IORI工房 ハ1005を作る(その3)

今年最初のプロジェクト、IORI工房さんの「ハ1005」製作の最終回、最終組み立てとテスト走行までをお届けします。

窓と屋根の取り付け

まずは窓を取り付けます。窓は透明なフィルム、プラ板ならなんでもよいとのことでしたので、ストラクチャー製作に使ったOHPフィルムの余りを切り出して使いました。扱いのよいクラフトボンドで接着。

f:id:giovanni_ihatov:20210209201925j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210209202249j:plain

次に、塗装のために別々になっていた屋根と車体をくっつけます。説明書にはゴム系接着剤でと書かれていましたが、ここもクラフトボンドで施工しました。

f:id:giovanni_ihatov:20210209203056j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210209203209j:plain

ねじ式連結器

最後はカプラーを組み立てます。もともとはKadeeカプラー#5を使う予定だったのですが、機関車側に使うNEM362規格のKadeeカプラーの手持ちがない。「IORI工房で作っているねじ式連結器でNEM362規格のものがあればいいのにー...なんてね」って思っていたら、ありました(笑)、はい。というわけで、Kadeeカプラーはお払い箱にして、IORI工房純正(?)ねじ式連結器を取り付けることにしました。

f:id:giovanni_ihatov:20210209125704j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214090641j:plain
Kadeeカプラー#5(左)とIORI工房謹製ねじ式連結器(右)

KadeeカプラーNo.5互換のものは組み立てが必要ですが、構造はシンプル。ただこの小さなバネを吹っ飛ばしてしまうと、おそらく発見は困難。すべての作業を部品トレイの中で行いました。ひと箱で2両分、形状の異なるカプラーが2組4つ出来上がりました。

f:id:giovanni_ihatov:20210214094136j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214094309j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214095717j:plain

カプラーは床板とボディをねじ留めする際に一緒に組付けます。

f:id:giovanni_ihatov:20210214102329j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214133338j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214111849j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214111910j:plain

なおNEM362規格のものは、NEM Pocketに挿すだけなので簡単です。

f:id:giovanni_ihatov:20210214111826j:plainちなみに実際に連結するとこんな感じです。

f:id:giovanni_ihatov:20210220154849j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210220154933j:plain

これにて無事落成です!

f:id:giovanni_ihatov:20210214102002j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210214102020j:plain

まことに小さな国の燐寸箱客車

Llancot Railwayでのテスト走行には、手持ちの蒸機で一番小さいGWR Class 1361 0-6-0STにお願いしました。ここから先は動画でどうぞ。

想像通り、うちのレイアウトによく馴染みます!Scaleの関係(1:76 vs 1:80)もありますが、まことに小さな国の燐寸箱客車が鉄道発祥の地である英国蒸機や客車たちに囲まれて頑張っている姿は、模型の世界といえどもじーんとくるものがあります。最初のキット製作、そして最初の日本型が古典客車で本当によかった!

今後もIORI工房さんから古典客車シリーズを順次発売していただけるとのことで、楽しみがひとつ増えました。一編成出来上がった暁には、是非とも日本型蒸機を迎えたい。いまから妄想を巡らせています。

(おわり)

「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」(リチャード・ロイド・パリー/早川書房)

津波の霊たち 3・11 死と生の物語 (ハヤカワ文庫NF)

久しぶりの読書日記。

始まりは1/21に英タイムズ紙に載せられたこの記事。日本政府がコロナのため五輪中止が必要と非公式に結論付けたとの報だった。

Twitterでもこの引用を目にしたが、この記事を書いた記者リチャード・ロイド・パリー氏に関する記事を別のところで目にすることになる。

見出しに「日本人の我慢に飽き飽き」とあり、これが俄然興味を引いた。インタビュー中、彼はこう答えている。「災害以外の状況下で、政府への期待値が低いことは一般的に言って、『悪いこと』になり得ます。」

昨年来続くコロナ禍、そして東京オリンピックを巡る様々な出来事。僕は、世の中の空気がこれらの事件や不幸について、何か台風のような天災が来たときのように、避けられぬものとして扱っていることにひどく違和感を感じていた。年初のエントリー「傾国」でも書いたように、たとえ大きな災厄や想定外の事象があったとしても避けられる不幸は厳然としてあり、それを貪欲に希求することを躊躇してはいけないのではないかと。黙っていてることは悪なのだと思うようになった。彼のこの言葉はまさにいまの自分に刺さる言葉だった。

以下、「津波の霊たち」の中から特に気になった部分を引用する。

私はときどき、なぜ日本ではもっと単純な結論に至らないのだろうと不思議に思うことがあった。ある程度の不平不満の吐露、口論、混乱、さらに少しばかりの略奪や不当な値上げを大目に見てもいいのではないか?一般の人々が立ち上がり、権力者を黙らせ、自分たちが選挙で選んだ政治家の行動に対する責任をとるという意欲があるのであれば、ごく私的な身勝手な行為がもっと赦されてもいいのではないか?

