読書日記

「ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか 民主主義が死ぬ日」(ベンジャミン・カーター・ヘット/亜紀書房)

もともとTwitteで見かけた以下の書籍、原田昌博『政治的暴力の共和国――ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム』に興味を引かれたのだけど、大学の出版会からの刊行ということで、おそらくある程度歴史背景を理解している人向きと思われた。 【新刊出来】…

「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」(リチャード・ロイド・パリー/早川書房)

久しぶりの読書日記。 始まりは1/21に英タイムズ紙に載せられたこの記事。日本政府がコロナのため五輪中止が必要と非公式に結論付けたとの報だった。 Twitterでもこの引用を目にしたが、この記事を書いた記者リチャード・ロイド・パリー氏に関する記事を別の…

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター」(暁佳奈/KAエスマ文庫)

京都アニメーションで起きた痛ましい事件から1年経った昨日、改めて様々な報道がありました。自分自身どなたが犠牲になったのかを知るのが苦しく、被害に遭われた方の氏名が会社や遺族の意向により明らかにされなかったこともあり、これまでなるべく目に入ら…

「戦争は女の顔をしていない」(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/岩波書店)

もともとこの本を知ったのは、小梅けいとの漫画のほうが先でした。店頭で見かけた表紙に惹かれて「こんな話を漫画で描くひとがいるのか」と興味が湧きました。調べてみると同じタイトルの原作をベースにしているということで、ならばそちらを先に読むべきだ…

英鉄模型雑誌

英国型の鉄道模型を始めるにあたっての情報は、ほとんどWebで集めました。Hornby, BachmannといったメーカーやHattonsのような大手リセラーのウェブサイトはもちろんのこと、英国の鉄道模型EnthusiastがYouTubeにアップロードする膨大なビデオクリップは鉄道…

「”ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する」(柴田優呼・作品者)

先日実家に立ち寄ったときに置かれていた本をみて興味を持ち図書館で借りて読了。一番印象に残ったのは、オーストラリア記者バーチェットが1945年9月3日、広島の広島逓信病院で取材を行ったときの一幕を書いた文だ。 病院でも、バーチェットはアメリカ人と思…

「日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」(NHKスペシャル取材班・新潮社)「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四〇〇時間の証言より」(半藤 一利、 澤地 久枝、戸高 一成・岩波書店)

出張のフライトの行き帰りで「日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四〇〇時間の証言より」を読了。ちょうど前回の読書日記で触れた渡辺清氏の著書「海の城」「戦艦武蔵の最期」を読んで日本海軍関係の…

「敗北を抱きしめて」(ジョン・ダワー/岩波書店)「砕かれた神 ある復員兵の手記」(渡辺清・岩波書店)

まだまだ読むべき本はたくさんある。そうして旅を続ければ出会うべき本には出会うことができる。ジョン・ダワー氏の大著「敗北を抱きしめて」は、僕にまた新しい刺激をもたらすものでした。またこの本で引用されていた渡辺清氏による「砕かれた神」も素晴ら…

「『国家主権』という思想」(篠田英朗・勁草書房)

集団的自衛権。いま安倍政権がやろうとしている真の意図は何なのか。それはアメリカ、アジア諸国をはじめ、国際関係にどう影響するのか。表層的な議論を鵜呑みにするのではなく自分の頭で考えたい。と思っていたところ、2014年6月1日付朝日新聞朝刊の「ニュ…

「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」

どうしてこの本を読もうと思ったのか、自分でもよくわからない。ここ 2, 3 年、以前よりもずっとクロースにUSのひとたちと仕事をするようになり、仕事上の価値観が共有されていく一方で、仕事以外の普段の暮らしの差異が気になるようになってきた。出張の帰…

「氷菓」「遠まわりする雛」(米澤穂信・角川書店)

誰もが思うであろうその不可思議なタイトルが気になっていたものの、京アニ制作というだけで「いつものあれか」とスルーしていた、その作品。小説にはまって結局アニメを見る羽目になり、気が付いたら Blu-ray をお買い上げ。作品への評価については、遅れて…

「20歳のときに知っておきたかったこと-スタンフォード大学集中講義」(ティナ・シーリグ/阪急コミュニケーションズ)

「いま、手元に5ドルあります。2時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんはどうしますか?」で始まるこの本は、スタンフォード大学で教鞭を取るティナ・シーリグが、講演のためにまとめた内容を書き下ろしたもの。主に彼女の授業での課題とそれに取り…

「フェイスブック 若き天才の野望」(デビッド・カークパトリック/日経BP社)

正月休み明けの北米出張の飛行機の中で、映画「ソーシャル・ネットワーク」を観ました。映画は映画として面白かったのですが、いったいどこまでが実話でどこが脚色だったのかを知りたくなって、ちょうど日本公開に合わせて出版されたこの本を読むことにしま…

「Cut」9月号「ジブリがアリエッティに託したもの」

遅ればせながら「Cut」9月号のアリエッティの特集記事を読んだ。最初の宮崎駿へのインタビューを読んで「ああ、やっぱり宮さんはうれしかったんだな」と直感的に思った。NHKの「ジブリ 創作のヒミツ 宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」という番組で、初号試…

「これからの『正義』の話をしよう」(マイケル・サンデル、早川書房)

