車庫改修プロジェクト(その3)

その3ではストラクチャー残り2つを紹介します。

燃料タンク

「給油所を作るなら車庫のどこかに燃料タンクが要るでしょ」ってことで、前回の給油所と同じKnightwing Models Internationalのプラキットを組みました。

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円筒型のタンクと配管パーツが2セットに、階段付き足場が付属しています。まずは仮組みをして全体の雰囲気を見ます。タンクの長さは、組み合わせる輪切り状の部品を増減させることによって調整できます。車庫の場所も狭いので、少し短めのタンクとしました。

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今回も細かいパーツが多いので、タンクと階段、足場を組んだところでパーツごとに塗装を進めます。塗料はいつものTAMIYAのアクリル塗料。メインとなるタンクは光沢ありのブラックX-1、配管はサビを表現するためにフラットブラウンXF-10、足場の柵はホワイトXF-2、階段や柱はフラットグリーンXF-5、バルブはフラットレッドXF-7といった具合でした。タンク以外の黒はダークアイアンXF-84を使っています。はっきりと黒!という感じではなくちょっと落ち着いた色になるので、黒には基本的にこの色を使っています。

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塗り終わったところで瞬間接着剤にて本組み。タンクは光沢ありにして正解。配管も茶色一色で塗ったわりには、筆塗りのムラが結果的にサビをいい感じに表現してくれています。

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ただこのままだとタンクがあまりにテカテカすぎるので、配管と同じフラットブラウンXF-10を使って、ドライブラシのような感じでタンクの背面に少し汚しをい入れました。やりすぎはよくないのでほどほどの感じで... ベースが黒光沢ということもあって、つや消しの茶色がいい感じのサビに見えて、満足いく感じに仕上げることができました。

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レイアウトに仮置きしてみます(左写真)。スペース的には置けたのですが... 同じ場所に置くSignal Boxとの位置関係が難しく、縦に並べる方法を考案してみました(右写真)。

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足場がちょっと不思議に見えなくもないですが、後方に置くSignal Boxとの位置関係もよさそうです。

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土台は少しラフな感じを出したかったので、給油所やピット車庫で採用したプラ板工法ではなく、石粉粘土で造作。プラ棒で枠を作ってから中を石粉粘土を埋めます。燃料タンクを土台に埋め込む感じにするため、柔らかいうちに置いてあらかじめ凹みを付けます。

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ところが... 石粉粘土は乾燥すると縮むのです。左の写真は1週間後の状態。プラ棒の枠との間に大きな隙間ができているのが見えると思います。これではせっかく付けた凹みもやり直しです。さらに石粉粘土を盛って凹みを付けなおします(右写真)。

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乾燥したところで塗装。下地としてTAMIYA情景テクスチャーペイント路面ダークグレイで少し表面をざらつかせてから、デッキタンXF-55で他と合わせます。ここまではよさそうだったのですが...

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汚しを入れるのに、タンクの錆表現と同じフラットブラウンXF-10を使ってみたのですが、、、これが大失敗。本当に汚い塗装になってしまいした。。。(左写真)

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なーに失敗すればやりなおせばいいのです!気を取り直して再びデッキタンXF-55を上塗りし、おとなしくMr. ウェザリングカラーのマルチブラックで汚しを入れなおします。あくまで控えめに。若干ラフですが、上にストラクチャを置くのでよしとしました。(右写真)

整備プラットフォーム

最後は車庫によくある簡易プラットフォームを作ります。これも同じくKnightwing Models Internationalから購入したのですが、、、開けてびっくりプラキットではなくホワイトメタルのキットでした。金属キットを組むのは初めてですが、何事も挑戦です。

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エポキシ樹脂接着剤で組んでいくのですが、速乾とはいえプラキットをセメント接着剤で接着していくのとは訳がちがいます。時間をかけてなんとか組み上げた後、メタルプライマーを塗ります。ここまではひとまず順調。

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次に塗装なのですが、メタルプライマーの上からいきなりアクリル塗料を塗ったのは失敗でした。表面がかなり粗いので、仕上がりもかなり粗い感じ。汚しをするとまたもや本当に汚くなりました(^^;。サーフェイサーを吹いてしっかり整えた後で塗ればよかったですね。

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仕方なく汚くなってしまった部分は再びアクリル塗料で修正。レイアウトに置いてみると、プラットフォーム面が少々高い。プラキットなら足を切るなりして調整できますが、金属キットではそうもいかない。しょうがないので、設置場所のレベルを下げて対応しました。(地面が白い部分は周りより3mmほど低くなっています... これがなかなか面倒な作業でした)。

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塗装塗装塗装...