 私としては日本人の受容の精神にはもううんざりだった。過剰なまでの我慢にも飽き飽きしていた。おそらく人間の域を超越したあるレベルでは、大川小学校の児童の死は、宇宙の本質に新たな洞察をもたらすものなのだろう。ところが、そのレベルよりずっとまえの地点ー生物が呼吸し、生活する世界ではー児童たちの死はほかの何かを象徴するものでもあった。人間や組織の失敗、臆病な心、油断、優柔不断を表すものだった。

当局による上訴によって費やされた三年という期間は、ただ公的資金を無駄遣いし、想像できうるかぎりすでに最大の損失を被った人々の苦しみを長引かせただけだった。私としては、裁判で闘いつづけるとを決めた官僚たちは、当局になんの落ち度もないという純粋な確信を持ってそのような行動に出たのではないと思う。彼らは、「自分がまちがっていると公務員はけっして認めてはいけない」という原則にもとづいてその行動を取った。非難を受け容れるのが当然の場面でさえ、責任を認めるという行為は、公共機関の体面を傷つけることを意味した。

僕は、いまの日本の社会規範が決して劣ったものとは思わない。でも完全なものでもない。状況は変わり続け、それに対応し続けなくてはいけない。完璧はない。失敗もする。でもよい方向には向けることができる。政治に、もっと関心を持たなくてはいけないと思う。選択した結果なのであって、与えられたものではないのだ。

引用だけみると、英国の記者が上から目線で何やら批評めいたことを書いた本のようにも読めるが、これはこの著書のごく一面でしかない。多くの内容は、宮城県石巻市・大川小学校で起きた悲劇に関係した人々(主に児童の保護者)への膨大なインタビューから紡ぎだされる、東日本大震災に遭ったひとびとの声の記録であり、またその死と生の記録でもある。

もうすぐ震災から10年。有体に言えば、自分はこの未曾有の災害に、本当に向き合うことなくここまで来てしまったようにも思う。でも関係者の「声」のおかげで、大川小学校はまだその地にその姿を残していて、いまなお向き合う機会を与えてくれている。「声」をあげることの大切さを改めて思った。

IORI工房 ハ1005を作る(その2)

今年最初のプロジェクト、IORI工房さんの「ハ1005」製作の2回目です。前回は車体、屋根、床板・足回りの組み立てまでを行いました。今回は塗装を進めます。

エアブラシ導入

これまでストラクチャーキットの塗装は、お手軽さから水性アクリル塗料による筆塗りでやってきました。細かいところを塗るのは問題なくとも、大きな面積を均質に塗るのはやはり難しく、どうしても筆による塗りムラが生じてしまいます。ムラなく塗るためには重ね塗りが必要ですが、今度は塗膜の厚さが問題になります。ストラクチャーでは多少のムラも風合いとして見られなくもなかったのですが、車両に関しては、やはりきちんと仕上げたい。となると、エアブラシによる塗装を視野に入れる必要があります。

エアブラシは塗装ツールとしては一般的なものですが、匂いや換気の問題など塗装環境も含めた準備が必要で、用具も決して安価なものではありません。そもそも初心者の自分に使いこなせるのか?ちょうど以下の雑誌2誌で特集をしていたので、まずは情報収集をしました。

f:id:giovanni_ihatov:20210211133536j:plain

モデルグラフィックス 2020年12月号」シュ~と吹く!エアブラシ

一般模型雑誌ということもあって、すでにエアブラシをある程度使っているひと向けに再度情報をまとめるというものでした。ノウハウ的な内容が多いので、エアブラシを一通り使ってみたあとで見返してみるといい感じ。

「RM MODEL 2021年1月号」塗装ツール&テクニック2021

塗装方法、塗料の種類、塗装前の処理、マスキングのやり方など、エアブラシも含めた塗装全般のことが網羅的に書かれていて、勉強になりました。鉄道模型雑誌なので、塗装対象としては当然、鉄道車両やレイアウトが想定されているのもよかったです。

このほか、パソ通時代からの友人うぃ氏 (@KawaharaYoui)にもアドバイスをいただき、用具を選定しました。やたらと高価なものは不要としても、簡易的なものであとで買い替えを迷うよりは、ずっと使えるものを選ぶという方向です(はんだごてで失敗している...)。

かかった費用は合わせて5万円弱でした。なんとか予算ぎりぎり。

f:id:giovanni_ihatov:20210118195725j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210123094137j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210123102519j:plain

設置場所ですが、ワークベンチ横に窓があるので、作業時はここから排気できるように新たにキャスター付きのサイドテーブルを製作。天板は5.5mmシナベニヤを載せただけですが、汚れもするだろうということで割り切りました。

f:id:giovanni_ihatov:20210124140226j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210124140419j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210124141815j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210124140639j:plain
収納時(左)と使用時(右)

