2年ぶりの参加となったマジカルミライ2021ーそのライブの開演の時。
いつもどおりBGMのヴォリュームが一気に上がり、客電が落ちる。一斉に立ち上がる観客。手にした色とりどりのペンライトがさざなみのごとく広がります。
そして舞い上がるスモークの中、オープニングを飾る音楽とともにレーザー照明が広い会場を貫きました。その瞬間、僕は泣いていました。
ミクさんの歌声どころか、ミクさんも登場していないのに。何に対して泣いているのか、自分でもよくわかりませんでした。でもライブが進むに連れ、それは何なのかわかったのです。
人の声。歓声。
しかしよく考えると、このライブは誰も発声していないのです。観客は、新型コロナ(COVID-19)感染症予防対策として、マスク着用の上発声することは禁じられています。唯一声を出しているボーカロイドたちも、もちろん生身の人間ではなく電子的に造られた声なわけで。
それでも。それでも。
観客が振るペンライトはいつも通りに揺れていて。会場に居る誰もが、その心の中ではっきりとコールや歓声が聞こえていると言わんばかりに揺れているのです。「METEOR」のコールも、未だ聞かれぬ「愛されなくても君がいる」のコールも、バンドメンバーへの声援も。その声が聞こえるたびに、僕は何度も泣いていました。
この2年間失われていたもの。それは別にライブだけではなくて、普段の生活からも失われていたものかもしれません。今日マジカルミライのライブは、その「声」を聞く装置として完全に機能していました。失くしていたものを教えてくれたのです。本当にありがとうございました。