以上ストラクチャー作成でしたが、やはりどのキットも塗装は難しい。汚しはもっと難しい。周りの色とのバランスもあるので、作業台で見ているときは良さそうでも、レイアウトの中に置くと妙に浮いたりすることもあります。逆もあって、意外とすっと馴染むことも。必ずストラクチャをレイアウトの中に置いてみるとよいようです。試行錯誤した中では、コンクリート地をデッキタンXF-55+Mr. ウェザリングカラーマルチブラックで統一したのは正解でした。

「いつかはエアブラシ」に挑戦してみたいですね。(つづく)

 

車庫改修プロジェクト(その2)

前回の報告からちょうど2ヵ月経ってしまいましたので、まずはおさらいから。
車庫改修プロジェクトでは、留置線となっていた場所を廃止して蒸機区画とディーゼル区画の2区画に整理し、新設となるディーゼル区画に新規に4つのストラクチャーを配置します。

  • ピット付き車庫
  • 整備プラットフォーム
  • 給油所
  • 燃料タンク

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前回その1ではピット付き車庫の製作について触れましたが、今回その2では給油所の製作について報告したいと思います。

キット製作

給油所のストラクチャーはBachmannからReady Madeのものが出ていますが、単品でぽっと置いたのでは面白くないので、燃料タンクも合わせてプラキットにチャレンジすることにしました。ただPECOなど大手では製品がなく、UKのローカルメーカーであるKnightwing Models Internationalから直接通販で取り寄せることにしました。

お初のところだったので、まずはWeb上のカタログでよくわからなかったキットのサイズについてメールで問い合わせ。すると3日後に返事が来たので、まぁ大丈夫だろうとWeb上での注文に進みましたが、注文確認メールも何も来ず。1週間経ったところでさすがにおかしいと思い、メールで状況照会すると「もう発送したよー!」との返事が... ヨカッタ。ちょっと別件でやきもきしていた時期だっただけに、またか!とドキドキしてしまいました(^^;。品物も程なく到着しました。

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1枚のランナーで給油所1つ分、2枚合わせて2つの給油所ができる算段です。屋根はスクエアタイプのものとオーバルタイプの2種類が付いていて、どちらか好きな方を選べるようになっています。自分は説明書の写真にあるようなスクエアのものを選びました。

狭い車庫に2つも給油所が要るんかな... と思ったものの他に使うあてもなく、1つ作るのも2つ作るのも大して手間は変わらないので、2つとも作って縦に並べておくことにしました。(これが後で思わぬ効果を生むことに)

構造としてはプラットフォームのような土台の上に、いくつかのパイプやキャビネット、屋根を建てるというシンプルなもの。細かいパーツが多いので、塗り分けの手間から塗装を先に済ませてから組み立てます。

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土台のベースカラーはTAMIYAアクリル塗料のXF-55 デッキタン、アクセントカラーとしてXF-80 ロイヤルライトグレイを使用しました。ピット線路の塗装と同じパターンです。写真のように塗り分けがされているとデッキタンがベージュっぽく見えるのですが、実際にレイアウトの中に置くとコンクリート舗装として違和感なく見えます。逆にグレイ系では主張が強くなるので、特にカントリー調のレイアウトでは注意が必要です。屋根の色は難しかったですが、主張しないような中間色としてXF-14 明灰緑色を使ってみました。実際のこんな感じの屋根はないかもですが、ちょっとレトロな感じになったので気に入っています。

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パイプやキャビネットはあまり拘らずに赤、緑、白、黒とシンプルな色で塗り分け。キャビネットの取手と丁番、給油ノズルと接続リングには、からぱたさんがnippper.comで紹介されていた「ぺんてる銀の穂」を使いました。筆先の使い心地が絶妙で、今回ような金属色などちょっと色刺しするのに大変便利です。