塗料その他の用具

エアブラシと塗装ブースだけで塗装が始められるわけもなく、塗料をはじめとするその他もろもろの用具も準備しました。

f:id:giovanni_ihatov:20210127212120j:plain

まず塗料については、以下の5色をアクリルラッカー塗料で揃えました。

  • 屋根 - ガイアカラー鉄道模型用1007ダークグレー
  • 車体 - ガイアカラー鉄道模型用1010ぶどう色1号
  • 床板・足回り - ガイアカラー鉄道模型用1011黒
  • 等級帯 - MrカラーC108キャラクターレッド
  • 車内内側 - MrカラーC44タン

その他買ったもの一覧。

  • うすめ液 - クレオス「Mrカラーうすめ液」「Mrカラーレベリングうすめ液」
    前者は主に洗浄用で、後者はエアブラシ希釈用。
  • サーフェイサー・プライマー - タミヤ「スーパーサーフェイサー
  • 塗料皿 - クレオス「Mr塗料皿」
  • 攪拌スティック - タミヤ「調色スティック」
  • 計量スプーン - クレオス「Mrスプーンアンドスティック」
    塗料の計量にスポイトで吸い出すとスポイトの洗浄がタイヘンなので、塗料はこちらで計量し、うすめ液をスポイトで計量する方式としました。
  • 支持棒 - クレオス「 Mr.ネコの手 持ち手棒 ミニクリップ」
    割りばしとかでも代用できそうですが、まずは専用品を試してみます。
  • 粘着ラバー - 「Blu・Tack」
    支持棒のクリップで挟めないときに使う固定用に。コクヨの「ひっつき虫」をずっと使っていましたが、海外では「Blu・Tack」が多いこともあり、今回はお試しで。
  • マスキングテープ - アイズプロジェクト「ミクロンマスキングテープ 2.0mm」
    等級帯のマスキング用。
  • 塗装・乾燥ベース - アイリスオーヤマ「猫のつめとぎ」
    専用品よりでかくて安いので。ホームセンターで入手。
  • 防毒マスク - 興研 面体「サカヰ式G-7」吸収缶「KGC-10型-03 有機ガス用」
    吸収缶は消耗品なので、近所のホームセンターで入手可能なものにしました。
  • 手袋
    近所のドラッグストアに売っている薄手のものを。
  • ぺんてる「筆ペン 金の穂」
    把手金具塗装用。

というわけで、実にいろいろなものがいるものだなと思った次第。次回以降は塗料やうすめ液などの消耗品が中心になると思いますが、やっぱり物入りであることにはかわりないですね。

 塗装テスト

さて準備が整ったところで、いよいよエアブラシ塗装の始動です。いきなり車両を塗って取り返しがつかないことになるとアレなので、まずは部品の紙片をテストピースとして、練習から始めます。

f:id:giovanni_ihatov:20210130152136j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210130150653j:plain

エアブラシ塗装の前に、下地処理としてスーパーサーフェイサーを吹きます。缶スプレーは圧のコントロールができないので、ベランダでも吹いたサーフェイサーが盛大に舞い上がりがちだっのですが、塗装ブースだと見事に吸い込んでくれました。室内作業で問題なし。これだけでも買った価値があるというものです。

そして次にエアブラシに塗料を入れ、コンプレッサーをスイッチオン。

第一歩を踏み出しました!

等級帯の塗り分けもテストしてみます。まずは等級帯の色である赤をざっくり塗ります。

f:id:giovanni_ihatov:20210130171038j:plain

乾燥後、マスキングテープをして、車体の色であるぶどう色1号を重ねます。

f:id:giovanni_ihatov:20210131113123j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210211141423j:plain

ふたたび乾燥後、マスキングテープを外してみます...

 きれいな赤帯が現れました。成功です!塗分け手順はこれでよさそうです。

今回は基本的にべたっと塗ればよいので、エアブラシの操作自体には初心者でもできるレベル。スプレーと違って塗料の出方が非常に細かいので厚塗りの心配もなく、重ね塗りでもきれいに仕上がるのはさすが。このキレイさは筆塗りをやっていたころには到達できなかったものです。ただ色変えの度に洗浄して使わないといけないので、そこがやや面倒といえば面倒。手順をよく考えないと塗料も無駄になってしまいます。段取りがすべてですね。

塗装本番

いよいよ本番。手順は以下の通り。

  1. 全体にサーフェーサーを吹く
    f:id:giovanni_ihatov:20210131145914j:plain
    f:id:giovanni_ihatov:20210131204101j:plain
  2. 車内を塗る

    f:id:giovanni_ihatov:20210131171456j:plain

  3. 窓にマスキングをして等級帯の赤を塗る
    f:id:giovanni_ihatov:20210206093855j:plain
    f:id:giovanni_ihatov:20210206104010j:plain
  4. 屋根、床板・足回りを塗る

    f:id:giovanni_ihatov:20210206123418j:plain

  5. 等級帯のマスキングをして、車体を塗る
    f:id:giovanni_ihatov:20210206150357j:plain
    f:id:giovanni_ihatov:20210206153915j:plain

最後にマスキングをはがします。

把手金具のあたりに若干塗料が回り込んでいますが、初回の出来としては申し分ありません。買ってよかった、エアブラシ!!

