「”ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する」(柴田優呼・作品者)

“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する――隠蔽されてきた日米共犯関係の原点

先日実家に立ち寄ったときに置かれていた本をみて興味を持ち図書館で借りて読了。一番印象に残ったのは、オーストラリア記者バーチェットが1945年9月3日、広島の広島逓信病院で取材を行ったときの一幕を書いた文だ。

病院でも、バーチェットはアメリカ人と思われ、犠牲者とその家族から「燃えるような憎悪」のまなざしを向けられた。看護婦の大半も死に絶えてしまったため、家族が看護するほかない状態で、家族のいない場合は入院すらできないという悲惨な状況だった。案内した勝部玄医師は、これ以上ここにいるなら命の保証はできない、とバーチェットに告げたという。
当時こうした厳しい対米感情があったことは、戦後の言説ではあまり取り上げられることはない。(中略)「敗戦を認めたくない」心情が日本社会に今も漂っているのは、こうした怒りと直接向き合わず、それを押し隠してきた、ということも一因ではないかという気もする。

僕らは無意識のうちにあの敗戦の日を境に大日本帝國と現在の日本国を分断して考えてしまうが、世界はあの日を境には何も変わっておらず、僕らが相変わらず大日本帝國の末裔であり、そのコンテキストの中で歩みを進めてきたと考えるべきなのだ。したたかな選択であったはずの戦後復興が、いつの間にか自分こそが世界秩序の従順な信奉者であるように錯覚するまでに至ったことに、もっと自覚的でなくてはならない。最近の言説を見ると、どうも自家中毒にかかってしまっているように感じる。世界はあなたが思うほどあなたのことを気にしていないし、わかってもくれない。それでも世界に問う価値のあるものとはなんだろうか。それこそが本当に考えることなのだと思う。

マジカルミライ2015武道館ライブ〜初音ミク8年間の軌跡を辿る旅

というわけで、熱狂のSnow MIKU Live 2015から7か月。マジカルミライ2015武道館ライブに参加してきました。9/4(金), 5(土)計3公演のうち、9/4夜公演と9/5昼公演の2公演、存分にミクさんのライブを堪能しました。

3月に今年のマジカルミライのライブ会場が日本武道館と発表されたとき、正直「そっちの方向なの?」と驚きというよりは戸惑いを感じずにはいられませんでした。初参加となったマジカルミライ2014東京公演で感じた肩すかし感(一体感の欠如)とその後のZepp SapporoのSnow MIKUライブで感じた強烈な一体感を比べるにつけ、あるいは伝説の大感謝祭がTOKYO DOME CITY HALLであったことを考えてみても、多くても2,000 - 3,000人の規模の箱でやることが、本当の意味でミクさんのライブの醍醐味を味わうために必要なのでは、と感じていたからです。それが一気に武道館?ただ「武道館」というネームバリューが欲しかっただけなのでは?とそんな邪推をしてみたくもなるニュースでした。

それから半年。期待と不安が交錯する中、待望の日はやってきました。

終わってみると、今回のライブは武道館抜きには考えられないし、武道館だからこそ結実したといってもいいライブでした。

なぜ「武道館」だったのか、なぜ「武道館」でなくてはならなかったのか。

その答えはとても簡単で、ミュージシャンにとって日本武道館が日本での舞台の頂点であり憧れの場所だから。だからそこを目指すのだと。もし8年前の黎明期のファンに今回の武道館公演のことを伝えたら、誰もがきっと信じない、夢の中でしか存在しなかったミクさんの武道館でのライブ。多くのPやファンやスタッフが頭の中で何度も何度も夢想した、今年のライブはその夢の具現に他ならなかったと思います。あの場に集った全員でその夢の具現に思いをぶつけたことが今回のライブを特異なものにした、「マジカルミライ」の名にふさわしい魔法の舞台でのライブでした。Wアンコールラスト「ハジメテノオト」大合唱はその一つの証。一生忘れないと思います。

