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「徳川慶喜の子ども部屋」

徳川慶喜家の子ども部屋 (角川文庫)

これもベッキーさんシリーズの参考文献。徳川幕府第十五代将軍徳川慶喜の孫娘である著者・徳川喜佐子さんが幼少時代を過ごした小石川第六天町での生活描写を中心とした回想録。ちなみに著者の姉は高松宮妃喜久子。彼女も女子学習院に学んでいて、前回取り上げた朝吹登水子さんとの近い時代、近い社会的地位の下で生活しつつも、その暮らしぶりやものの考え方が異なるのが面白い。一方は実業家の娘で外国人との交流が日常的にある環境で育ち、もう一方は武家の末裔とはいえ宮家の影響を色濃く残した環境で育っている。軽井沢での生活描写の違いや太平洋戦争に対する記述もかなり異なっている(著者の夫は旧帝国陸軍の軍人であることも影響しているとは思うが)。現在の世を生きる我々が想像する上流階級というのは朝吹さんのような生活かもしれないが、おそらく大半は徳川さんのような生活だったのではないかと想像されうる。

家は一種の会社であり、それぞれに職務が有り、それを全うすることが義務とされた。会社の中で生活しているような感覚。しかしそれを窮屈なことだと思うのは正確ではない。このあたりの生活感覚は、商売をしている家も似たり寄ったりなのだが、事実自分もそういう環境で生まれ育ったから、殊更そう思う。それを窮屈だと思うのは、おそらく「会社」の定義が異なるからなのだろうと、もうひとつ読んだ平川克美さんの「株式会社という病」で思ったのだけど、それはまた次回に。