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土台と屋根にはMr. ウェザリングカラーで汚しを入れます。これでパッキリ明るめだった色もかなり落ち着いた雰囲気になりました。塗装後の接着にはセメント接着剤は使えない(塗装が溶ける)ので、瞬間接着剤でサクサクと進めます。まずまずの雰囲気です。

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次に「駅の小改修」で使用したWest Hill Wagon Worksの蛍光灯型照明を屋根下に組み込みます。照明色は駅のホームで使ったWarm Whiteではなく、Cool Whiteにして雰囲気を変えてみました(写真で見ると青みがかっていますが、実際はここまで青くはないです)。

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基本的にはWarm White(電球色)好きなのですが、猫城さんがうまい具合に照明色を変えてレイアウトを作られているのを見て、自分もやってみたくなった次第。ディーゼル区画はCool White、蒸気区画はWarm Whiteでまとめる予定です。また後の報告をお楽しみに。

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レイアウトへ組み込み

さてキットが完成したところで、いよいよレイアウトへの組み込みです。設置場所の幅がキットの幅より大きいので、組み込むため何かしら追加の土台を作る必要がありました。最初は石粉粘土で造形することも考えていたのですが、これまでの経験から水平をきれいに出すのが難しいことがわかっているので、方針を変更してプラ棒、プラ板を使って製作しました。

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5mmのプラ角棒で台枠を作り、上面に0.5mm厚のプラ板を貼ります。そしてこの台枠の中に2つの給油所キットをはめ込みます。隣のピット付き車庫の土台も同じ手法で製作しました。

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仮置きしてみたところです。給油所が2つ並んでいるので2両セットのClass 43 HSTを置いてみたら、これがピッタリはまる!設計時には意図してなかったこともあり、テンションが上がる瞬間です。

塗装については、プラ角棒、プラ板ともに表面がかなりツルツルということもあり、お試しでサーフェイサーを初スプレー。なぜもっと早く使わなかったのか、というぐらいの感動がありました(笑)。筆塗りでは絶対に出せない塗膜の均一さとプラ成形色が完全に隠される隠蔽性。その上に塗るアクリル塗料も伸びよく厚塗りの心配がありません。またひとつ勉強になりました。

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アクリル塗料で塗ったあとは、キット同様にMr.ウェザリングカラーで汚しを入れます。

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組み込んだ全体像。無事キットとうまく馴染んでくれました。

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仕上げは照明の配線です。蛍光灯照明の配線は一旦裏にまとめてからリード線を延ばします。

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もうひとつはヤード照明。もともと留置線に使っていた照明(写真左)を付けるつもりで土台に穴を開けていたのですが、新たに買ったViessmannのヤード照明(写真右)の方が形や照明色が馴染むことから、設計変更することにしました。

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おかげてキットに開けた穴をプラ板で埋め戻すことに... この程度の変更はしょうがないですね。

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レイアウトのベースボードに配線用の穴を開けて設置します。これでひとまず完成。

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デモビデオはClass 43 HSTとともに。

キット組み立て、土台の作成、照明の組み込みと、かなり手間がかかりましたが、「給油所を設置したい」というぼんやりとしたイメージから、なんとか期待以上の形にできたかと思います。(つづく)

Modellbahnshop-lippeでお買い物

国鉄道模型のお買い物はHattonsKernow Model Rail Centreが多いのですが、ストラクチャー以外のレイアウト用品(樹木、人形、照明など)はドイツのメーカー(Noch, Preiser, Viessmannなど)が充実してしていることもあって、多くの方も使っておられるModellbahnshop-lippeで購入しています。

下記が今回の購入リストです。欧州鉄道模型をやっていらっしゃる方からすれば「なんて少ない!」と思われるかも(車両はひとつも入っていないので...)。昨年Z21を購入したときに付与されたBonus 18€を値引きに使ってみました。

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取り寄せ品が含まれていたこともあって、6/17に注文して4週間後の7/15に出荷案内が届きました。トラッキングリストは以下の通り。出荷から8日目の着荷で、ドイツ国内も日本に着いてからも目立った遅れはなかったようです。感謝。

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到着状態。丁寧な梱包で定評があります。箱にLippeのテープが十字に巻かれているところがとても好き。受け取ったときのわくわく感がありますよねー。