また純粋なライブの内容として見た場合でも今回のライブはとても満足度の高いものでした。

セットリスト

今回のセットリストは現在から過去への遡りような流れがあり、ちょうど表題に書いた8年間の軌跡を思い描けるようなものになっていたと思います。

試しにセットリストに各曲の発表年とライブ新曲に★を入れてみました。見てわかるようにライブ新曲は前半に集中していて、リピート曲(定番曲)は後半に配置されています。また発表年も最近のものほど前半に置かれて、後半になってようやく2010年ぐらいの曲が顔を出してきます。▲はマジカルミライ以前のライブ曲ですが、後半でもさらに後ろの方に配置されていることがわかります。

  1. 「Tell Your World」livetune (2012)
  2. ラズベリー*モンスター」HoneyWorks (2013) ★
  3. 「はじめまして地球人さん」ピノキオピー (2015) ★
  4. 「独りんぼエンヴィー」koyori(電ポルP) (2012) ★
  5. 「恋愛裁判」40mP (2014) ★
  6. 「聖槍爆裂ボーイ」れるりり (2013) ★
  7. 「ロストワンの号哭」Neru (2013) ★
  8. 「リモコン」じーざす (ワンダフル☆オポチュニティ!) (2011) ★
  9. 「Nostalogic」yuukiss (2014) ★
  10. 「スノーマン」halyosy (2014) ★
  11. 「エンヴィキャットウォーク」トーマ (2011) ★
  12. 「深海少女」ゆうゆ (2012)
  13. 「Sweet Devil」八王子P (2010)
  14. 「二次元ドリームフィーバー」PolyphonicBranch (2012)
  15. キャットフードdoriko (2010)
  16. 「アンハッピーリフレイン」wowaka (2011)
  17. 「ロミオとシンデレラ」doriko (2010)▲
  18. 「glow」keeno (2010)
  19. 「愛Dee」Mitchie M (2012) ★
  20. Just Be Friends」Dixie Flatline (2010)▲
  21. 「shake it!」emon (2012)
  22. 「Packaged」livetune (2008) ★
  23. 「ワールドイズマイン」ryo(supercell) (2009)▲
  24. 「ODDS&ENDS」ryo(supercell) (2012)
  25. 「Hand in Hand」livetune (2015) ★
  26. 「39」sasakure.UK×DECO*27 (2012)
  27. 「ハジメテノオト」malo (2010)★▲


「Packaged」「ワールドイズマイン」と来たときには、まさかの「メルト」砲で締めか!と若干期待する向きもありましたが、そこは普通に「ODDS&ENDS」でしたね。前半に固められたせいか、思いのほかたくさん新曲が入った印象。どれも当たりだったように思います。

ちなみにマジカルミライ3年連続当選を果たしたのは「Tell Your World」「深海少女」「Sweet Devil」「キャットフード」「glow」「ODDS&ENDS」「39」あたり。ここいらが中興の祖として今後の定番曲の扱いになっていくのでしょうか。逆に2014新曲だった「ワンダーランドと羊の歌」「EARTH DAY」あたりが早くも落選したことで、今後再演がどこかであるのか気になるところです。

イントロ、曲間、追い出し

昨年のマジカルミライ2014で特に不満だったのが曲以外の部分(イントロ、曲間、追い出し)のおざなりさだったのですが、今年は十分な演出と配慮が感じられました。

イントロは最近定番となりつつあるMIKU EXPOの流れを踏襲(イントロ曲ボリューム上げからライブタイトルロゴ)し、曲間は短く観客を冷めさせない疾走っぷり。追い出しもWアンコール後にミクさんが何度も何度も手を振ってくれたし、その後テーマ曲「Hand In Hand」をフルコーラスで流してくれて余韻を味わうのに十分な時間を持つことができました。

MCが使い回しだったり、バンドメンバー紹介にミクさんが絡まないなどライブ演出として物足りないところもあるにですが、その分出来る限りたくさんの曲を入れるという方向性は個人的には好みです。

モーション、モジュール

今回のライブで唯一の難点をあげるとすれば、新規モジュールが皆無だったこと。ラズベリー・モンスターあたりはSEGAのDIVA Xプロモーションの流れから期待していたのですが、残念でした。その代わりモーションに関しては細かい調整が入っていたよううに思います。個人的には「はじめまして地球人さん」のコミカルな動きは、ミクさんのまた別の一面でありとても気に入りました。