続いて金の穂で把手金具を塗っていきます。

 同じシリーズで銀の穂もあり、金属の色差しをちょいちょいやるには最高のペンです。

デカール貼り

さて塗装の最後は、仕上げのデカール貼りです。

f:id:giovanni_ihatov:20210207100422j:plain

今回のキットには親切に必要なデカールセットが付いてくるのですが、これの貼り方がいまいちわからない... またまたIORIさんにDMして要領をお聞きする(何度もありがとうございます)。いざ挑戦。

f:id:giovanni_ihatov:20210207213700j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210207213615j:plain

アレアレ?ちゃんと貼ったつもりでも、フィルムがちょっと浮いているように見える?肉眼ではそこまで目立たないのですが、こうして寄って写真を撮ると「いかにも貼りました」というような感じに見えます。デカールってこんなもんだっけ、とつぶやいていたら、西シマ(@nishishiman)さんからアドバイスが。

 なるほど。デカール貼りをアシストするものがあるのは知っていましたが、今回は平面に貼るので特に要らないかな、と思っていたのでした。さっそくヨドバシから取り寄せて2両目でリベンジです。

f:id:giovanni_ihatov:20210209222917j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210209224600j:plain

見違えるほどよく、また貼るのも簡単になりました!使い方は簡単で、

  1. 貼りたいところにマークフィットを少し塗る
  2. その上にデカールを置く
  3. 置いたデカールの端に綿棒を近づけ、少しずつマークフィットを吸収しながら位置決めをしていく
  4. 位置が決まったら上から綿棒で軽く押さえる
  5. 上からマークフィットを少し塗る
  6. 再び上から綿棒で軽く押さえる

という感じです。特に3のところがポイントで、マークフィットを使うと、このときに表面にうまく密着してくれるようです。

今回はここまで。次回は最終回。最終組み立てとテスト走行になります。

(つづく)

DSair2ティーチング機能を試す

Desktop Stationさんが作っているDCCコマンドステーションDSair2のWebAppがアップデートされ、新たにティーチング機能が追加されたので、少し遊んでみました。

ティーチング機能とは

ティーチング機能については、以下の公式ブログ(?)の記事を見ていただくのが一番かと思います。

簡単に言うと、DCC対応車両に対する操作(走行方向、速度、ファンクション)やDCCアクセサリ(ポイントや信号など)に対する操作を記録し、後で再生することができる機能です。

操作した内容はテキストベースのスクリプトの形で記録され、ブラウザに保存されるだけでなく、PCにファイルとして保存、あるいはPCのファイルから読み込みができます。スクリプトテキストエディタで編集可能なので、オフラインで任意の操作を追加、削除することもできます。

つまりDCC対応環境があれば、追加のコストなしに簡単な自動運転を実現することができるのです。

できること、できないこと

自動運転といっても、ティーチング機能にはいくつかの制約があります。

ティーチング機能はあくまでも操作を記録するものなので、ティーチング開始時の操作対象の列車の走行方向、速度、ファンクション状態、ポイントや信号の初期状態については記録されません。

また操作のサンプリングも250ms単位ですので、正確なタイミングの操作を再現したり、列車の停止位置を完全に合わせるなど、高い精度を要求される操作には向いていません。

ブラウザ上で複数のタブを開くことで複数列車の運転も可能ですが、タブ間のスクリプトの同期機構などはないので、複数列車を連携させるような自動運転は難易度が高いと思います(未検証)。

シナリオを考える

さて、ティーチング機能を使った自動運転で遊ぶには、事前に運転シナリオを考える必要があります。

複数列車であれば駅での行き違いがよくあるパターンですが、今回は一列車に対する操作となるので、駅の出発、到着だけでなく、方向転換を含めることで変化をもたせることを考えます。

本当は機関車けん引の列車で機回しなどできるとよいのですが、残念ながらDCCで連結器の解結が制御できる車両を持ち合わせていないので、2両編成の気動車(DMU - Class 150/2)を使って、以下のような順でレイアウト上を走るシナリオにしました。駅には全部で3つのプラットフォームがあるので、ポイント操作を入れてすべてのプラットフォームを使うようにしてあります。

  1. 1番プラットフォームから左回りで出発
  2. 1周して2番プラットフォームに到着したら、進行方向を変え、右回りで出発
  3. 1周して3番プラットフォームを通過
  4. 1周して2番プラットフォームに到着したら、進行方向を変え、再び左回りで出発
  5. 1周して1番プラットフォームに到着

ティーチング機能で作ったスクリプトは基本的にループ実行されるので、最終的に列車が開始位置に戻ってくるようなシナリオにすれば、理論上は永久に繰り返し走らせることができます(実際は停止位置に誤差が出てくるので難しいですが...)。

文字ではわかりづらいと思うので、上記シナリオを実行したときの駅の様子を早回しでどうぞ!