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ちなみのHattonsはわかるひとにはわかるダンボール(笑)で届くので、それもそれで好きです... Kernowはメーカー(Bachmannとか)から納品されたダンボールの使い回しが多いかな... それもそれで好き... お店によっていろいろ味があって面白いですね。

開けるとお馴染みの箱in箱。今回は大物がないのでコンパクトです。

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さて購入物ですが、いま改修工事中の車庫用の照明が中心です。

Viessmann 63851 H0 Lattice mast lamp with plug-in socket, LED warm-white

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年代が少し古い感じのヤード照明。二灯式のものもあったのですが、配置のしやすさを考えて敢えて一灯式に。Steam Engine区画に置くことを考えています。

Viessmann 63631 H0 Lattice mast lamp with plug-in socket, 2 LEDs white

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新しいヤード照明。Diesel Engine区画に配置予定。

Viessmann 6332 H0 Floodlight spot double, 2 LEDs white

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ヤード用のスポット照明。特に置く場所は決めてないのですが、全体を通して照明映えする場所に入れてみるつもりです。

Viessmann 60921 H0 Street light modern with plug-in socket, LED white

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こちらは街灯ですが、駅舎側ホームで暗かった箇所に置いて全体の明るさのバランスを取ることを考えています。

Noch 61121 Temporary Glue

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人形を固定するための接着剤として猫城さん(@nekoshiro19)に教えていただいたもの。人形だけでなく、客車にDestination Boardを取り付けるときにも使えないかなと思っています。

Noch 15281 Gauge H0 Engine drivers steam locomotive

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蒸機には積極的に運転士さんを乗せていきたいと思い、試しにあちこちのメーカーの人形を取り寄せてます。ちょっとドイツ風になってしまうかもしれないのですが、細かいことは気にしないということで。

今回で車庫改修のための部材はほぼ揃ったので、バリバリと進めていきたいと思います。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター」(暁佳奈/KAエスマ文庫)

京都アニメーションで起きた痛ましい事件から1年経った昨日、改めて様々な報道がありました。自分自身どなたが犠牲になったのかを知るのが苦しく、被害に遭われた方の氏名が会社や遺族の意向により明らかにされなかったこともあり、これまでなるべく目に入らないように避けてきました。しかし今回の報道で犠牲になった何人かの方のお名前を目にすることになり、1年前のことにも関わらず遅れてきたショックに見舞われています。遺族の方のコメントに「彼・彼女らも私たちや友人たちに別れの言葉を告げることもできずこの世を去ったことや、努力を重ねて築いてきた人生が突然断ち切られてしまったこと、さぞ心残りだったと思います。」とありましたが、まったく無念としか言いようがありません。

ただ事件当初より全力を挙げて社員その家族を守り、支え、また京都アニメーションの存続に向けて闘っていた八田社長のコメントは力強い光のようで、なぜ京都アニメーションが日本を代表するアニメーションスタジオになったかを端的に表しているように思えました。事件後に京アニが手がける最初の作品が、戦争後のひとりの女性の再生を綴った「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」であることは、偶然とはいえ、何か意味があるようにも思えます。

アニメ版の完結編となる「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に先立って、原作の最終巻「ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター」は3月末に刊行されました。アニメ版ではギルベルトの生死については不明とされ、ヴァイオレットは再会を果たせないままなのですが、原作では下巻の最後で二人は再会し、最終巻の「エヴァーアフター」はその後日談という位置付けです。

KAエスマ文庫 ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター

インテンスの戦いや大陸横断列車乗っ取りの話など、原作では活劇的な話も多く書かれているので、再びギルベルトとヴァイオレットを巡る大立ち回りがあるのかとも想像していたのですが。蓋を開けてみると連作短編の形式で、どの話も贅沢すぎるほどに丁寧にヴァイオレットとその周りの人たちのその後の営みを書いたものでした。どの話も大きな余韻を残すものですが、自分が気に入った3つの挙げてみました。