会場

純粋な箱として見た場合の日本武道館は、収容人数のわりに舞台が近くて正直リピートしてくれないかなと思うくらい満足でした。アリーナはまずどこでも当たりと思っていい距離でしたし、スタンドも舞台の遠さを感じる場所は少なかったと思います。

ただ音響については事前に難ありということは聞いていたのですが、そちらはちょっと想像以上に難ありだったと思います。9/4夜公演のアリーナでは特に問題はなかったのですが、9/5昼公演の1F東ではミクさんの歌とバンドの演奏が明らかにタイミングがズレて聞こえたことが何回がありました。そのあと東京MXのライブ中継の録画で確認した限り特にずれているようには聞こえなかったので、やはりスピーカーの配置と箱の問題で何かが起きているような気がします。

あとやはり正面から見る場合と横から見る場合の臨場感の差はいかんともしがたいですね。おそらくA席でも南東、南、南西の方がS席の東、西よりもずっとよかったはずです。そろそろ視野角で席のランク(S,A)を決めて欲しい気がします。

その他

やっぱり初回公演はネタバレがなくていいですね。曲間の独特の緊張感と曲がわかったときのどよめきはまさにライブでないと味わえないものです。最終公演に人気が集中するのはわかるですが、それと同じぐらい初回公演はよいです。絶対オススメです。

おわりに

武道館公演を無事終えた「マジカルミライ」そしてミクさんライブの行方は誰にもわかりません。SEGAProject DIVAの販促イベントとしてはじまったミクさんライブは、その後のクリプトン主催のファンイベント「マジカルミライ」に再構成され、試行錯誤を繰り返して今年の武道館公演に至りました。ミクさんライブそのものが試行錯誤の産物であり初音ミクをめぐるカルチャーのドライバーであって欲しいと思います。なので、来年もぜひ武道館で!とは言いません。願わくは今度武道館に戻ってきたときにみんなで「ハジメテノオト」を唄い、今年の武道館公演からの軌跡をまた振り返ることができたら、なんてことをまた夢想しつつ次のライブもまた楽しみたいです。

2015 SNOW MIKU Live 備忘録


このエントリはSNOW MIKU Live 2015に参加してみて、

  1. 冬に
  2. 遠方にある
  3. オールスタンディングの
  4. ミクさんのライブ

に参加するとはどういうことか、備忘録的に書き記すものです。
僕自身はミクさんのライブはまだ2回目で、まだまだビギナーで大した経験はないのですが、今回のライブ参加にあたってかなーりアレコレ考えたので、今後同じようなミクさんライブが開催されたときに初めて参加するひとの助けになればと思います。

荷物どうするの?
今回一番勝手がわからなかったのはオールスタンディング。コンサート自体はアレコレ参加してきましたが、オールスタンディングのライブは初でした。
一番悩んだのは荷物問題。
オールスタンディングということは座席に荷物を置くってわけにいかないので、基本的に荷物は全部身につけるか会場のロッカーに押し込むしかないのです。Zepp Sapporoウェブサイトやらアレコレ調べても全員分ロッカーが用意されているわけではなさそう。基本的には手ぶらで入れればベストなのですが、上着はどうしても荷物になる。さすがに北海道の冬場でTシャツ1枚で開場待ちとかありえないので、いったいどうすれば?的な感じでした。
考えた対策としては3つ。

  • 会場の近くに宿を取る。これで大きな荷物は全部預けられるか部屋に放り込めるはず。
  • 腰に付けられるバックを持っていって、最悪ロッカーが空いてない場合はその中に上着を押し込められるようにする。
  • それでも荷物は最小限にしてなるべく身軽な格好で並ぶ。

