Z21と統括制御(Consisting)

今回は新しく買ったZ21と統括制御(Consisting)のお話です。

新しいコマンドステーション

このブログでは紹介していなかったですが、昨年秋に新しいコマンドステーションRoco FlieschmannのZ21を導入しました。

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DCCコマンドステーションはこれまでKATOのD102Desktop StationのDSAir2と使ってきたのですが、複数車両の同時制御やファンクション機能の呼び出しがやりづらいこともあって、新しいコマンドステーションの購入を検討していました。

Twitterでやり取りさせていただいている海外鉄道模型界隈の皆さんのコメントから、候補として

の2つが挙がりました。

ECos2はタッチパネルLCDとダイヤル式の物理コントローラーが一体となっていて、見た目のカッコ良さは図抜けています。デザインはMarklinのCentral Stationと並んで、デスクトップスタイルのDCCコマンドステーションとしては確立されたものでしょう。もちろんデザインだけでなく、長年に渡るファームウェアバージョンアップにより最新機能への対応と安定性もあるとのこと。

一方のZ21はセットトップボックスのようなただの黒箱で、コントローラーはネットワーク接続によるスマートフォンタブレットか別売の物理コントローラーを使います。

どちらもDCCあるいはMarklin Digitalが主流の欧州で多くのユーザーを抱えていて、機能でどちらかよいかを決めるのは難しそうでした。ただこの2つは、見てくれからしても大きく設計思想が異なるのがわかります。絶対的な正解はなく、どちらがより自分の用途や好みに合っているかということになります。

個人的にはDSAir2のように、コマンドステーションとコントローラーを切り離してアプリ側に機能を持たせているZ21のほうが好み。ユーザーインタフェースとして汎用デバイスであるスマートフォンタブレットを使うのはイマドキで、アプリの作り(メニューや操作性など)も汎用的であることが期待できます(呪文のようなバッドノウハウが少ないはず)。

www.z21.eu

ただ最終的には実際に使っているひとの声が聴きたい!

そんなところ、ちょうど昨年夏のJAMのときにTwitterでやりとりさせていただいている方とオフ会をする機会がありました。ラディさんとネレトーさんはZ21ユーザーで、実際にお話を聞いて、アプリの操作もデモしていただき、これで一安心。晴れてZ21の導入と相成りました。

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統括制御(Consisting)

Z21のセットアップについては、それこそ先人の方が懇切丁寧な解説ブログを載せてくださっているのでそちらにお任せするとして(すみません、サボりました...)、Z21を使ったひとつの遊び方の紹介をしたいと思います。

Z21を購入して是非ともやってみたかったことのひとつが統括制御(Consisting)です。

統括制御によって、例えばDouble Headerの編成や

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Steam Engine牽引の列車の後ろにDiesel Engineを連結する編成

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また形式の異なるDMUを併結する編成など

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手持ちのDCCデコーダー搭載車両を複数組み合わせてコントロールすることで、遊びの幅を広げることができます。またDCCサウンド機の組み合わせであれば、音源が複数になることで実車さながらの迫力且つ複雑な音の重なりを楽しむこともできます。

DCCで複数の車両を協調して動作させるには、大きく分けて2つの方法があります。

  1. 対象となる車両に同じアドレスを割り当てる
    この場合、同じアドレスを持つすべての車両に対して全く同じコマンド(進行方向、スピードステップ、ファンクション等)が送信されます。最も手軽な方法ですが、当然個別の制御はできないので、同一形式の重連など基本的に同一のスピードテーブル、ファンクション設定を持ったデコーダーを利用する場合に限られると思います。また個別動作させたい場合、協調動作させたい場合で、それぞれ都度アドレス設定の変更が必要になります。
  1. DCCコマンドステーションが持つ統括制御(Consisting)機能を利用する
    DCCコマンドステーションには、複数のアドレスの車両に対して統括制御を行う仕組みが用意されています。Z21にもその機能がありますが、Z21が持つユニークな機能として後述する統括制御時の簡易スピード調整機能が挙げられます。

Z21での手順

以下、具体的にZ21で統括制御を行う手順を見ていきたいと思います。

  1. 個別の車両を登録する
    まずは通常通り車両単体の登録を行います。

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  1. 統括制御を行う「列車」を新規に登録する
    次にメニュー"Vehicles"から新規に車両追加を行います。その際、種類は"Train"を選択します。

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    すると以下のような画面が現れます。

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    ここで画面右下の+ボタンから統括制御を行う対象の車両を既存の車両リストの中から選択、追加します。例では2両のタンク式機関車 Class 42xx と Class 45xx を追加してみました。

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  1. 列車を選択して運転する
    メニュー"Steering"から先ほど登録した「列車」を選択します。

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    すると以下のような画面表示になります。個別の車両の時にはなかった車両選択パネルが追加されています。選択された車両によって左側のファンクションパネルが更新されます。