1つ目は「親愛なる貴方と自動手記人形」。再会を果たしたふたりですが、職業柄ゆえに遠距離恋愛状態。そこでやりとりされる手紙を中心に話が進んでいきます。ギルベルトとヴァイオレットがやがて結ばれるというのがこの小説の主題なわけですが、自分としては「結ばれてめでたしめでたしなのか?」という疑問がありました。なぜなら二人が結婚するということはヴァイオレットがブーゲンビリア家に入ってギルベルト夫人(つまり職業軍人の奥さん)として振舞い、さらに跡取りを作る(ことを要請される)という未来が待っているわけです。家族はよくとも、親類縁者にはヴァイオレットの出自をよく思わない人間もいるかもしれません。本当は自動手記人形をやっているいまの状態の方が幸せなのでは?とも思っていました。でも作者はそれを見透かしたように、この話でギルベルトとその妹ユリアのやりとりの手紙を登場させます。なかなか家族に相手(ヴァイオレット)を紹介しないギルベルトに対して、愛する兄のために自分が庇護者になるから安心して連れて来なさいというユリア。かつてのドロッセル王女シャルロッテを彷彿とさせる勝気な女性に描かれており、ヴァイオレットが嫁いだあと、二人がよい関係を築いている未来を想像できるのです。この短いエピソードのおかげで自分の心配が払拭され、作者には感謝しかありません。

2つ目は「旅と自動手記人形」。CH郵便社の面々によるパジャマパーティー回というファンサービス過ぎるお話なのですが、そんな状況設定の柔らかさとは裏腹に、ギルベルトとヴァイオレットが結ばれた先にあるもうひとつの心配、ヴァイオレットがCH郵便社を去る未来を少し先取りし、残された面々のそれぞれの未来が想像できる種を捲くお話でした。特に終盤のホッジンズとヴァイオレットのやりとりは、ここまで話を見つめてきた読者には突き刺さるものがありました。ヴァイオレットの心の向かう先はギルベルトだけど、ギルベルト以上に本当にヴァイオレットのことを思っているのはホッジンズなんじゃないか、その想いが存分に描かれていました。ホッジンズは本当にいい男ですね。そして、ヴァイオレットがいなくなって空いた心の穴は、やがてラックスが埋めてくれることも想像されるというおまけ付き。どこまで丁寧なんでしょうか。

最後3つ目は最終話「夢追い人と自動手記人形」。本当に大好きなお話です。おわりの方にはヴァイオレットとギルベルトとの抱擁とかキスとか「お前ら中学生かよ」みたいなシーンが出てくるのですが、そこは実はどうでもよくて(笑)。お話としては、ヴァイオレットが仕事で訪れた街で歌手を目指すひとりの少女レティシアとひょんなことから寝食を共にすることになるところから始まります。レティシアの夢を知り、自分の夢を認識したヴァイオレットは、やがて猛然とその夢を叶えるべくレティシアの背中を押すのです。かつてはディートフリート、そしてギルベルトの道具に過ぎなかった彼女が、ホッジンズの計らいで自動手記人形という職業を得て、やがて人の心を持ち、そしてついには人を導く存在になった、その瞬間を見る思いでした。ライデンに帰るヴァイオレットをレティシアが引き止めようとするシーンは映画を見ているよう。読者がレティシアで、ヴァイオレットに行かないで欲しいと願っている、まだ貴方の物語を見ていたいと。でもヴァイオレットは貴方の夢に向かって進むべきだと言って去るのですよね。目頭熱くなりました。

そのほかの話も含めて、作者から読者への優しさを感じられる話ばかりで。「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は違う話になるでしょうし、秋の公開の前にもうひとつの魅力に是非触れて欲しいと思います。

駅の小改修

7月に入り今年も後半に突入。ここまで2020年上半期のレイアウトアップデートで触れていなかった駅の小改修をまとめて紹介したいと思います。

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Barrow Crossing

駅舎がある1番ホームの一端は曲線部分にかかっており、車両が接触するのを避けるために不思議な階段状の形をしていました。

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これをリアリティのある形にするため、向かい側のホームと線路を跨いだ構内踏切を作ることにしました。英国ではこのような踏切を"Barrow Crossing"と呼ぶようです。

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WILLS KITSのLevel Crossing Kitについてきたプラ製の踏切用敷板が余っていたので、形に合わせて切り出したものを塗装して製作。ホームとはスロープで接続することで、実際に荷物を運ぶ台車がそのまま移動できるような作りにしました。

