読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

岩村暢子さん3冊

読書日記

内田先生のブログの紹介で気になったので、原書にあたるべく家族と食卓に関する本3冊を図書館から借りて読んだ(もう随分前の話だけど)。

変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識
“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死
普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓

1冊目「変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識」は、幼稚園から小学生ぐらいの子どもを持つ首都圏の主婦を対象に、日常の食事について記録及び聞き取り調査の結果をまとめた本で、2冊目「現代家族の誕生 幻想系家族論の死」は、その主婦の母親世代が経験した日常の食卓について、聞き取り調査を行うとともに歴史的背景の考察を含めてまとめたものである。いずれも研究書と呼んで差し支えないほど膨大な調査資料と時間をかけた考察が、ありがちなイデオロギー的現代家族論を一蹴する説得力を持って迫ってくる。

最新刊は「普通の家族が一番怖い 徹底調査!破滅する日本の食卓」で、基本的に1、2冊目の総集編あるいはそれを補完するような本であるが、このタイトルは全く見当はずれであるのが残念と思う。この本のタイトルをつけるような立場の人であれば、著者がなぜこのような本を書くに至ったかという動機は正しく理解しているはずだが、多分のマーケティングの意向でこのようになったのであろうか。受け手に対して恐怖感を煽りつつも自分はその枠外として批評を楽しむような趣向の、いかにも民放がやりそうなドキュメンタリーに名を借りたバラエティ番組にありそうなタイトルである。

誤解しないで欲しいのは、これらの本がそのような現代家族や現代社会の問題を無自覚に批判するような本では決して無いことである。もちろん内田先生のブログに抜粋されていたように、この本の一部を読めば無自覚な批判と取れる(事実を述べているだけであるにも関わらず)向きもある。

「家族揃ってご飯を食べない」「揃っていても食べるものはバラバラ」「買ってきた総菜やレトルト、冷凍食品が大半」「取り合わせや季節感は考慮されない」「子どもは家事を手伝わず、自分も実家に行けば全く家事を手伝わない」などちょっと眉をひそめたくなるような事実が次々と描写される。

が、それを読んで眉をひそめたくなるようなひとや、あるいは何をエラソウにと思っているひとほどきちんと本を読むことを、特に前2作を読むことをおすすめしたい。なぜそうなったのか。社会現象は決して単一の原因で語ることができず、多数の要因と歴史的背景が複雑に絡み合い、まさに今生きている僕らが意識するとしないとに関わらず「選択した」結果として現れているものであるという基本的な事実を確認するための良書と思うからである。

僕がこれら本の一番面白いと思った箇所は実は本編ではなく、あとがきのように書かれている付章の部分である。1冊目では「付論 家庭科で習った通り」で中学・高校で教えられている家庭科の教科内容の変遷が少なからず家庭の食卓のあり方に影響を与えていること、2冊目では「現代家族の誕生−そして必然的に食は崩れた」として1冊目の調査対象の主婦の母親世代の歴史的体験が50年の時を経て現在の食卓のあり方に大きな影響を与えていること、3冊目では「エピローグ 現実を観ない親たち」として理想とする食卓と現実が大きく乖離しているにも関わらずそれをまったく問題としない思考について書かれている。時間がなければここだけでも読んでも面白いと思う。