NHKの「ハーバード白熱教室」を見始めたのは途中の第7回からだったので、ちょっと残念に感じていたのだけど、元ネタ本の日本語訳が読めるとあって、最終回終了後に早速読んでみた。講義の前半に出て来たと思われる「功利主義」「リバタリアニズム」について…

「迷走する両立支援 いま子どもをもって働くということ」(萩原久美子・太郎次郎社エディタス)

TwitterのTLで流れていた kobeni さんの日記「ある日、あなたが、長時間労働できなくなったら。〜「迷走する両立支援」を読みました〜」を見て、何か今まで見たのとは違うレベルの子育てと仕事の関係の議論に興味が沸いて読んでみました。感想を一言で言えば…

「日本辺境論」(内田樹・新潮社)

「はじめに」にも書かれている通り、基本的には新しい話はないのだけど、この本を読んで「日本はどうあるべきか」というようについついべき論として語ってしまうところこそ、まさに日本的思考であるということを知覚しておくことは悪いことではないように思…

「スカイ・クロラ」シリーズ(森博嗣・中央公論新社)

北半球一周ツアーで飛行機にたくさん載った影響か何かわからないけど、森博嗣の「スカイ・クロラ」シリーズを全部読み直して見ました。最初に読んだときは、「クレイドゥ・ザ・スカイ」で訳がわからなくなり、その前の「フラッタ・リンツ・ライフ」の読み方…

「海軍反省会」

先日、書店の店頭で「海軍反省会」なる本を見つけたのですが、帯(だったかな?)に「NHKスペシャルで放映予定」とあり、ちょうど夏休み期間中ということもあり見ることができました。ちなみに「海軍反省会」とはなんだったのかというのは、リンク先のはてな…

「満州事変と政策の形成過程」(緒方貞子・原書房)

緒方貞子氏の代表的な著書ということで図書館から借りて読んでみた。この本は氏がカリフォルニア大学バークレー校大学院政治学部に提出した博士論文がもととなって出版された「Defiance in Manchuria - The Making of Japanese Foreign Policy 1931-1932」の…

「紛争と難民 緒方貞子の回想」(緒方貞子・集英社)

1991年から2000年の10年間に渡って、第八代国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏の本人自身による活動の記録「SADAKO OGATA THE TURBULENT DECADE - CONFRONTING THE REFUGEE CRISES OF THE 1990s」の日本語訳である。具体的には氏の任期中に取り組んだ難民…

「恐るべき旅路 火星探査機『のぞみ』のたどった12年」(松浦晋也・朝日ソノラマ)

NRT→LAX→LHR→NRTの北半球一周ツアーのお供に選んだのがこの1冊。文部省・宇宙科学研究所初の惑星探査機PLANET-B(打ち上げ後「のぞみ」と命名)の構想から設計・開発、打ち上げから運用終了までを、関係者へのインタビューも含めてまとめたドキュメンタリー…

岩村暢子さん3冊

内田先生のブログの紹介で気になったので、原書にあたるべく家族と食卓に関する本3冊を図書館から借りて読んだ(もう随分前の話だけど)。 1冊目「変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識」は、幼稚園から小学生ぐらいの子どもを持つ首…

「株式会社という病」

内田先生のブログで書評が載っていたときから気になっていたのだけど、ようやく読む機会を得た。基本的にはビジネス書の体裁になっているので物語を読むような没入感はなかったし、書かれていることもそれほど独創的といえるものではなかったけれど、内田先…

「徳川慶喜の子ども部屋」

これもベッキーさんシリーズの参考文献。徳川幕府第十五代将軍徳川慶喜の孫娘である著者・徳川喜佐子さんが幼少時代を過ごした小石川第六天町での生活描写を中心とした回想録。ちなみに著者の姉は高松宮妃喜久子。彼女も女子学習院に学んでいて、前回取り上…

沖縄での「集団自決」教科書検定に対する11万人集会

今朝の朝日新聞(東京版)の1面を見て、ある本の感想を書いていなかったことを思い出したので、ちょっと書いてみる。 以前に取り上げた本の1つ「新憲法の誕生」を書いた古関彰一さんの近刊。日本国憲法が持つ平和主義の歴史的意味と国際情勢から見た立ち位…

「私の東京物語」「私の軽井沢物語」

ベッキーさんシリーズの参考文献になっていた朝吹登水子さんの本2冊を読了。物語に挿入されている女子学習院にまつわるエピソードや軽井沢での生活描写の大半は、この本から借用されている模様。ということは、とりもなおさずそういう生活をしていたひとが…

「女子学習院五十年史」他

先週末、地元の図書館に寄った折にダメもとで「女子学習院五十年史」を検索してみると、書庫に蔵書されていることがわかり、早速図書館のひとに頼んで書庫から出してもらう。表紙には八重櫻の校章が捺されていて、発行は昭和十年となっている。もちろん非賣…

ベッキーさんシリーズ妄想

2冊を通して読んでいろいろと思いを巡らせる。特に英子の父、花村氏。ベッキーさんの身元からするに、これを娘のシャプロン兼運転手として引き合わせたところを見るとなかなかの人物といえよう。別宮先生とは友人のような台詞があり、英子がベッキーさんに…

「街の灯」再読

たまらずベッキーさんシリーズ1冊目を再読。「玻璃の天」を読んでからこちらを読むと、やはり物語の序盤という感じが否めない。過去の感想では「銀座八丁」を推していたが、表題作「街の灯」の方が英子の成長過程を垣間見るようで楽しい。それはそうと作中…