スクリプトの調整

シナリオが決まったら、ティーチング機能で操作を記録していきます。ファンクション操作やDCCアクセサリの操作は、多少間違っても後でスクリプトを編集すればよいですが、速度操作に関してはスクリプト編集すると停止位置がずれるので、何度か練習してからティーチング機能を使った方がよいでしょう。

ティーチングが完了したら、そのまま一度スクリプト実行させてみます。操作のサンプリングが250ms単位ということもあり、おそらくティーチングしたときから停止位置などタイミングがずれることになると思います。一旦スクリプトをPCにセーブし、テキストエディタでの編集で列車の走行中の待ち時間(WAIT行)を増減させ、更新したスクリプトをロードしてテストします。これを繰り返して、目的の停止位置で停車するように調整します。列車がシナリオ通りに安定して走るようになったら、DCCアクセサリの操作の追加修正を適宜行います(スクリプト中のDCCアクセサリの指定は、アドレス-1にする必要があることに注意!)。

調整がうまくいかず、スクリプトを途中で中断した場合、再度スクリプトを実施するには、ポイントや信号を初期状態にしておく必要があります。これを簡単にするために、本編のスクリプトとは別に、ポイントや信号を初期状態にリセットするためだけのスクリプトを用意すると効率がよいと思います。

デモ

というわけで、Llancot RailwayにてDSair2を使った自動運転のデモを動画にしてみました。


動画では動きを中心に見せていますが、DCCサウンド機だと複雑な操作をしなくても、発車、停車や速度変化を繰り返しさせるだけでも楽しめると思います。手ぶらで勝手に列車が動いてくれる様は、博物館のレイアウトを見ているようで楽しいです。

DCCコマンドステーションはZ21*1を中心に使っていましたが、手動のときはZ21、自動のときはDSair2のような使い分けをすることになりそうです。

 

*1:Z21のSnifferポート経由でDSair2を接続すると、自動運転時にDCCアクセサリの連続操作を取りこぼすことがあるようです。DSari2を線路に直接つないで使った方がよさそうです。

初荷が届く

今年初の着弾報告です。蒸機が2つ、どちらもebay.co.ukで購入。

Hornby R3564 BR 2-8-0 Class 8F '48405' (With Fowler Tender)

いわゆるStanier 8F 2-8-0のBR Black livery with late crest。

f:id:giovanni_ihatov:20210113203001j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210113203032j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113203247j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113203333j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113203444j:plain

Bachmann Branchline 31-728 GWR City Class 4-4-0 'Killarney'

City ClassはNational Railway Museum所有の'City of Truno'が有名ですが、その同型機になります。

f:id:giovanni_ihatov:20210113204745j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210113204842j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113210033j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113210110j:plain

f:id:giovanni_ihatov:20210113210309j:plain

今年のテーマ

届いた蒸機2つは、それぞれ今年遊んでみたい2つのテーマに沿ったものなので、それについて少し。

昨年は一旦埋め切ったレイアウトの手直しを中心に遊んでいたのですが、それもひと段落したということで、今年は車両を中心に据えてアレコレやっていきたいと思っています。

昨日掲載した「IORI工房 ハ1005 を作る」はその第一弾なのですが、英国鉄道模型に目を向けると、2019年秋に発表されたHattonsのGenesis Coachのリリースがいよいよということで、発売を心待ちにしているもののひとつです。

f:id:giovanni_ihatov:20210113221428p:plain

そんな折、そのHattonsのGenesis Coachの発売にぶつけるように、Hornby 2021 Rangeで、同じくpre-grouping時代(Era2)の4/6 Wheel Coachの発表がありました。

f:id:giovanni_ihatov:20210113223024p:plain

うちのような小さなレイアウトでは、こういった車長が短い小さな客車をたくさんつなげるほうがレイアウト映えもしますし、Era2の蒸機のバリエーションの豊富さも英国鉄道模型の面白さのひとつです。この時代のものはほとんど持っていないので、今年はEra2の蒸機、客車を集めて遊んでみようかと思っています。

もうひとつは、昨年後半に購入したBlack 5とCoal Hopperに端を発する蒸機貨物列車です。Big four時代のWagonも味があって面白いのですが、やりたいのはどちらかというとBritish Railways蒸機晩年(Era5/6)です。蒸機の最後の活躍を、現在の保存鉄道ではなかなか見られないEra5/6のWagonを使ったGoods Trainとして再現するのも、英国鉄道らしさがあると思います。

ちょうどAccurascaleから楽しそうな2軸のMineral Wagon(写真左)やSteel Coil Wagon(写真右)といった新製品もリリースされますので、蒸機のなかでもちょっと地味目の貨物機と組み合わせてみたいと思っています。

f:id:giovanni_ihatov:20210113233310p:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210113230842p:plain

IORI工房 ハ1005 を作る(その1)