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ここは是非、荷物の台車とそれを扱う駅員さんのフィギュアを置いてみたいところです。

Signal Boxへの通路と緑化

Barrow Crossingの整備に合わせて、ホームの端からSignal Boxへ続く通路を作ってみました。ホームの反対側の端にもお花を植えてきれいに。

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Platform Canopyの設置

以前からどうしようかと悩んでいた島式ホームへの屋根の設置をついに決断。Hornbyのキットを切り貼りしてサイズを調整。駅舎側ホームの屋根と色を合わせて塗装もしました。

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さらにWest Hill Wagon Worksから最近発売された蛍光灯スタイルの小さな照明を屋根下に設置。屋根下に置かれたベンチがきれいに照らされていい雰囲気。島式ホーム全体も明るくなりました。

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大規模な改修も楽しいですが、こうして少しずつ更新していくのもレイアウト製作の楽しみのひとつです。いま進めている車庫の改修と合わせて、下半期も小規模な更新を続けていきたいと思います。

 新しい試みとしてレイアウトのアップデートを動画でもまとめてみることにしました。よろしければあわせてご覧ください。

 

「戦争は女の顔をしていない」(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/岩波書店)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

もともとこの本を知ったのは、小梅けいとの漫画のほうが先でした。店頭で見かけた表紙に惹かれて「こんな話を漫画で描くひとがいるのか」と興味が湧きました。調べてみると同じタイトルの原作をベースにしているということで、ならばそちらを先に読むべきだろうと思いました。漫画の中の女性は可愛く描かれすぎるので、まずは色をつけないで読みたかったのです。

旧ソ連軍の従軍女性の話というところまでは知っていたのですが、まず表紙に巻かれた帯を見てどきっとしました。解説を澤地久枝が書いているのです。これはホンモノだと思って心してページを開きました。が、すぐにとんでもないものを読み始めてしまったと少し後悔。第二次世界大戦独ソ戦の話というだけで、だいたい内容はお察しです。ただ普通とちがうのは、すべて著者スヴィトラーナ・アレクシエーヴィチがヒアリングした従軍女性の証言で埋められていることです。500ページも。それ以外はありません。出てくる地名もロシアのひとには馴染みがあるのかもしれないですが、こちらはわからないので、地図を見たり、ウィキペディア独ソ戦に纏わることを調べながら読み進めました。

話の内容は様々です。凄惨な戦場の描写もあれば、恋の話や家族の話。彼女たちひとりひとりの戦争、それが青春だった人生がごろりと差し出されているようでした。旧ソ連軍でこれほど多くの女性が従軍していたという事実と、その多くが語られることなく歴史の狭間に封印され、大戦を生き延びて対ドイツの戦いにおいて「勝利した」彼女たちのその後が幸せとは程遠いことに、タイトルの意味を思いました。

途中こんなくだりがありました。

負傷者が運ばれて来た。全身を包帯でぐるぐる巻きにして担架に横たわっている。頭の負傷で、ほんの僅かしか身体が見えない。でもその人は私を見て誰かを思い出したみたいだった。「ラリーサ、ラリーサ」と話しかけてくる。たぶん、恋人なんでしょう。私と同じ名前の。私はこの人と会ったこともないけれど私を呼ぶ。私は、何がなんだかわからずじっと見るだけ。「来てくれたんだね。来てくれたんだ。」私は手を取ってあげました。身をかがめると、「来てくれるって分かってたんだ」そして何かをささやいているんです。何を言っているのか分かりません。もう話せないわ。あの時のことを思い出すといつも涙があふれてくる。「戦争に行くとき君にキスするまがなかった、キスしてくれ」身体をかがめてキスをしてあげる。片方の目から涙がポロッとこぼれて包帯の中にゆっくり流れて消えた。それで終わり、その人は死んだの……  (p198-199)

ふと「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の11話(原作「青年と自動祝人形」)を思い出しました。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のヴァイオレットも従軍した女性です。戦争後に自動手記人形という職を得て人間性を獲得し、元上官のギルベルトとの恋を成就させるお話なのですが、人間性を獲得して行く過程で自分が見た、行った行為に関して悩み傷つくシーンはあるものの、この本で語られる話のようには掘り下げられてはいません。主題が恋愛物語なので当たり前なのですが、もし「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が恋愛物語ではなく、従軍女性とその後という側面から語られたとすれば、ヴァイオレットどのように生き、何を語るのだろうかと、妄想をせざるを得ませんでした。原作、アニメともに今後も掘り下げられることのないだろう、もっと深い彼女の過去や戦場の記憶を少しでものぞいてみたいなら、ぜひこの本を読んでみてください。この秋に公開される劇場版を見る心持ちも変わるかもしれません。