結果的にはどれもやってよかったです。

宿はZepp Sapporoから徒歩圏(というか至近)のホテルを探しました。一番近い(ほぼ隣)なのが札幌エクセルホテル東急ですが、今回はその通り向かいのチサングランド札幌に泊まりました。
ライブ会場でも一部グッズ販売をしているとのことだったので、1回目の昼公演開場よりちょっと早めに会場到着して事前グッズ販売に並びました。幸い列は大したことはなくて10分もかからずお目当てを回収し、そのまま荷物を持って歩いてホテルへ。ロビーで荷物整理して公演モードにスイッチして要らない荷物をフロントに預け、そのまま会場の待機列へ並ぶことができました。グッズで売っているショッピングバックはかなりでかいので、ライブ会場のロッカーには収まりません。その意味でも会場から徒歩圏に宿があるのは理想です。昼公演と夜公演の間に休めたりもしますしね。

さて会場内のロッカー問題ですが、結果としてZepp Sapporoの場合においては会場内のロッカーは全部埋まらないように思いました。もちろん整理番号が若くて早めに入場できる場合はまず心配いらないと思いますが、後のほうでも結構大丈夫でした。というのも、整理番号が若いひとはガチで前列を取りに行くので、結果的にロッカーには目もくれずフロアにいくと思われ、僕は整理番号がかなりオシマイのほうだった(Bから始まる整理番号)にも関わらず空いてました。
ただロッカーはかなり小さく、小さなカバンかリュックサックがやっと入るぐらいの大きさで、コートだとたたんで入れるだけでいっぱいになってしまうと思います。キャリーとかは論外。大きな荷物はやはり会場外のコインロッカーなどに入れるしかないです。実際ショッピングバッグとかキャリーを会場に持ち込んでるひとは多く見かけました(ちょっと邪魔....)。会場近辺はZeppSapporo以外だと中島公園駅改札前に少しコインロッカーがあるぐらいなので、荷物を持って現地にくるともう会場に持って入るしかなくなるので注意です。
ロッカーを使う場合の注意としては、動線として「入場→ロッカーに荷物預ける→フロア」という感じになるので、後の整理番号のひとがその間もどんどんフロアに入っていきます。本当にいい場所を取りたかったらロッカーは諦めるしかありません。今回は1回目昼公演はロッカーを使いましたが、2回目夜公演は明らかにひとが多い感じだったのでロッカーはパスして、腰に付けたバッグに上着を押し込みました。基本的にはそんなにあわてなくても、荷物は全部身につけられる身軽さがあればそこそこの場所には行けるので、とにかく荷物は少なくを心がけましょう。

整列から入場まで

オールスタンディングの場合、チケットに書かれているのは整理番号だけです。今回のZeppSapporoの場合、整理番号はAから始まるものとBから始まるものの2種類あり、A1〜→B1〜の順で入場します。開場近くなると基本的に整理番号順に列を作ってならびます。Aの若い番号から順に会場横に列を作りますが、Aの後ろの番号とBは会場近くの川沿いの道に列を作ります。入り口に列の待機場所が掲示されるので自分の整理番号を見てどの列に並べばいいかを確認しましょう。
今回は列形成に関してコンサートスタッフからほとんど指示がなかったので、結果として並んでいるひと同士で番号を教え合って自分の並ぶ場所を見つける状態...。会場入り口でも番号呼び出しなく並んだ列のまま入場だったのですが、たまたま今回がそうだっただけなのかもしれません。ともかく開場時間がくると整理番号順に入場が始まるので、特に整理番号が前の方のチケットが手に入った場合は開場時間までには会場に来ないと、せっかく早く入れるのがもったいない!ということになります。
さていよいよ入場。チケットを切るところでとドリンク代500円を払います。お釣りもくれますが、後ろで待っているひとのことも考えて小銭を用意しておく方がいいでしょう。このときにドリンク引き換え用のコインをくれます。ドリンク(ペットボトルです)は終演後も引き換えられるので、オススメは公演中の水分補給用のドリンクはあらかじめ買っておいて、引き換えは終演後にするとドリンク引き換えの列をパスできます。ドリンクと一緒にドリンクホルダー(ペットボトルを腰から下げられるもの)をくれるので、持っていない場合は先にもらうといいかもです。
ここでロッカーを使う場合はロッカー室へ。ロッカーで100円玉がいるのでその用意も忘れずに。あとトイレも済ませましょう。一度フロアに入ると終演まで出られないと思った方がいいです。準備ができたらいざフロアへ!