今年最初のプロジェクトは、IORI工房さんの「ハ1005」の製作です。

明治鉄との出会い

今回製作する鉄道院「ハ1005」は、明治後期に製作された木造2軸三等客車です。英国鉄道模型をやってきたのに、なぜ日本のしかも明治時代の客車なのか。実は、とある漫画がきっかけでした。

明治時代の客車や機関車を擬人化した漫画なのですが、物語の設定や出てくる車両、建物の造形などが史実に基づいて忠実に取り入れられており、しかもキャラがかわいい!(ここ重要)早速BOOTHで既刊全巻を購入して、一気にファンになりました。

「明治の鉄道面白いなぁ」と興味が出てきたところ、作者のIORIさんが鉄道模型メーカー「IORI工房」をやってらっしゃることがわかり(笑)、これは是非ともうちのレイアウトで走らせてみたい、と思ったのでした。うちの車庫には英国蒸機の皆さんがいろいろおられるので、そこに日本のかわいい小さな客車がやってきて、英国鉄道風景の中をトコトコ走るというのは、なんとも模型ならではの楽しさで、妄想が膨らむところです。2021年にHattonsから2/3軸客車が続々とリリースされることもあり、それと合わせて楽しむのも面白そうです。

f:id:giovanni_ihatov:20210111212642p:plain

IORI工房さんの製品は、ペーパーキットでNスケールのものが中心。うちで走らすにはOOとは言わないまでも16番があれば...と思っていたら、その明治の木造2軸客車がリニューアル品として出ることに。

12月某日、満を持してIORI工房さんを訪問。

持っていったGreat Western Dean Goods 0-6-0 ともパチリ。

こうして「ハ1005」がやってきたのです!

工具・接着剤の準備

ストラクチャーのペーパーキット(カードキット)の製作経験はあるものの、車両のペーパーキットは初めて。そもそもキットから車両を作ること自体が初めてです。

特に製作工程において重要となる接着剤については、組立説明書に4種類(プラ接着剤、木工用ボンド、瞬間接着剤、クリアラッカー)を使い分けるよう指示があったので、以下のものを用意しました。

  • タミヤセメント
  • タミヤクラフトボンド
  • タミヤ瞬間接着剤(使い切りタイプ)
  • Mr. スーパークリアーつや消し

最後のクリアラッカーはそもそも接着剤ではないのですが、部品の張り合わせに使用するとのことで、無難なものを選びました。

f:id:giovanni_ihatov:20210108111427j:plain

工具については、ストラクチャーのペーパーキット製作に使うもので十分でした(デザインナイフ、ピンセットなど)。

別売り部品について

キットに含まれない別売り部品は

  • カプラー
  • 車輪
  • 真鍮線(Φ0.3mm)

です。カプラー、車輪は、IORI工房さんで売っていたKDカプラーとエンドウの車輪、真鍮線はヨドバシで売っているものを使いました。

f:id:giovanni_ihatov:20210108111643j:plain

キットの中身

箱を開けると、キットの中には以下のものが入っています。

f:id:giovanni_ihatov:20210108130100j:plain

  • ペーパーキット部品
  • 3Dプリンタパーツ(バッファ、ブレーキホース、油灯カバーなど)
  • ねじ類、軸受け
  • デカール
  • 組立説明書

ペーパーキット部品は厚さが様々で、彫刻のようにきれいにレーザーカットされています。特に側面の部品はこの薄さ、細さ。壊さずに最後までいけるのだろうかと、早速不安にかられました(^^;。

f:id:giovanni_ihatov:20210108130617j:plain

ただ、このキットの中身で最大の特徴が組立説明書です。B5サイズ5枚、模型原寸図に始まり、14ページに渡って製作手順が図解とともに非常に丁寧に説明されています。

f:id:giovanni_ihatov:20210108130145j:plain

プラキットと異なり、厚みが必要な部品についてはペーパーを何枚か張り合わせていく必要があるので、組立手順が重要なのはもちろんなのですが、使用する接着剤の種類から組み立ての注意ポイントまで解説されており、まさに至れり尽くせり。先ほど生じた不安も少しは和らぐというものです。

車体

びびっていてもしょうがないので、いざ製作開始。最初は側板の組み立てです。

リアラッカーを使って3枚の部品を順に張り合わせます。これは動画にしないとわからないと思うので、動画にしてみました。

リアラッカーをたっぷり目に吹くのがコツで、乾くまでの間は上下左右に自由に動かすことができるので、表裏をそれぞれ見ながら位置合わせをしていきます。この部品の特徴である窓枠がぴったりとセンターに合うようにすれば、位置合わせは大丈夫です。3枚張り合わせたときの凹凸の精巧さには、思わずため息が出ます。

f:id:giovanni_ihatov:20210108142340j:plain

そして扉留金具の取り付け。部品はチップLEDよりも小さく、なかなか一筋縄ではいきません。

f:id:giovanni_ihatov:20210108151159j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108151148j:plain