Hunt Couplingを試す

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Hunt Couplingとは

今年のはじめぐらいから、英国鉄道模型関連のブログやYouTubeなどで見かけるようになったHunt Coupling。West Hill Wagon Worksが製作する磁石で連結するタイプのCouplingです。製品の概要については、以下のHornby Magazineのビデオクリップを見ていただくのがよいかと思います。

国鉄道模型のOO Scaleで一般的に使われているのはTension Lock Couplingです。

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構造は簡単ながらも見た目はリアリティに欠けますし、連結面の間隔も大きくなりがちです。一方Hunt Couplingは、連結器の見た目そのものを改善するものではありませんが、連結面を実車に近い間隔にし、またPush/Pullのどちらの方向への運転でもズレがおきないため、一定の間隔を保つことができるのが特徴です。また強力な磁石による連結と単純な構造により、信頼性や扱いやすさという面でも利点がありそうです。

そんな製品への興味もさることながら、歴史的には昔からあったであろう磁石によるCouplingを、"Hunt Coupling"と名付けて雑誌、ブロクやYouTubeといったメディアを通じて宣伝して売っていこうという、West Hil Wagon Worksというメーカーそのものにも興味を惹かれました。

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こういう小規模のメーカーがニッチだけど面白いカスタマイズ製品を出してくれることは、鉄道模型の楽しみの幅を増やす上で欠かせません。ましてや英国鉄道模型向けに作ってくれているのですから、この楽しみに乗らない手はないと思いました。

ちょうど先日Hornbyから発売されたスライドドア改造版のMk3客車を導入したので、それに合わせてHunt Couplingを試してみることにしました。

Hunt Couplingは車両のメーカーや種類ごとにカスタマイズされたバージョンを出していて、Mk3客車向けだけでも5種類(!)ものバージョンがあります。

  1. Clip Coupling - Hornbyの古い製品向け
  2. NEM Socket - 一般
  3. NEM Socket - 短い版
  4. NEM Socket - Hornbyのスライドドア改造版Mk3客車向け
  5. NEM Socket - Oxford RailのMK3客車向け

Clip CouplingとNEM Socketはそもそも形状がちがうので、別バージョンになるのは当然ですが、NEM Socketでなぜこんなに種類があるか聞いてみたところ、製品によって長さを変えているとのことでした。

今回のお試しとしては、新たに導入するスライドドア改造版Mk3客車向けの4. とともに、所有するFirst Great Western Mk3客車向けに1. も合わせて購入してみました。

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Clip Couping - First Great Western編

まずはCouplingそのもののをTension Lock Couplingと比較してみます。こうして見ると、長さについてはほぼ同じになるように設計されているようです。

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次に車両に取り付けて連結した状態での比較です。

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静止状態では、連結面の感覚としてはそれほど見た目上の変化はありません。先ほどのCouplingの長さの比較からも当然の結果とは言えます。ただ走行時にTension Lock Couplingでは特にPull方向の運転でもっと間隔が開くことになります。Hunt CouplingはPush/Pullともに、走行時でもこの間隔を維持できるところが違いとなるでしょうか。

実際にHunt Couplingで走らせてみました。

レイアウト本線の最小曲率半径は430mm(2nd Radius相当)ですが、Pull/Pushともに問題なくスムーズに走行してくれました。実は走行時でも見た目はそんなに変わらない...かもしれないですね(笑)。敢えてあげるとすれば、加減速やカーブにおいて連結部ががちゃがちゃしないので走りがソリッドな感じもします。もともとのTension Lock Couplingがごついタイプのものだったので、見た目もかなりスッキリしました。

NEM Socket - スライドドア改造版Mk3編

同じくCouping比較から。このスライドドア改造版向けはTension Lock Couplingに比べて明らかに短く設計されています。

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次に車両に取り付けて連結した状態での比較です。

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おぉ!この連結面間隔はまさに新境地という感じです。新しいMk3では幌の形状も従来製品とは変わっているので、連結面間隔を近づけるとより実感的に見えます。