どこで見る?
今回は参加した2公演ともに整理番号Bから始まるチケットだったので、フロア左手の扉から中に入るともうすでにぎっしりという感じでお客さんが立っていました。さぁどうする?このままだと壁際から見ることになってしまう!僕はマジカルミライ2014のスタンド席でミクさんを横からみることになりかなり悲しい思いをした(いかにもスクリーンに映してます風に見えた)ので、正面から見られる場所に移動すべくひとの隙間でかき分けられそうなところを探しました。
さすがに舞台に近い方はどこから入るの?って感じだったので、フロアの真ん中からやや後方で中に向かって通れそうな場所を探しました。結構床に荷物を置いているひとが多く、その荷物で出来た隙間から荷物をまたぐ形で中へ。しばらく進んでこの辺で止まっても大丈夫かな?という場所を確保。結果的に1公演目はほぼ真ん中PA席の前あたり、2公演目は昼公演よりも前方のこれもほぼ正面に行くことができました。やっぱり正面はいい!存在感が圧倒的です。個人的には舞台近くで斜めから見るよりは、やや後ろでも正面から見たほうが「そこにいるミクさん」を感じられるのでは!と思います。荷物が少なければ少ないほど身軽に入れて場所も見つけやすいので、整理番号が後ろでも諦めることなく場所探しをしましょう。
スタンディングの場合に避けられないのが、前に背の高いひとがいると見えない問題。僕は身長165cmで決して背の高いほうではないので、前方になるべく背の高いひとがいるところを避けつつ場所取り。おかげでなんとか「時々隠れるのはしょうがないかな」ぐらいの感じでは見ることができましした。もちろん腰から下はほぼ見えないですけどね。オールスタンディングだと後から後から人が入ってきて詰められちゃうので、一旦「ここがいいかも!」と思って確保した場所でも、前に背の高いひとが入ってきて「うわーん」ってなっちゃう難しさはあります。やっぱりお顔も見られないっていうのは悲しいものがありますよね...。Zepp Sapporoは後方のPA席の両端だけが床が少し高くなっているだけで、あとは完全にフラット。スロープや段差をつけると逆に危ないという事情も理解はできるんですけどね。「秘密警察」でミクさんが台の上に登って歌う演出のところは足までしっかりと見えたので、ずっと台の上で歌ってくれればよかったのかも...。

