では解決されない(と思われる)最大の問題が、デコーダーのサイズです。特にNext18インタフェースの場合は小型車両で多く採用されていて、もともと車両側が想定するデコーダーのスペースに余裕はない場合がほとんどで、HM7000のような大きなサイズのデコーダーは入りません。

1つ目の動画でも触れられているように、DCCデコーダーの設計の問題というよりも基板上にBluetoothのアンテナを実装するためにスペースが取られているためなので、根本的にHM7000が抱える問題です。もしサイズをとってアンテナを犠牲にすると、当然Bluetoothの接続性の問題が出てくることが予想されるので、おいそれと解決する話ではないでしょう。

HornbyはNext18についてTT:120向けの利用用途を想定しているようで、当然HM7000に合わせた設計がなされているようです。ただそれ以外他メーカーのNext18インタフェースを持った車両に搭載するのは、どうやら望み薄のようです。

さらに自分の場合、DCレイアウトとして運用しているOO9のサウンド対応ソリューションとして使うことを考えていたので、サイズ問題は致命的でした。

ならば、車両に積まなくてもいいんじゃない?

せっかく面白いプロダクトなので何か使い道はないかしら?と考えた結果、サイズがデカくて車両に積めないなら、積まないで使えばいいんじゃない?ということで、サウンドボックスを作ることを考えてみました(下図水色部分)。

HM7000が電源としてDCに対応していることを利用して、DCアダプタからの入力をHM7000の線路入力(赤、黒)につなぎます。そしてモーター出力(オレンジ、グレイ)を取り出して線路に流し車両を動かします。サウンドサウンドボックス設置のスピーカーから出力し、Hornbyの専用スマートフォンのアプリで走行、サウンド操作を行う、という形です。

50x70mmの基板に部品を載せて配線し、天地をスモークのアクリル板で挟んで取り扱いやすいようにしてみました。

(左)HM7000を載せたところ (右)アクリル板を取り付けたところ

いざ、テスト!

入れたのは4Fのサウンド。Chuff間隔の調整パラメータがないので、Max Voltageを調整して多少それっぽくというところですが、合わせるのはなかなか難しそうです。もちろんDCCサウンドをちゃんと積んだ場合と比べるもなく、オマケの域を出ませんが、

  • DCCコントローラが不要(DCパワーパックも不要)
  • DCレイアウト&車両でそのままでサウンドが出る
  • 操作はスマートフォンで完結
  • 値段は1万円以下

というところで、お手軽にできるガジェットとしては十分ありかなと。サウンドだけでなく、サウンドなしでも通常のパワーパックよりスローが安定して出せるので、普段使いのコントローラとしても使うのも良さそうです。

HM7000が見せるミライ

というわけで、うちではHM7000はガジェットの部品となってしまったわけですが、個人的にはHM7000が目指す方向はいろいろ可能性があるのでは、と思っています。特にサウンドプロファイルをネット経由でダウンロード&インストール仕組みは、サウンド製作の仕組みを一般に公開していないが故に、課金モデルを含めたプラットフォームを構築することができるのではと考えています。

コンテンツとしてのサウンドの流通は、ESUやオープンサウンドデータで無料のものとしては実現しているものの、課金ありのプラットフォームとして整備されたものはありません。もしHornbyがここに踏み込んで、自社制作だけではなく、数多のサウンド制作者からコンテンツ供給を受けられるようなプラットフォームを作れば、DCCサウンドデコーダーの雄であるESUやZIMOの牙城に挑むことができるんじゃーとか妄想したりします。

あとBluetooth経由だとCVをいじるのもめちゃくちゃ早くて楽ですね... Bluetoothが本命かわからないですが、DCCの規格的にこのあたりはそろそろ革新があってもいいかもと思いました。

OO9レイアウト製作記・第11回「線路脇の装飾」

レイアウト製作もラストスパート。まとめてアップデートします。

ワイヤー柵

ワイヤー柵は、Scale Model Sceneryのキットを使用。レーザーカットされた木製の支柱が42本入っています。ワイヤーは、別売りの0.45mmの金属線のものを使いました。

まずはざっと支柱の位置を決めます。説明書には「24mm間隔で6ftになる」と書いてありましたので、それを参考にしつつカーブに沿って曲線状に配置。ピンバイスで穴を開けて、目印として爪楊枝を立てておきます(草むらに埋もれて穴がわからなくなるので)。

