Black FiveのDCCサウンド化+電飾

今回は、Llancot Railway 2機目となるBlack Five、British Railways 4-6-0 Class 5MT 44668をDCCサウンド化した作業記録です。

古い設計のDCC Ready機

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Hornby R2322 BR 4-6-0 Class 5MT 44668

Hattonsの中古(Pre-owned)で見つけたBlack Fiveは、BR Black Livery(Early Emblem)のもので、価格はVAT抜きで£82.50。2003年製とやや古いながらも、5poleモーターと8pin(NEM652)ソケットがついたDCC Readyの製品です。ただ最近のHornby製品とは、若干構造が異なりました。

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まず本機とテンダーを繋ぐカプラーが、ドローバー+ケーブルではなく、写真のような通電カプラー(?)になっていました。

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ドローバー+ケーブルの場合は、本機→テンダーの線路集電用と、テンダー→本機のモーター出力用の4極端子ですが、この通電カプラーは2極のみ。モーターは本機側にあるので、テンダー→本機の線路集電用になります。本機の車輪でも集電しているので、あくまで集電を補助するための通電カプラーという位置付けです。

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そしてデコーダーの搭載位置は、テンダー側ではなく本機側に。ボイラー中央付近に8pin(NEM652)のソケットが鎮座していました。

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横からみてわかるように上下方向のスペース(赤矢印)はほとんどないため、スピーカーを入れるとなるとタンク式機関車の場合と同じく、ボイラー前方の煙室に押し込むことになります。この製品が設計された当時は、DCC対応といってもサウンドまでは考えてなかったように思われます。Hornbyは自前でサウンドデコーダー(TTS Decoder)をリリースしていますが、サウンド対応する際にスペースに余裕のあるテンダーにDCCデコーダーを移設して、現在の設計になったのでしょう。

デコーダーの選択

8pin(NEM652)ソケットがあるわけですから、素直に8pinインタフェースのサウンドデコーダーを選んで、煙室に収まるスピーカーを選べば、サウンド化は可能です。

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その場合、煙室(黄矢印先)には

  • デコーダー本体
  • 8pinケーブル
  • スピーカー
  • Stay-Alive回路

を押し込むことになります。このうち意外と厄介なのが8pinケーブル。デコーダーに直付けされたケーブルは取り回しが難しく、毎度収めるのに苦労するところです。

仮にインタフェースをNext18に置き換えれば、煙室には

  • スピーカー
  • Stay-Alive回路

だけを納めればいいことになり、スペース面では圧倒的に有利となります。そこでお試しに、先日laisdccから購入したNext18インタフェースボードを、8pinソケットの位置に付けてみました。

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おぉ!これですよ、これ。8pinソケットにはご退場いただいて、インタフェースはNext18でいくことにしました。

デコーダーがテンダー搭載ではなく本機にあることは、確かにスペース面では不利ですが、Loco LampやFirebox Frickerなどの本機側に必要な電飾の配線実装を考えると、実は有利な面もあります。本機搭載のモデルでサウンド化だけではもったいない。合わせてFirebox Frickerや念願のLoco Lampを付けてみることにしました。

Next18への換装

まずはNext18への換装から始めます。インタフェースボードには、あらかじめスピーカー(紫)とStay-Alive用(青、白)の配線を引き出しだしておきます。

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次に8pinソケットから取り外した、線路(左右)とモーター(+、−)を取り付けます。

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この状態で、一旦動作チェック。

配線作業は、とにかく1ステップごとに動作確認をしながら進めます。これを怠ると、問題があったときにどこでミスをしたか、わからなくなってしまいます。面倒でも丁寧に確認していくことが、成功への近道です。

電飾の工作

次に電飾に取り掛かります。電飾を細工する際の重要課題は、電飾とデコーダー間の配線をどのように取り回すかです。今回は

  • Firebox Fricker
  • Loco Lamp

の2つを取り付けるのですが、電飾を取り付ける場所は、いずれもデコーダーが乗っているシャーシではなく、外装側となります。つまり、電飾からの配線をデコーダーインタフェースに直接接続してしまうと、シャーシから外装を自由に取り外せなくなってしまいます。その後のサウンド化の作業はもとより、後々のメンテナンスの際に大きな障害になりそうです。