Class43 HST Power Carにも同じように専用のHunt Coupingをつけます。こちらも連結面が美しいですね。

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新しいMk3に対してこの連結面間隔を実現できるのは、Coupling機構が従来の台車マウントからボディマウントに変わっていることによります。これによりCouplingを短くしても小さな曲率半径の走行が可能になるので、小さなレイアウトでも実感的な見た目が楽しめるというわけです。ただ連結機構がボディマウントなのは欧州鉄道模型の客車では一般的な構造だと思うので、Hornbyもやっと対応してくれたかというのが正直な気持ちです。

さて走行させてみます。

あ、アレアレ?... Pull方向では快調に走るのですが、Push方向では比較的低速でも脱線が確実に発生するようになりました。同じHunt Couplingを使っても、先ほどの旧タイプのMk3客車では起きなかったことです。いったい何が原因か。ここから事故調査が始まりました。

脱線の原因を探る

スライドドア改造版Mk3客車向けのHunt Couplingはずっと連結面間隔が小さいのが特徴です。うちの急カーブのあるレイアウトでは連結面同士がぶつかってしまい、結果として脱線の原因になっていることが考えられます。そこで一旦Hunt Couplingを取り外し、付属のClose Couplingで走行させてみました。

結果は... 同様に脱線が発生。つまりこれはHunt Couplingの問題というよりは、新しいMk3客車のボディマウントのCoupling機構からくる可能性がありそうです。もしそれが事実なら他のひとも問題を踏んでいるのでは... Webを調べてみるとRMwebで新しいMk3客車に関するスレッドがあり、この新しいCoupling機構に関する問題にも言及されているようでした。

West Hill Wagon Worksにこの問題について脱線動画へのリンクを含めてメールで問い合わせたところ、「同じ問題だと思うから参考になれば」と1本のビデオクリップのリンクが送られてきました。

つまり脱線はカーブなどでCouplingが左右に振られた後に正しく戻らないことによって起きているとのことのようです。実際手元の4両の新しいMk3客車のCouplingの状態を調べてみると、全部で8つあるCouplingのうち、約半数にこの症状が起きていました。

具体的には下の写真のように一旦曲がった状態から手を話しても、本来であればバネの力で自然に戻るところが、矢印の部分でひっかかって戻りません。

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前掲の脱線の動画では、カーブを抜けた後の直線で車体がフラフラと外に押し出されるような形で脱線しています。確かにCouplingが曲がったまま引っかかって元に戻らないとすると、Push向きの走行では外側に押し出す力が加わることになり脱線が発生する原因の説明がつきそうです。

ということで。引っかかるCouplingに対しては、下記写真の黄色の丸で囲んだ箇所に少しヤスリを入れて、曲がった状態から手を離すと自然に戻るように調整してみました。

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正直こういうところに手を入れるのは、得てして症状が悪化したり副作用が出たりする場合もあるので、ちょっとドキドキです。やりすぎないように少しずつ進めて4両とも調整完了して走行試験へ。

ビンゴでした。修正前で脱線していた低速走行時に加えて、高速走行時でも脱線は発生せず、問題なく走行可能となりました。これでHunt Couplingへの置き換えは無事完了です!

おわりに

途中から新しく搭載されたボディマウントCouplingの問題へと話が脱線した感がありますが、Hunt Coupling自体には非常に満足しています。特にMk3 HSTのように

  • 固定編成が中心
  • Push/Pullの両方の走行パターンがある

ような場合には特に向いているのではと思います。

また今回West Hill Wagon Worksサポートからの的確な返信のおかげで、このCouplingの問題を克服することができました。この件以外にも何度かメールをやりとりしているのですが、いつも翌日には返信をくれるので、単に製品だけでなく個人的に推したいメーカーのひとつになりました。

一方で、このCoupling機構を載せてきたHornbyのツメの甘さは...新しいMk3客車はよくできているだけにちょっと残念です。とはいえ、いつまでも台車マウントのCouplingというのもそれはそれで寂しすぎるので、少しずつよくなっていくことを願っています。