配置と本数が決まったところで、支柱にワイヤーを通していきます。レーザカットで程よく焦げた素材の雰囲気が良かったので、無塗装でそのまま使うことにしました。

目印の爪楊枝をはずしながら、木工用ボンドを穴に埋め、端から順番に支柱を立てます。こういう作業は、実際に線路沿いに柵を立ててるようで楽しいですね。

スレート柵

英国のナローゲージのレイアウトには、ウェールズ地方でよく見られるスレート板で出来た柵が出てくるのですが、自分も見様見真似で作ってみました。

1.2mm厚のプラ板を短冊状にカットしたのちに、適当な大きさに切り出していきます。揃っていると不自然なので、ランダムに形が変わるようにします。

カットした端の角を落としてヤスリで形を整えます。柵にするので、高さは極端に不揃いにならないようにしました。

塗装は、サーフェイサーを吹いたあとに、タミヤのアクリル塗料XF-53ニュートラルグレイとXF-63ジャーマングレイを半数ずつぐらい塗り分け。Mr ウェザリングカラーのマルチブラックでウォッシングして仕上げています。

スレート板の幅によって2組に分けて、ワイヤーを接着します。

レイアウトにはゴム系接着剤で固定しました。

ワイヤー柵、スレート柵ともに金属線が目立つので、タミヤのアクリル塗料XF-10フラットブラウンを塗って、少し錆びた感じに。

プラットフォーム周り

プラットフォームの柵は、昔買ったRATIOのプラキットを使用。クレオスの水性ホビーカラーH-33あずき色で塗装したのちに、支柱のところにピンバイスで穴を開けつつ、ゴム系接着剤で固定しました。

ベンチやゴミ箱を置いたり、お花を植えたり... 

道路脇のスレート壁

プラシートで作ったスレート壁をゴム系接着剤で固定。道路との隙間は、パウダーなどを使って雑草が生えている感じにして、うまくごまかしました。

給水塔のアップデート

配置に悩んでいた給水塔ですが、引き込み線と待避線の間に置いて両側に給水できるように、片側仕様だった給水ホースを両側仕様へのアップデートを行いました。

オリジナルバージョン(給水ホースは片側のみ)

待避線側については建物と線路の間が空く(黄色矢印)ことから、給水ホースを少し伸ばす加工が必要です。

引き込み線と待避線の間に置く

余っていたランナーと真鍮線を使って給水ホースの突き出し部分を造作し(写真右)、合わせて給水弁操作用のチェーンもつけてみました。

レイアウトに置いてみたところ。なんとかうまく収まったと思います。


ヤード周り

レイアウトの持ち運びを考えて建物は固定しないつもりですが、ひとまず置き場所を決めて装飾を入れていきます。

車庫の脇の一角には、前回にも使用した自作の岩石をごろごろ。パウダー、コースターフ、スタティックグラスで周りを飾ります。

石炭庫の表は石炭殻や灰を撒いて... 裏は少しパウダーとコースターフを。

スレート作業場の裏、車止め周りもパウダーとスタティックグラスで。

全体と建物を取っ払ったところ。

全景

ベースボードに固定したものの全体はこんな感じ。

樹木、建物、車、列車、羊(!)を置くとこうなります。

ここまでくると、ひとが全くいないのが当然気になってくるわけで。次はそのあたりに進もうと思います。

(つづく)

OO9レイアウト製作記・第10回「緑を入れる」

前回は、地面の整備が一通り終わったところまででした。

今回は、レイアウト製作の中で一番楽しい(と勝手に思っている)緑を入れる作業です。

パウダー撒き

最初は下地としてパウダーをざっと撒いていきます。 山肌に使ったのはNoch 08410 Streumaterial hellgrün(写真左側)。4年ぐらい前にホビーセンターカトー東京で買ったものですが、KATO, TOMIXやWoodland Scenicsにはあまりない、薄い黄緑の明るい色が特徴です。今回のレイアウトは岩肌、地面、建物を含めて灰色系でやや暗い印象になるので、コントラストを考えて色の浅い明る目の緑を選びました。線路脇などの樹木の生えているところには、KATO 24-315 ターフ茶色ブレンドWoodland Scenics Blended Turf Earth Blend)(写真右側)を使いました。

茶色のアンダーコートを塗ったところに、希釈した木工用ボンドを塗ってパウダーを撒いていきます。

スレート作業場を置いて見た目の確認。パウダーを撒いただけで、ぐっとレイアウトっぽくなりました。

つづいて、舗装路の縁および歩道の砂利表現。写真左の赤矢印のところにPECOのパウダーをぐるりと撒きます。昨年の日本鉄道模型ショーで100円で売っていたジャンク品が役に立ちました。

そのままでは少し黒が強い感じがしたので、上からアクリル絵具(リキテックス ACRYLIC Soft パーチメント)を薄く塗ってトーンを抑えました(写真左→写真右)。

岩場の造作

草撒きに移る前に、山肌や山裾に岩場を作っていきます。既成の大き目サイズの岩は、渓谷の河川敷に置くようなものがほとんどでイメージに合うものがなかったので、余っていた石膏岩を使って自作することにしました。