もちろん巷の製品でも同じ状況になるわけですが、外装とシャーシの間に配線はありません。多くの場合、外装とシャーシそれぞれに電気的な接点が作られ、外装を嵌め込むと接点が接触して導通するような仕組みになっています。

だったら、自分もそれを真似ればいいんじゃ?ということで、外装に電飾を取り付けた上で、さらに接点を加工して取り付ける方針でいくことにしました。

Firebox Fricker編

製品によくあるFirebox Frickerの構造は、焚き口付近にスモークプレートが埋め込んであって、後ろからLEDを光らせる構造になっています。

しかしそんな細工をする素材もスペースもないので、焚き口のところに直接1608のチップLEDを載せて光らせることにしました(黄矢印)。LEDは、模型電子部品ショップMSR橙色の配線済みのものを使用。

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配線はそのまま裏に貫通させて、0.2mm厚の燐青銅板を短冊上に切り出して作った接点に半田付け。U字に折り曲げて両面テープで固定します。

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点灯試験。

ちなみにチカチカしているのは、そういう回路を使っているのではなく、単に電源に使ったパワーパックの出力を上げ下げしているだけです(笑)。

Loco Lamp

さてお次は、待望のLoco Lampです。DCC Conceptsから出ているLoco Lamp用LEDを使いたかったのですが、これがずっとOut of Stockのままで再販される気配がないので、在庫のあるBrake Van用LEDで代替することにしました(正直どう違うのかわかってない...)。こいつはWhite, Redのどちらも光るスグレモノなのですが、今回はWhiteのみを結線して使います。成形色は黒なので、あらかじめ白く塗装しました(写真右)。

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英国蒸機のLoco Lampは、取り付け位置と組み合わせによって列車の種別や積み荷を表すルールがあります。

British Railways headlamp codes

今回は取り付けの簡便さと見た目重視で、バッファビーム上の左右に取り付ける形の"Express Passenger Train"の設定で進めます。

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まずランプ取り付けの突起モールドをカットします(黄矢印)。ピンバイスで床下方向に穴を開け、配線を通してからランプを瞬着で固定します。

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床下に回した配線の先に抵抗を取り付け、バッファビームの裏に収めます。

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さらにその先に、先ほどと同じ接点を半田付けして取り付け、両面テープで固定します。

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こちらも点灯試験。

ドイツの模型蒸機は大抵ランプが光っていて憧れだったのですが、ついに英国蒸機にランプを載せることができました!

シャーシへの接点取り付けと配線

続いてシャーシ側の配線と接点の工作を行います。

写真のようにF1 = Firebox Fricker, F2 = Loco Lampを割り当て、接点に向けて配線を伸ばします。Common+は3分配(Firebox Fricker, Loco Lamp, Stay-Alive)してあります(写真では白GNDに接続されていますが、これは間違い)。

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0.1mm厚の燐青銅板を切り出して接点を作成し配線の先に取り付け、それぞれ外装に取り付けた接点とコンタクトする位置に設置します。

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ここまできたら、外装を嵌め込んで走行試験。走行時の点灯に問題がないか、ショートが起きないかなどを十分に確認します。

試験には安価なlaisdccのデコーダーを使っています。トラブルでデコーダー損傷があっても金銭的被害が少なくて済むので、精神的被害も避けられます。

サウンド

最後にスピーカーとStay-Alive回路を取り付けます。あらかじめ配線を引き出しておいたので、取り付けは楽ちんでした。

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今回の作業の際に、TSKのツールクリッパーを導入してみたのですが、これはなかなかスグレモノでした。上の写真では、配線を半田付けする際に、部品を固定した木片をツールクリッパーで挟んで使っています。こうすることで、部品を自由な位置にもっていくことができ、作業効率が大幅に改善されます。まさに3本目の手として、工夫次第でいろいろ使い道はありそうです。

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完成!

ではいつものごとく、最後は動画でどうぞ。

たまたま買ったモデルが、テンダー式の大型蒸機でかつ本機側にデコーダーがあるという幸運に恵まれて、今年やりたいことの1つだった蒸機への電飾(特にLoco Lamp)が達成できました。燐青銅版を使って接点を作る経験値も得られたので、いろいろと応用できそうです。

こうなると、次はスモークに挑戦したいですねぇ。