公演回で雰囲気が違うんです
今回のライブは2日間昼夜の計4公演行われて、僕は1日目の昼夜の2公演に参加しました。昨年のマジカルミライ2014東京公演がミクさんライブ初参加で、そのときは昼公演に参加したのですが、参加している年齢層が全体的に低い(未成年の方も多かったと思います)ので、BDで見ていたようなコンサートと比べておとなしめな印象を受けました。後から話を聞くと夜公演はそうでもなかったようで、これは是非とも夜公演に行かねば!ということで、まずは夜公演のチケットを確保を目指しました。夜公演は1日目、2日目とあり、なんとなく2日目の最終公演のほうが盛り上がるのではという気がしたのですが、コンサートが終わってからでは東京行きの飛行機に間に合わないので、1日目を選択。結果的に多くのひとが同じ状況だったと思われ、1日目(3/7)夜のチケットは最終的に売り切れてました。で、どうせ行くならもう1公演見たいよねってことで、1日目夜の本命に備える偵察の意味も込めて、前哨戦として1日目昼のチケットも確保しました。結果的にこの2公演に参加したことで、各公演回の雰囲気の違いのようなものがわかりとても面白かったです。
まずは昼公演。この回は今回のライブの初回公演にあたります。この初回公演の面白いところは、お客さんの誰もセットリストを知らないところです。曲が終わるたびに「次は何の曲かな〜」というワクワク感があり、お気に入りの曲が来た時の盛り上がりは他の回にはない独特の雰囲気がありました。特に今回のコンサートは、アンコールで雪ミク2015のコロボックル衣装を身にまとったミクさんの登場からの新曲「Snow Fairy Story」お披露目、そしてダブルアンコールのDX7弾き語りによる「星のカケラ」と、最後のサプライズ2連続でとても満足感が高かったです。2回目以降は当然連続参加しているひとはセットリストがわかっているある意味「ネタバレ」状態なので、どうしても驚きの感じは薄れます。なので初回公演は絶対のオススメです!また昼公演は当日券が出ていたぐらいで、夜公演ほどのぎゅうぎゅう感はなく見やすかったので、落ち着いてみるには昼公演、という選択は悪くないと思います。
そして夜公演。やはり本命回なだけあって、待機列からみんなワイワイがやがや。公演開始前もスクリーンに映し出される映像に合わせて「ロート製薬大合唱」「サンキュッコール」「おひめさまコール」とミクさんラヴオーラ全開。公演中も昼公演に比べて一体感が半端なく、いつまでも続いて欲しい、正に夢の時間でした。
オールスタンディングで1日2公演連続参加は正直体力が持つかどうかちょっと心配してたのですが、案ずるより産むが易し。2回目の夜公演では、セットリストがわかっているので、曲目によってペンライトを振るのを控えめにしてじっくり聴くようなこともやってみました。「ロミオとシンデレラ」で涙がこぼれたのは自分でも意外でした。すごく思い入れがある曲ってわけでもないのに、じっと聞いているだけで涙が出るんです。もちろんペンライトを振るのもそれはそれで醍醐味なのですけど、楽しみ方はいろいろです。時間と財布に余裕があれば是非複数回公演に参加することをオススメします。いつもとちがう楽しみがきっと見つかるはずです。

終わりに
ずいぶん長々と書いてきてしまいましたが、この長さがある意味今回のライブの体験の濃さそのものなのです。百聞は一見にしかず。幸か不幸かミクさんファンになった方は、一度はライブへ足を運んでみてください。忘れられない時間が待っています。次は是非コンサート会場でお会いしましょう!

初音ミク公式ブログ http://blog.piapro.net/

「日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」(NHKスペシャル取材班・新潮社)「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四〇〇時間の証言より」(半藤 一利、 澤地 久枝、戸高 一成・岩波書店)

日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より

出張のフライトの行き帰りで「日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四〇〇時間の証言より」を読了。ちょうど前回の読書日記で触れた渡辺清氏の著書「海の城」「戦艦武蔵の最期」を読んで日本海軍関係の本をもう少し読んでみたいと思っていたところ、昔NHKスペシャル海軍反省会に関する番組を見たことを思い出し、関連本で出ているなら読んでみたいと図書館から借りてきました。(ちなみにNHKスペシャルの感想はこちら。)

日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」は、同タイトルのNHKスペシャルの取材班が書いたものですが、いわゆる番組内容の書籍化ではなく、番組を作成するにあたっての取材・制作過程およびその後のドキュメンタリーになっていて、番組を見たひとにも改めて一段深い情報を提供する内容だったのがとてもよかったです。海軍関係者への取材を通じて、海軍関係者が胸に抱く怒り、戸惑い、葛藤を取材班自身がもう一度なぞる形で番組として結実していく過程は、出来上がった番組以上に惹かれるものがありました。
もう一冊「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四〇〇時間の証言より」は、放映後の反響を受け、今後につなぐ形での議論を半藤一利澤地久枝戸高一成の三氏の鼎談という形でまとめたものでした。特に半藤氏や澤地氏はそれぞれ固有の戦争体験があり、その実体験を踏まえて海軍反省会という題材を前にしたとき、改めて歴史を受け継ぐとはどういうことかについてお二人が思いを巡らしているのが印象に残りました。