自分が編み出した方法は以下の通りです。

  1. 両手にピンセットを用意する
  2. 切り取った部品を片方のピンセットで取り、瞬着の海に浸ける
  3. 所定の位置に置き、もう一方のピンセットで部品を押さえて、部品がピンセットを離れて側板に残るようにする
  4. このとき位置がずれるので、両方のピンセットを駆使してうまく目的の場所に戻す
  5. 目的の場所に到達したら、触らず乾くまでそのまま放置

瞬着はびちゃびちゃの状態だとくっつかないことを利用して、その間になんとか位置を修正するというものです。

次に妻板。こちらは部品2枚。上に重ねる部品が下よりわずかに大きいので、裏面から見て上下左右はみ出しが均等になるように調整します。

f:id:giovanni_ihatov:20210108145242j:plain

一方の妻面にはステップを取り付けます。瞬間接着剤をステップの先に少しつけて差し込みます。

f:id:giovanni_ihatov:20210108152603j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108153955j:plain

最後に、真鍮線で作る金具を取り付けます。金具は付属の治具を使って作成。この治具の出来がまたすばらしい。一端を折り曲げて治具の穴に差し込み、ペンチで真鍮線と治具を挟み込んだうえで、治具の端を使ってもう一端を折り曲げます。側板の手すりとドアノブ、妻板の手すりの3種類を作ります。

f:id:giovanni_ihatov:20210108140716j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108141308j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108163711j:plain

金具を埋め込んだら、そのままの状態で瞬着で固定してから、内側に飛び出した部分をカットします。

f:id:giovanni_ihatov:20210109153020j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109153036j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109153221j:plain

妻面の手すりはRをつけなくてはいけないのですが、試した結果、タミヤクラフトボンド(Φ20mm)に巻きつけて曲げると具合がよかったです。

f:id:giovanni_ihatov:20210109164633j:plain

完成したら、4面を組み合わせて箱にします。部品の精度が高いので、何もせずとも板と板の角がピタッと合います。上下に補強をつけて車体は完成です。

f:id:giovanni_ihatov:20210109170423j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109173705j:plain

屋根

次に屋根です。屋根は2重構造になっています。

下屋根は2枚の張り合わせ。まずは部品を妻板のRに沿って曲げる必要があります。今回はPOSCAペン(Φ25mm)を使って曲げました。Rを付けたら、タミヤセメントを塗って張り合わせます。

f:id:giovanni_ihatov:20210109164651j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109182320j:plain

乾燥したら下屋根を車体に固定します。当然屋根が車体の端より若干はみ出す感じになるので、全方向均等にはみ出すように位置決めして、タミヤセメントで接着します。固定できたら、上屋根を載せるための髪飾り...もとい、台金具を載せていきます。井形に組んだところで、瞬着で固定。

f:id:giovanni_ihatov:20210109184702j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109200102j:plain

続いて上屋根。同様にPOSCAペンを使って曲げてから、タミヤセメントで2枚の部品を貼り合わせます。屋根の上に載せる小さな部品は瞬着で固定。輪っか状の部品は、これまた小さく恐ろしく細い。これは本当にペーパーキットなんだろうか、と思う瞬間です。

f:id:giovanni_ihatov:20210109200047j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109212447j:plain

水切りは、真鍮線を切断して瞬着で貼り付けます。屋根のRに沿って曲がっている部分は、同じくPOSCAペンを使って曲げくせを付けてから貼り付けました。

f:id:giovanni_ihatov:20210109212503j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109213038j:plain

上屋根は車体とは別塗装になるので、固定は塗装後に行います。いよいよそれらしい形が現れてきました。

床板

最後に床板に進みます。見える部分は少ないですが、走行性に影響する最もデリケートな部分です。

まずは軸受け。5枚部品を重ね、最後に金属製の軸受けパーツを埋め込みます。

f:id:giovanni_ihatov:20210108172559j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108172758j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210109123816j:plain

軸受けについてIORIさんに質問したとき、以下のアドバイスをいただきました。

f:id:giovanni_ihatov:20210111221446j:plain

軸受け周りは構造上黄色の線の部分に一番力がかかり、ややもすると折れ癖というか曲がり癖が付いてしまいます。これは赤線部にがっちり接着剤を流すことで防げますが、さらに頑丈にしたい場合は青線部にφ0.5くらいの真鍮線をU字型に曲げて貼り付けて補強するといいかもしれないです。

そこでオススメにしたがって、先ほどのパーツをΦ0.5mmの真鍮線を使って補強をしました。

f:id:giovanni_ihatov:20210110093918j:plain

続いて、フレームも5枚重ねで作成。実車同様に床板に強度を持たせる重要な部品です。

f:id:giovanni_ihatov:20210108195949j:plain

床板とステップも組み立てます。

f:id:giovanni_ihatov:20210108200353j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108202336j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108201309j:plain

両端にはバッファビームを付けます。バッファビームにあるコンマ何ミリの窪みに、ステップの出っ張りがピタリとはまります。

f:id:giovanni_ihatov:20210108210346j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210108210455j:plain