マイナスドライバーと金槌で石膏岩を適当な大きさに砕きます。

着色はアクリル絵具を使用します。岩肌でも使ったリキテックス  ACRYLIC Soft パーチメントを水で溶き、ビニール袋に砕いた石膏岩とともにいれます。

そしてしばらくもみもみもみもみ...できあがったところで、作業トレイにぶちまけて乾燥させます。

その後、色をニュートラルグレイ5に変えて同じ工程を行います。なんとなくそれっぽい岩石が出来上がりました。

先日レモン画翠で見つけたカラー砕石も合わせて、山肌、山裾にそれぞれ配置してみました。

草撒き

いよいよお待ちかね、Static Grass Applicatorを使った草撒きです。今回はいままで使っていた小さなもの(PECO PSG-3 Pro Grass Precision Applicator - 写真左)に代わって、大きなもの(PECO PSG-1 Pro Grass Micro Applicator - 写真右)を投入して、一気に仕上げていきます。

Static Grassは、グリーンスタッフワールドGSWD-1115スタティックグラス 4-6mm 春の草(200ml)を使用。PECOのスタティックグラスには、パウダーと同じような明るい色が見つからなかったので、アマゾンで見つけたこちらのメーカーのものを試すことにしました。

接着剤となるKATO 24-408 草はら糊(中身はおそらくNoch 61130 Gras-Kleber)をゴムべらで塗ったあと、Static Grassをどんどん撒いていきます。乾燥を待ってクリーナーで接着しなかったStatic Grassを吸い取ったあと、足りないところを再度撒きます。

きれいに立たせるコツとしては

  • ApplicatorにStatic Grassを入れて蓋をして、上向きのままスイッチを入れ何度か振ってStatic Grassを十分に帯電させる
  • 撒くときはなるべく地面に近いところでApplicatorを振る

というあたりでしょうか。

草撒きのあとは、岩周りや山肌と崖の境目を中心に、樹木製作で使ったKATOの天然樹木素材やコースターフを使って全体を整えました。

レイアウトの1/4ぐらいを山が占めているので、ここを過ぎれば完成が見えてきます。

(つづく)

 

 

OO9レイアウト製作記・第9回「地面の整備」

今回は、まだベースボードやスチレンシートが剥き出しになっている箇所を中心に整備を進めます。具体的には、写真に示した道路部分(青矢印)、線路、ヤード周り(赤矢印)、プラットフォーム(緑矢印)です。

モデリングペーストによる造作

ここで登場するのは、カトーがジオラマ材料として売っている28-801「崖や道を造る」(小粒灰色)、同じく28-802「崖や道を造る」(中粒灰色)。中身はホルベインのモデリングペースト(パミス、コースパミス)と思われます。

これを表面に薄く塗ることで、地面を仕上げてみたいと思います。粒状感の違いに応じて

  • 小粒灰色:道路部分、プラットフォーム
  • 中粒灰色:線路、ヤード周り

と使い分けてみました。

作業はある意味単純で、塗りたい箇所におもむろに絞り出して、モデリングナイフでひたすら薄く伸ばしていきます。

1回目を下地が見えるか見えないぐらいに薄く塗って(写真左)、完全に乾いたあとで2回目を塗り重ねて平らにしていきます(写真右)。

粘土や石膏では「平にする」のはなかなか骨の折れる作業なのですが、このモデリングペーストは伸びもよく、モデリングナイフがあればかなり理想的な表面に仕上げられると思います。

地面とは別に、切り通しの壁面にも使ってみました。元々ここはスレートのプラシートを貼り付けて壁面としようと思っていたところで、地面と並行に筋を入れて人工的な造作に見えるようにしました。

全景の写真がなくて申し訳ないのですが、仕上がりは以下のようになりました。

塗装

十分に乾燥させたあと、塗装に入ります。塗料はターナーアクリルガッシュを使いました。まずは中粒、小粒それぞれを塗ったテストピースを作り、

の3色を塗り分けてみました。

予想していたことではあるのですが、やはり粒状の違いによって同じ色でも微妙に色の濃さが違って見えます。

藍鼠は変化球として用意してみました。こうして並べてみると藍色がはっきり出るので、このまま合わせて使うとレイアウトの中で目立つ色になる(というか浮いて見える)可能性があります。地面のような広範囲に塗ると、レイアウト全体のトーンが変わってしまうので、地面に塗るのはやめて、切り通しの壁面にだけ使うことにしました。

