まだまだ読むべき本はたくさんある。そうして旅を続ければ出会うべき本には出会うことができる。
ジョン・ダワー氏の大著「敗北を抱きしめて」は、僕にまた新しい刺激をもたらすものでした。またこの本で引用されていた渡辺清氏による「砕かれた神」も素晴らしかった。元海軍兵卒である彼の天皇に対する対峙の仕方も然ることながら、その豊かな筆致で書かれた農村の生活に魅了されました。彼が様々な本を読みながらその世界を広げて行く様は、何よりの救いのように感じたのです。おそらく彼のようなひとは特別ではない。しかし結果として続いてきた戦後日本の歩みのギャップに慄然とせざるを得ない。
日本の戦後システムのうち、当然崩壊すべくして崩壊しつつある部分とともに、非軍事化と民主主義という目標も今や捨て去られようとしている。敗北の教訓と遺産は多く、また多様である。そしてそれらの終焉はまだ視界に入ってはいない。(「敗北を抱きしめて(下)」エピローグより)