生まれてしまった命と生み出した命の格闘

楽しいライブだった。これが今年のマジカルミライ2019のライブが終わったときの偽らざる感想だった。

f:id:giovanni_ihatov:20190831190126j:plain

今までのマジカルミライのライブだと、涙が止まらなくなるようなそんな心を揺さぶられる曲があったとか、セトリに関してアレコレ言いたくなるのが常なのだけど、今回は不思議とそういう気分ではなかった。ただ楽しかった。

もちろん巡音ルカさんの10周年コーナーがあったり、WOWAKAさんの追悼曲があったりと、マジカルミライ2019を特徴付ける内容はあったのだけど、日替わり曲もじゃんじゃん入るようになって、いままで「もうこれ以外は考えられない吟味に吟味を重ねた神セトリ」みたいな感じで気を張り詰めて全裸待機していたところがすっと抜けて、「まあライブなんて一期一会だし、今日は今日で楽しみましょ」ぐらいの気持ちの変化があった。うん、これは初音ミクのライブが特別なものではなくなったということなんだと思う。日本で年2回(マジカルミライ、Snow Miku)に海外公演(MIKU EXPO)。2014年に初めてマジカルミライのライブに行ったときは、もう来年はないかもしれないので一生の思い出に、ぐらいの気分だったのにね(ほんとに当時はそんな感じだった... いつまで続くかなんて誰もわからなかったから)。いまは誰も来年マジカルミライがあることを疑わないでしょ?

そんな特別でなくなった初音ミクのライブだけど、それでもマジカルミライが特別なのはテーマ曲とコンテスト曲が生み出す初音ミクとボカロPの格闘が見られることなのだと思う。特にここ2年はその印象が強い。昨年「グリーンライツ・セレナーデ」を捧げたOmoiさん、今年「Bless Your Breath」を捧げた和田たけあきさん。どちらもその年の企画展ステージのライブでテーマ曲をやったのだけど、ボカロPの「あの女」(by 和田たけあき)に対する想いに触れると、ライブの景色はまったく違って見えるのだ。初音ミクはアンコールラストで爆上げの観客を前に、ボカロPの想いなんて露も知らないふりをしてテーマ曲をさらりと歌い上げる。特に今年なんて、自分のしでかしたボカロPに対する仕打ちが延々と歌詞につづられているのだけど、それを平然と歌う初音ミクにバケモノじみた恐ろしささえ感じてしまう。そうか、和田たけあきがインドネシアのMIKU EXPOで感じたものはこれだったのか。その一方でDIVELAさんの「METEOR」や森羅さんの「ある計画は今も密かに」のようにグランプリ曲の場面では、「うちのミク」(by DIVELA)が大舞台に立つのを見守るボカロPの心境に思いを馳せずにはいられないのだ。僕ら初音ミクのファンがそんなボカロPと初音ミクを巡る悲喜こもごもに少しだけ参加させてもらえる場、それがマジカルミライだと思う。

f:id:giovanni_ihatov:20190831192137j:plain

ツイッターにも上げたけど、この何の変哲もない幕張メッセの写真が僕の今年のマジカルミライを象徴する一枚です。大きな壁の向こうの舞台で生まれてしまった命がライブをし、手前の小さな舞台でそれを生み出した命がライブをする。この2つがあってマジカルミライ 。歩き出してまた来年ここで会えることを祈って。