ニュートラルグレイ7よりも濃い灰色にしたい道路部分は、同系列のニュートラルグレイ5を使うことにしました。

塗り分けはこんな感じ。前回、軽量粘土「ハーティーソフト」で造作した樹木下の地面は、いつものカトー(Woodland Scenics)のアンダーコートアースです。

バラスト撒き

地面ができたところで、残った線路部分にバラストを撒いていきます。昨年10月にトンネルポータル部分のバラストを撒いたときと同じ素材、工法で行いました。

線路の内側部分を埋めてから、外側を埋めます。

バラストを撒いた部分とモデリングペーストで造作した地面が、同じ高さになるように均します。

周回線路もどんどん進めます。

モデリングペーストとバラストの境界部分もいい感じです。

線路の踏切板も作ってみました。

線路のウェザリング

バラストが固着したところで、塗装済みの線路、枕木とバラストを馴染ませるために、エアブラシでウェザリングを入れます。塗装ブースで作業というわけにいかないので、天気のいい日を見計ってレイアウトごとベランダに持ち出しての作業です。

ウェザリングにはタミヤのアクリル塗料XF-84ダークアイアンを使い、煤表現を入れていきます。

踏切板部分も合わせてウェザリングを入れました。

ようやく一通りベースで覆われた状態まできました。まだまだ作業は続きます。

 

OO9レイアウト製作記・第8回「樹木を植える」

製作開始からそろそろ1年が経とうとしてますが、未だ道半ば。でも少しずつ進んでいます。今回は樹木を植えるお話です。

建物や山を作ってきて、ご覧のようにレイアウト上もだんだん手狭になってきたのですが、まだ空いているところがあります。周回線路の外側(赤矢印)あたり。ここに木を植えて、平坦なレイアウトに少しでもアクセントを付けたいところです。

気をつけたいのは、レイアウトをベースボードレベルから見たときに、線路への視界を遮る形になるということ。木々の隙間から線路を走る列車がきちんと見えるようにしたいところです。

樹木製作

樹木の作り方はいろいろあって、針金を使って幹から作る方法もありますが、今回はWoodland ScenicsのTree Amaturesを使って省力化し、枝葉をつけるところだけを自作することにしました。

Tree Amaturesは枯れ木の状態だとかなりおもちゃっぽい(そして似た形ばかりになる)のですが、枝葉を付けてしまうとそんなに気にならない。加えて土台部分と幹の部分が分離するような作り(写真右の黄色矢印部分)になっているので、メンテナンスで修理交換したり、着せ替えをして四季の変化を演出するようなこともできそうです。

枝葉については、レイアウト手前に置かれることになること、木立の隙間からの視界を確保すること、という条件に照らし、リアル路線のカトー「天然素材樹木」を使用しました。こちらいわゆる“オランダフラワー”を着色・加工してReady Madeの素材にしたもので、葉っぱ付きのものと、葉っぱなしのものがあります。これをTree Amaturesの枝につけて、樹木として加工していくわけです。

接着剤は、カトーの「ジオラマ糊」(Woodland ScenicsのHOB-E-TAC)を使いました。一見するとただの木工用ボンドに見えるので、わざわざ買わなくても... と思っていたのですが、このジオラマ糊は乾燥後も(というかむしろ乾燥後に)粘着力があるのが特徴で、固定の難しい枝葉を幹に効率よく接着していくことが可能になります。個人的には買って損はないと思います。

まず幹の形を整えたあと、枝にジオラマ糊をまんべんなく塗ります。しばらく(15分以上)放置後、接着剤が透明になってくると粘着力が出てくるので、形よく枝を貼り付けていきます。

葉っぱなしの場合には、枝を付けたあとに希釈した木工用ボンドをスプレーし、コースターフをふりかけて葉を作っていきます。スプレーしすぎるとジオラマ糊の粘着力が弱まり、せっかく付けた枝がはずれてしまうので注意が必要です。

大きな幹のものには枝葉付きのもの、小さな幹のものには枝葉なし+コースターフという組み合わせで、大5本、小13本の合わせて18本を作りました。

いざ植樹へ

さて樹木を植える地面の方も準備を進めます。フラットな場所に樹木を置いても面白くないので、多少のなりとも起伏をつけるため、まずは3mm厚のスチレンペーパーを重ねて段差を作ります。その後、軽量粘土「ハーティーソフト」を盛って段差をならしていきました。

この粘土は初使用でしたが、水なし使えて伸びもよく、乾燥後の割れや収縮も少ない。塗装はジェッソなどの下地塗りをしてもよいし、そのまま着色も可能。なかなかのスグレモノです。今後も使っていきたいと思います。

大まかな起伏がついたところで、作った樹木をざっと配置してみます。

木立の隙間から列車がちゃんと覗けそうです。

この状態で樹木の位置を決め、樹木の土台を埋め込んだ形でさらに地表を作っていきます(赤矢印が埋め込んだ土台)。

最終的にこんな素敵な林ができました!

まだまだ旅は続きます。