ここに先ほど作成した軸受け、フレームを順に取り付けます。

f:id:giovanni_ihatov:20210110101339j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210110101930j:plain

3Dプリンタパーツのバッファ、上屋根の油灯カバーを取り付けて、作業完了です。

f:id:giovanni_ihatov:20210110110253j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210110110330j:plain

ここまで来たなら、塗装前に一度仮組してみたくなるもの。少し気が早いですが、車輪を入れてみました。

f:id:giovanni_ihatov:20210110113324j:plain

一番心配していたのが車輪の嵌り具合と転がりでしたが、特に問題はなさそうです。ただ軸受けが少し外側に押し出され気味になるので、金属製の軸受けパーツの押し込みが足りないのかもしれません。あとで調整が必要のようです。

車体+下屋根、そして上屋根を載せます。

f:id:giovanni_ihatov:20210110141913j:plain
f:id:giovanni_ihatov:20210110141928j:plain

この状態でレールの上で試走。

上出来?思ったよりもスルスルと滑ってくれました(^^)。

雑感

初めての車両ペーパーキット組みでしたが、組立説明書の的確な指示と、IORIさんにいただいたアドバイスのおかげで、大きな問題なく組み上げることができました。

最初はパーツの細かさにびびりまくりでしたが、組立による誤差が出にくいように部品に切り欠きや出っ張りが配置され、各パーツの精度の高さとも相まって、カチッと位置合わせができるように作られています。誰にでもきちんと組めるキットとして、とてもよく考えらていると思いました。さりとてディテールに妥協しているわけでもなく、この車両の特徴を押さえるパーツもしっかり揃えらえていて、組みやすい上にディテールもあるという満足度の高いキットではないかと思います。

次回は塗装編(予定)。エアブラシ初挑戦の結果やいかに。

(つづく)

傾国

正直こんなタイトルで今年最初の記事を書くことになるなんて、と思うのだけど、どうしてもいまの気分をまとめておかなければ後々の自分に対して失礼に当たると思い、書き留めることにした。

小野不由美の「十二国記」シリーズをご存じだろうか。王様と麒麟が治める十二の国がある架空世界を舞台にした小説だが、物語中しばしば「国が傾く」という表現が出てくる。歴史小説、あるいは歴史書の中にもそのような表現があると思うが、現実に自分が住む国でそれを目の当たりにすることになった。もう断言していい。書籍に書かれた「国が傾く」とはどういう状態のことを指すのか、その一端を図らずも実感として理解した。この状況で「十二国記」を読むと、また違った感想を持てるのではないかと思う。

本日二度目の緊急事態宣言が発出された。内容としては飲食店の時短営業や夜間の外出自粛などとなっており、期間は1/8~2/7、目標はステージ3相当とのこと。ステージ3が目標でいいのかとも思うが、その後段階的に制限を緩和してステージ2を目指すらしい。つまりこの内容と期間で目標の達成は可能である、という判断がされたと理解するのが普通だろう。

しかしながら、先日1/5のBuzzfeedの記事として公表された8割おじさんの西浦さんが厚労省に提出したシミュレーション結果を見る限り、どうもそれは無理なのではと言わざるを得ない。

当然対策の強度によって増減の傾向に差が出るのだが、今回発出された緊急事態宣言の内容では、せいぜい横ばいにさせる程度なのではないかと思う。もちろんこの宣言による人々の行動変容については正確な予測が難しい。ひょっとしたらもう少しマシな結果が得られるかもしれない。だが、どう考えても今回の内容は、昨年4月の初めての緊急事態宣言よりも緩やかな印象で、状況としては逆にはるかに厳しいのだから、1か月かそこらで緊急事態宣言が解除できるような状況になっているとは考えにくい。つまりこの目論見は十中八九失敗する。また、この記事を読んでいようがいまいが、今回の緊急事態宣言でコロナ禍の状況が劇的に改善すると考えているひとはほとんどいないのではないかと思う。結果として、人々の行動変容は起こらずにコロナ禍は長引き、この国は不確実な未来しか持てない状況に長い間留め置かれることになる。

それは結果として、多くのひとに絶望を生み出すことになるだろう。僕はそれが心底恐ろしい。社会は多くのひとの「生きていて意味がある世界にしたい」という気持ちの集合で成り立っている。もしそれがなくなったら、社会はあっさり壊れると思う。例えば明日地球最後の日と言われたら何が起きるのかを想像してみてほしい。きっとそのような状況を傾国と呼ぶのだろう。

世界に目を向ければ、コロナ禍の中でも感染を克服し、確かな未来を感じられる国もある。同じ人間がやっていることなので不可能ではないはず。失敗に向き合い、どうにかしてそこにたどり着きたいと願わずにはいられない。

【追記】この気持ちをこの先の選挙で絶対に忘れないでおく。いまの政権与党およびその候補に投じることは金輪際ないだろう。