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    これにより車両個別にファンクション機能を呼び出すことができます。一方で右側の進行方向選択とスピード指示は車両の選択とは無関係に共通となっています。

このようにZ21では「列車」を登録、選択することで統括制御機能が使えるようになっており、非常にシンプルかつ使いやすいインタフェースだと思います。

 簡易速度調整機能

次にZ21の統括制御時の簡易速度調整機能について見ていきたいと思います。

DCCでは指示されたスピードステップに対して実際にどの程度の速度で走るかは、各車両の設計やデコーダーのスピードテーブル設定の範疇なので、同じスピードステップでも車両によってモーターや駆動装置が異なったり、デコーダーのスピードテーブルの設定が異なれば当然違う速度で走ることになります。統括制御対象の車両ごとの速度差が大きければ車輪の空転や脱線などが発生する可能性があり、運転時に大きな支障となります。

Z21では、この問題に対してあらかじめ個別の車両の速度を計測、入力しておくことで、「列車」として統括制御する際の車両間の速度を簡易的に調整する機能があります。

アプリ上の説明文にはこう書かれています(若干意訳してます)。

The tranction settings are used for the multitraction. For having all locos within a single train move with the same speed, value can be entered here (the time it takes a single loco to compelete a line with a certain regulation step)

ラクション設定は重連のために使われます。単一の「列車」に登録したすべての車両を同じ速度で走らせるためには、ここに値(ある車両があるスピードステップで決まった線路を走るときにかかる時間)を入力してください。

If no traction settings are provided, the same regulations seteps will be sent. In doing so it is not guaranteed that all loco moves with the same speed (because of different design, decorder settings, ...) 

もしトラクション設定がない場合、同じスピードステップが「列車」の各車両に対して送られます。

その場合、すべての車両が同じ速度で動くことは保証できません(設計の違いやデコーダー設定によります)。

先ほど説明した統括制御の際の速度差について、Z21では車両の実際の速度情報をZ21(アプリ)に登録することにより、「列車」の各車両に対して調整されたスピードステップを個別に送信することができるようです(実際に出力されたコマンドを覗き見たわけではないので、あくまで推定)。このトラクション設定をすべての車両に登録すれば、理論的には速度差の問題を気にせずに統括制御したい車両を自由に編成することが期待できます。

 トラクション設定

それでは実際にトラクション設定のやり方についてみていきます。 

アプリの説明にあったように、車両の速度の計測は一定の区間を走らせた時刻を計測することで行います。走らせる長さに特に指示はないようなのですが、あまり極端に短いとストップウォッチでの手動計測で正確性を出すのが難しいので避けたほうがよいでしょう。長すぎると特に低速時の測定に時間がかかってしまうので、周回レイアウト上で計測しやすい適当な区間を見つけて決めるのがよいと思います。

 じょばんにの場合は周回本線の直線部分の端から端まで(ユニトラックS246x5本分=1,230mm)を計測区間としました(下記写真の緑矢印の部分)。

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測定区間が決まったら実際に車両を走らせて測定します。計測はスピードステップごとに行う必要がありますが、ここで問題なのは何パターン(ステップ)ぐらい計測、入力すればよいのかということです。おそらく細かく入力すればより細かく調整されることが期待できますが、適当に補完されることを期待して、まずは 5, 10, 20, 30, 40, 50 の6段階を計測してみました。

 メニュー"Vehicles"から対象の車両を選んで"Traction"タブを選択すると、"Time Capture"という欄が表示されます。右下の+ボタンで測定に用いたスピードステップと測定区間を走るのにかかった時間(秒)を入力します。これを「列車」に登録された車両分行います。

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Class 42xx と Class 45xx の計測結果は以下の通りです。Class 42xxのほうが値が大きく(つまり速度が遅い)、随分と速度差があることが見て取れます。

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これで一度試走させてみます。

結果は御覧のとおり残念な結果となりました。一応指示された通りやってみたつもりですが、何かが足りないようです。

そこで以下の2点を修正してみました。

  1. 計測のスピードステップの見直し
    計測対称のスピードステップに最小1, 最高126を加え、その間を対数的に等間隔にとって 1, 8, 16, 32, 64, 126 の6段階としました。
  1. 車両間の速度差の調整
    Class 42xx の低速域の立ち上がりが非常に遅いので、Start Voltageである CV2 の値を大きくして Class 45xx との速度差をなるべく少なくするようにしてみました。

こちらが修正後のトラクション設定です。

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まだ42xxの方が遅いですが、その差はかなり小さくなりました。再び試走です。今度は複線でそれぞれ同一方向に走らせて速度差が見られるようにしてみました。

多少の速度差はありそうですが、大きく改善されています。もちろんすべてのスピードステップで完全に合っているわけではありませんが、重連の運行には支障がないレベルと判断しました。それではいよいよ本番!

よさそうです!Steam Engineのロッドの動きや、音の重なりなど、見ても聴いても楽しいですね。まだまだいろいろとやりたい編成はあるので、そのうち続編を作ってみたいと思います。