日本海軍がどうであったかというのは、半藤氏の「海軍は幹部が二千人ほどの会社である、そういう規模の会社だと思えばいいんですよ。」という発言で、ほぼ了承できてしまうと思います。番組のタイトルにある「海軍あって国家なし」「やましき沈黙」「第二の戦争(戦犯裁判)」は、いずれも会社組織であったとすれば、さして特別なことではないはずです。NHKスペシャルではそれを今もなお巣くう自分たち自身の問題として語りかけるスタンスをとっていました。ただ僕がこれに加えて思うことは、いま日本という国全体が「会社化」していて、決して当時反響があった組織に属して働いている30代40代のサラリーマンが主に直面する問題なのではなく、もっと幅広い階層のありとあらゆる場面で起きつつあることだと思うのです。この「会社化」のロジックについては、僕はまだ理解をし得てないのですが、行く行くは今後の読書の大きなテーマになるような気がしています。

「敗北を抱きしめて」(ジョン・ダワー/岩波書店)「砕かれた神 ある復員兵の手記」(渡辺清・岩波書店)

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人砕かれた神―ある復員兵の手記 (岩波現代文庫)

まだまだ読むべき本はたくさんある。そうして旅を続ければ出会うべき本には出会うことができる。

ジョン・ダワー氏の大著「敗北を抱きしめて」は、僕にまた新しい刺激をもたらすものでした。またこの本で引用されていた渡辺清氏による「砕かれた神」も素晴らしかった。元海軍兵卒である彼の天皇に対する対峙の仕方も然ることながら、その豊かな筆致で書かれた農村の生活に魅了されました。彼が様々な本を読みながらその世界を広げて行く様は、何よりの救いのように感じたのです。おそらく彼のようなひとは特別ではない。しかし結果として続いてきた戦後日本の歩みのギャップに慄然とせざるを得ない。

日本の戦後システムのうち、当然崩壊すべくして崩壊しつつある部分とともに、非軍事化と民主主義という目標も今や捨て去られようとしている。敗北の教訓と遺産は多く、また多様である。そしてそれらの終焉はまだ視界に入ってはいない。(「敗北を抱きしめて(下)」エピローグより)

日本国憲法第9条とは何なのかを自分の頭で考えたい。2007年から少しずつ続けてきた旅はまだ道半ばです。

「『国家主権』という思想」(篠田英朗・勁草書房)

「国家主権」という思想―国際立憲主義への軌跡

集団的自衛権。いま安倍政権がやろうとしている真の意図は何なのか。それはアメリカ、アジア諸国をはじめ、国際関係にどう影響するのか。表層的な議論を鵜呑みにするのではなく自分の頭で考えたい。と思っていたところ、2014年6月1日付朝日新聞朝刊の「ニュースの本棚」という欄で、篠田英朗(東京外国語大教授(国際関係論))というひと書いた「集団的自衛権国際法」という寄稿に出会いました。

第三国が集団的自衛権を発動するにあたっては、攻撃された国を支援することが第一であり、次に発動が必要性と均衡性の範囲内にあることが要件になる。もちろん政策論として、支援する国の関心がかかわるのが当然である。しかし国際法上は支援国の国益は、集団的自衛権を支える論点にはならない。
「日本国民を助けるために米国に協力する」という議論は、集団的自衛権の正当化としては、本来副次的なものでしかない。

ですよねー。ちなみにこの記事を読む前に安保法制懇の報告書も読んでみたのですが、僕が気になったのは以下の部分

集団的自衛権を実際に行使するには、事前又は事後の国会承認を必要とすべきである。行使については、内閣総理大臣の主導の下、国家安全保障会議の議を経るべきであり、内閣として閣議決定により意思決定する必要があるが、集団的自衛権は権利であって義務ではないため、政策的判断の結果、行使しないことがあるのは当然である。

「集団的自衛権は権利であって義務ではない」、つまり日本がイヤと思えば集団的自衛権を行使しない、対象国を助けに行かないということなのですが、そんなことを言っている国と集団的自衛権に基づいた相互役務を含む取り決めを結ぶわけないので、実際には「政策的判断」に「支援国の国益」が含まれる場合ばかりではないのでは、と思いました。そこへ件の記事を読んだものですから、ああやっぱり自分の疑問はヘンじゃなかった、と腑に落ちたわけです。

で、ここからが本題。ならばもっと理解を深めるためにまずは篠田英朗氏の著作を読んでみようと、最近の代表的な著作「『国家主権』という思想」を読んでみました。が、これが中身はほとんど論文に近くて、通勤の行き帰りに読むのは本当に骨が折れました。後半はやや挫折。この本で初めて「国際関係学」って学問分野が何をしているのかに触れた(笑)というひとにとっては荷が重かったです。

ただ今回の一件でよく言われる「『立憲主義』への挑戦」とはどういうことなのか、多少なりとも理解できたように思います。また日本国憲法の三大原則のひとつである「国民主権」について、その言葉自体は小学生でも習うことですが、「主権」(sovereignty)とは一体何であるかについては、その後の教育でもあまり深くは触れられてなくてちょっと残念だと思いました。「立憲主義」的に考えれば、国民投票法も非常に危うい存在。究極的に人は信用ならないものである、法律の方がまだマシという考えは、過去の歴史を振り返ればあながち間違っちゃいない歴史的教訓なわけで。勉強になりました。

「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史: 3 帝国の緩やかな黄昏

どうしてこの本を読もうと思ったのか、自分でもよくわからない。

ここ 2, 3 年、以前よりもずっとクロースにUSのひとたちと仕事をするようになり、仕事上の価値観が共有されていく一方で、仕事以外の普段の暮らしの差異が気になるようになってきた。出張の帰りの飛行機の窓からやがて着陸する日本の町を眺めるたびに、そのことを実感させられる。「ああ、あそことは違う国に帰ってきた」と。ただ僕はUSで暮らしたことがないので、その実感(憧れというべきか)はおそらく事実とはかけ離れた妄想であることは否めない。まがりなりにもUSマーケットの売り上げで食べさせてもらっている身としては、せめてその妄想を少しでも地に足がついたものになるよう、免罪符のようなものとしてこの本を読んだんだと思う。

この本の内容をやや乱暴に一言でまとめるとすると、アメリカ大統領制には光と影があって、そんなにうまくいっていないこと、そして日本人が「戦後」と称している第2次世界大戦後の世界は、20世紀が始まった100年前、つまり「戦前」とそんなに変わらない、ということになるだろうか。
日本の政治家、ひいては内閣総理大臣が相当の人材難であろうことは、近年の変わり方を見れば一目瞭然なのだけど、世界の政治のトップともいうべきアメリカ大統領だって、たいして恵まれているわけはなさそうである。しかも下手に権限がある分、うまくいかない時の悩みだって相当のものだ。日本でも政治の停滞を解消すべく、首相にアメリカの大統領なみの権限を持たせるべきというような主張があるけども、アメリカの例を考えると、最悪首相がトンデモないやつだったとしても国としてクラッシュしないような仕組みにしておく方が、国の仕組みとしてはよっぽどロバストであると思う。

アルゴ [DVD]

この本を読んだあと、気になってイランのアメリカ大使館人質事件を題材にした映画「アルゴ」を観なおしてみたのだけど、読む前と読んだあとでは全くと言っていいほど印象が変わってしまった。もちろんカナダ大使館に身を寄せた6人の悲劇性には映画のストーリーとしては一定の説得力を持つのだけども、史実としてそれまでイランに対してアメリカがしてきたことを天秤にかけられるのであれば、そこに全く同情の余地はないと思えるのだった。その一方で、映画中盤、CIAの兄ちゃんとその6人が映画クルーを装ってバザールにロケハンに出かけたとき、アメリカの武器で息子を殺されたと主張する店の亭主が叫ぶあの想いは、映画のなかでは全く救われない。まぁよくこういうものを臆面もなく映画にしてしまうよな、と若干あきれる気がする。唯一の救いは、主人公が家に持ち帰った偽映画「ARGO」のストーリーボードが、父が息子を助ける場面が描かれたものだったこと。それが、主人公本人の救われなさ(家族と離れ、彼が命をかけて手がけた救出劇は帰国後に闇に葬られた)と、あのバザールの亭主の救われなさをせめてつなぎ止めるものだった、と勝手に妄想するよりほかない。

オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」は3巻セットの長丁場だけど、ベトナム戦争が終わる2巻ぐらいまでは面白かったので、そこまではオススメです。